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不器用で頑固な、でも愛すべき親父の姿に目頭が熱くなった『とんび』

【個人的な評価】

2022年日本公開映画で面白かった順位:16/59
   ストーリー:★★★★★
  キャラクター:★★★★★
      映像:★★★☆☆
      音楽:★★★☆☆
映画館で観るべき:★★★★☆

【ジャンル】

ヒューマンドラマ

【元になった出来事や原作・過去作など】

・小説
 重松清『とんび』(2008)

【あらすじ】

日本一不器用な男・ヤス(阿部寛)は、愛する妻・美佐子(麻生久美子)の妊娠にもうまく喜びを表せない。でも、幼い頃に両親と離別したヤスにとって、“家族”は何よりの憧れだった。

時は昭和37年、瀬戸内海に面した備後市。アキラと名付けた息子のためにも、運送業者で懸命に働くヤスだったが、ようやく手にした幸せは、妻の事故死によって脆くも打ち砕かれる。悲しみに沈むヤスだったが、人情に厚い町の人々に叱咤激励され、彼らの温かな手を借りてアキラを育ててゆく。

時は流れ、高校3年生になったアキラ(北村匠海)は、東京の大学を目指し合格を勝ち取る。だが、別居の寂しさを素直に伝えられないヤスは、「一人前になるまで帰って来るな!」とアキラを突き放す。

そして昭和63年、久々に再会したヤスと大人になったアキラだったが──。

【感想】

いやー、いい映画でしたね。泣きましたよ。。。話としてはよくある父と息子の物語なんですけどね。古き良き時代から現代に至るまでの2人の関係性を描いてるって点では、昨日観た『ベルファスト』のようなノスタルジーを感じる部分もありました。でも、個人的にはこっちの映画の方を推したいです。

<魅力的な親父>

この映画、オーソドックスな流れでありながらも、面白いと感じた理由のひとつは、何と言っても阿部寛演じるヤスのキャラクターです。不器用で、頑固で、口下手で、喧嘩っ早いっていう"ザ・昭和の男"という感じです。そんな彼が突然の事故で妻を亡くし、男手ひとつで息子を育て、なんだかんだで彼の成長を温かく見守るっていうのはギャップがあってよかったです。アキラが上京するときは寂しいくせに、きちんと見送りすらできなくて。コミュ障かって思いますよ。その上、ヤス一人だと何にもできないんですから。散々偉そうに言っておきながら、アキラが家にいないとロクに片づけもできない生活力ゼロ感(笑)

そんな父に育てられたにも関わらず、アキラは上京する前に父のことを思って、着る服を仕分けして箪笥にしまっておいたり、健康のために野菜ジュースを買いだめしておいたりと、健気な姿勢を見せてくれるところも胸を打ちます。

<波のある展開>

もうひとつ、面白いと思った理由は、展開に抑揚があったことです。先に書いた妻の事故死もそうですけど、ヤスの過去にまつわるエピソードや、大人になったアキラのまさかの展開など、楽しめる要素が多いんですよ。特に大人になったアキラとのやり取りでは、ちょいちょい笑えるところもあって、シリアスとコミカルのバランスもよかったと思います。

結局、長く日本に暮らしている身からすると、こういうキャラやストーリー展開になじみが出てきて好きになっちゃうんでしょうね。頑固親父と息子の関係性っていう設定は、過去にもいろんな映画やドラマでありますし。前時代的といえばそれまでなんでしょうけど、僕は好きです。アクションやファンタジーはだいぶ洋画に押されていますけど、こういうお国柄が出るヒューマンドラマは日本映画ならではとも思います。

<そんなわけで>

やっぱりキャラクターをしっかり描いているのが、この映画の魅力だと思います。子育てを始めとした人生の大きなイベントを扱っているので、ある程度年齢がいっている人の方が刺さりやすいかもしれませんけど。

ちなみに、本作の監督である瀬々敬久さんにおいては、過去にも刺さる作品が多かったです。『64-ロクヨン- 前編/後編』(2016)や『明日の食卓』(2021)、『護られなかった者たちへ』(2021)など。どれもオススメですよ!次回作の『ラーゲリより愛を込めて』も楽しみにしています。


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