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湖畔にて

湖畔にさびれた蕎麦屋があった。
その日は寒くて、店内は少し石油の匂いがした。床は、ヒールのついたブーツで歩くのが場違いに感じられるほど大きな音で軋んだ。

客は私ひとりだった。

昼食を食べそびれた3時頃、暖色の日光が当たる窓際の席できのこそばを食べた。

『七味をご利用の方は店員に申し上げ下さい』
貼り紙に笑みがこぼれたが、指示通り七味を使用したいと申し上げた。

使用済み食器を洗う水の音が聞こえた。
湖の白鳥ボートから歓声が上がった。