ギレルモ監督にしては珍しい作風の現実的なサイコスリラー『ナイトメア・アリー』
【個人的な評価】
2022年日本公開映画で面白かった順位:25/47
ストーリー:★★★★☆
キャラクター:★★★★☆
映像:★★★☆☆
音楽:★★★☆☆
映画館で観るべき:★★★☆☆
【ジャンル】
サイコスリラー
【原作・過去作、元になった出来事】
・小説
ウィリアム・リンゼイ・グレシャム『ナイトメア・アリー 悪夢小路』(1946)
・映画
『悪魔の往く町』(1947)
【あらすじ】
ショービジネスでの成功を夢見る野心溢れる青年スタン(ブラッドリー・クーパー)がたどり着いたのは、人間か獣か正体不明な生き物を出し物にする怪しげなカーニバルの一座。
そこで読唇術の技を身につけたスタンは、人を惹きつける才能と天性のカリスマ性を武器にトップの興行師(ショーマン)となるが、その先には想像もつかない闇が待ち受けていた。
【感想】
ギレルモ・デル・トロ監督最新作のサイコスリラー映画。予告だけだとイマイチどんな話かわかりづらいですよね。その実態は、人生のアクセルを踏み込みすぎたスタンの栄光と末路を描いた内容です。ちなみに、原作小説は読んでいません。また、1947年版の映画も観たかったんですが、配信およびDVDレンタルがなかったのでこちらも未鑑賞のままです。
<ファンタジー要素が一切ない意外性>
ギレルモ監督が『シェイプ・オブ・ウォーター』(2017)でアカデミー作品賞、監督賞を受賞したのは記憶に新しいですよね。ギレルモ監督っていろんな作品つくってるんですけど、ファンタジーや特撮っぽい作品が多いんですよ。有名なところだと、『ヘルボーイ』シリーズや『ホビット』シリーズ、
『パシフィック・リム』シリーズなど。どれも僕大好きなんですけど(笑)さらに、日本の特撮やアニメ、マンガにも詳しいようなんですよね。
そんな彼が手掛ける映画なので、てっきりダークファンタジーかなと思っていたんですが、これがまた全然違うんですよ。カーニバルを舞台に、ショービズで成功しようと夢見るスタンの栄枯盛衰を描いたサイコスリラー。半魚人や巨大ロボットがいつ出てくるんだっていう期待もありましたけど、そういった空想的なものは一切なく、超現実的な路線なので、僕の中ではけっこう意外でした。
<人生のアクセルの踏みどころの難しさ>
この映画では、暗い過去を抱えながらも、パフォーマーとしての成功を夢見るスタンの生き様が面白いポイントです。公式サイトのあらすじでは"青年"ってなっていますけど、演じたブラッドリー・クーパーは47歳なので、青年って表現は適格じゃないと思うんですけどね(笑)スタンは透視術?を学び、持ち前の"華"を武器に、トップにまで登りつめるんですが、その先をどうしていくかっていうのが非常に興味深かったです。
もちろん、あそこまでの地位になったら、さらにその上を目指したくなるのはわかりますよ。わかりますけど、彼はそこで手を出してはいけない領域に入っちゃいます。そこでキーパーソンとなったのが、リリス博士(ケイト・ブランシェット)ですね。彼女は心理学者という設定ですが、人の心に漬け込み、精神を揺さぶるという点においては、スタンと同様の能力を有する存在と言えるでしょう。
そして、その出会いから、思いも寄らない方向へと物語は進んで行きます。途中、引き返せるチャンスはいくつかあったのに、スタンは自身の過去におけるトラウマもあってか、どんどんアクセル踏んじゃうんですよ。もう引き返せないところまで来てるんで、引っ込みがつかなくなったっていうのもありそうですが、「あそこで冷静になっていればなあ」って他人事ながら思います。改めて、人生においてどこでアクセルを踏むべきかっていうのは難しいなと感じますね。強いて言うなら、もう少しスタンの過去を詳しく知りたかったなっていうのはありますけど。そうしたら、彼が突き進んじゃう姿にもっと感情移入できたかもしれません。
<圧倒的な存在感のケイト・ブランシェット>
後半から登場するリリス博士。彼女を演じたケイト・ブランシェットがもう本当にヤバくて。本作のダークな世界観にバチハマりしてるんですよね!"妖美"っていう言葉、彼女のためにあるんじゃないかってぐらい、ダークで、ミステリアスで、エロくて、美しい。。。後半の主人公は彼女なんじゃないかって思うほどの存在感でした。ああ、生まれ変わったらケイト・ブランシェットになりたい。。。
<そんなわけで>
これまでのギレルモ監督の作品とは打って変わって、現実的な路線っていう意外性ある映画。スタンの栄光と衰退の移り変わりを観るのも楽しいですが、個人的にはケイト・ブランシェットの美しさだけでも観る価値がある作品だと思いました。
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