二段構造のストーリー展開やラストの意外な終わり方が従来のミステリー映画とは一味違う面白さがあった『ナイブズ・アウト:グラス・オニオン』
【個人的な満足度】
2022年日本公開映画で面白かった順位:94/197
ストーリー:★★★★☆
キャラクター:★★★★☆
映像:★★★☆☆
音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:-(配信のみ)
【作品情報】
原題:Glass Onion: A Knives Out Mystery
製作年:2022年
製作国:アメリカ
配信:Netflix
上映時間:139分
ジャンル:ミステリー
元ネタなど:映画『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』(2019)
【あらすじ】
IT企業の大富豪マイルズ・ブロン(エドワード・ノートン)が、地中海にあるプライベートアイランドに親しい友人たちを招待し、ミステリーゲームの開催を持ちかける。
ところが、島で実際に殺人事件が発生。遊びだったはずのゲームは一転して恐ろしい事件となり、参加者は全員容疑者候補になってしまう。
名探偵ブノワ(ダニエル・クレイグ)は友人同士の中で交錯する思惑や、その裏に隠された真相を明らかにすべく、事件の調査に乗り出すが―。
【感想】
『ナイブズ・アウト』シリーズ第2作目。前作同様、豪華キャスト勢ぞろいで、アガサ・クリスティの推理小説を思わせるような内容です。うまく作られていますけど、個人的には前作の方が好きでした。
<前作ってどういうお話だっけ?>
軽く前作のおさらいをしておきましょう。金持ち老人の死亡事件の真相究明と遺産相続の話で、登場人物全員が容疑者、そしてみんな人には言えない秘密を抱えているという内容で、オーソドックスなミステリー映画ながらも、テンポのよさやスピード感ある展開に個人的にはハマりました。
<今作も安定のミステリー映画感>
一方で今作は、スピード感はあまり感じられませんでしたね。ただ、"ナイブズ・アウトらしさ"は存分に発揮されていたと思います。どのキャラクターにも知られざる背景があり、様々な思惑が交錯していくのは面白いですし、ブノワが一人の女性の味方となって事件の真相を解明しようとする構図も、前作を観ている人には安定感があるかもしれません。まあ、"ナイブズ・アウトらしさ"と言うより、王道のミステリー映画って感じではあるんですけど、そもそも監督のライアン・ジョンソン自身が「アガサ・クリスティの推理小説のような映画を作りたい」と言っているので、そういう意味ではその発言通りのものになっているとは思います。
<二段構造のストーリー展開が秀逸!>
今回はストーリーの半分あたりから、タネ明かしというか、別視点で物語が進んでいきます。島で殺人事件が起こったことで、ブノワが真犯人を捜そうとするんですが、実はこの島に来る前から"ある秘密"があったということで、驚愕の真実が語られます。それを踏まえると、「あの時あの場所で起こっていたことの裏ではこんなことがあったのか」という驚きがあって、同じエピソードでもまた違った印象を受けることになります。
<グラス・オニオンとは?>
印象的なのは、今作のサブタイトルの“グラス・オニオン”と、映画の内容の関連性です。グラス・オニオンとはその名の通り、ガラスで出来たタマネギのことを指します。この島で、タマネギのように何層にも重なったエピソードが展開されていく中、それを1枚1枚剥いていくとわかる「あれ、タマネギに芯なんてあったっけ?」という疑問は、そのまま今回の事件の全貌を表しているようにも思えて、メタファーとしても楽しめました。
<そんなわけで>
アガサ・クリスティの作品が好きな人ならハマりそうなミステリー映画ですね。豪華キャストが織り成す人間模様と、最後のミステリー映画らしからぬ終わり方がよかったです。今回は舞台が海に囲まれたリゾートアイランドだったこともあり、『ナイル殺人事件』(2022)を思わせる雰囲気もありました。ネトフリで配信されていのですぐに観れますが、映画館で観たかったなあ。