これは2023年インド興収No.1も頷ける!過剰な演出と空前絶後のやり方で国を変革していく過程に興奮と感動の嵐だった『JAWAN/ジャワーン』
【個人的な満足度】
2024年日本公開映画で面白かった順位:3/132
ストーリー:★★★★★★★★★★
キャラクター:★×20
映像:★★★★★★★★★★
音楽:★★★★★★★★★★
映画館で観たい:★★★★★★★★★★
【作品情報】
原題:Jawan
製作年:2023年
製作国:インド
配給:ツイン
上映時間:171分
ジャンル:アクション
元ネタなど:なし
公式サイト:https://jawan-movie.com/
【あらすじ】
※公式サイトより引用。
包帯だらけの謎の男(シャー・ルク・カーン)と怪しい6人の女性たち。彼らは地下鉄をジャックし乗客を人質にとり、政府に対し4千億ルピーを要求する。
実は、謎の男はこの列車に乗っている武器商人カリ(ヴィジャイ・セードゥパティ)の娘を使って、カリから身代金を強奪することが目的だったのだ。警察は身代金が振り込まれた口座を凍結しようとしたが、すでにその金は70万人の貧しい人々へ配られていた。
混乱に乗じて逃げる謎の男と女性たちが向かったのはなぜか女子刑務所だった。彼らは悪なのか、それとも正義なのか?果たして、彼らの真の目的は一体!?
【感想】
"インドの三大カーン"のひとり、シャー・ルク・カーン主演のアクション超大作です。いやね、もう世界は勝てんですよ、インド映画のこの熱量に、、、ってぐらいすべてがぶっ飛んだ作品でしたね。ストーリーもキャラクターもアクションも歌も踊りもすべてが振り切ってて面白いのでぜひ映画館で観てほしいです。
<映画界のラーメン二郎>
本作はとにかくすべてが濃厚かつ情報量が多いです。インド映画って大体2時間半~3時間ぐらいあるのが基本なんですけど、それって変に間延びしまくってるわけじゃなくて(そういうのもゼロとは言いませんが)、多くの場合は単純に内容がてんこ盛りすぎるからなんですよ。今回はシャー・ルク・カーンが1人2役(何と何かはその目で確かめてくださいw)やっているので、2人分のエピソードがあるがゆえに相当なボリュームとなっています。映画界のラーメン二郎とはまさにこのことかと(笑)でも、そのおかげでストーリーやキャラクターへの理解も深まり、変に尻切れトンボにならずに消化不良を起こさないので好印象ですね。
<すべては主人公のために、主人公は主人公のために>
情報量が多いのでここで書けることは限られますが、まずはやっぱりシャー・ルク・カーン演じるヴィクラム・ラトールの圧倒的強さと存在感が一番印象に残りますね。まあ、インドのアクション映画って大体そうなんですが、主人公だけやたら強くて輝いているんですよ。主人公以外全員モブってぐらいチートすぎる扱いで笑っちゃいますけど(笑)そこにスローモーションの多様や過剰な水しぶきや火花などのエフェクトが入って、これでもかってぐらい主人公を盛るんです。このやりすぎだろっていう演出が個人的にはすごく好きなんですよね。なんかゲームやアニメのキャラクターっぽくて。インドでスーパーヒーロー映画がないのって、スーパーヒーローじゃなくても強い人がいっぱいいるからなんじゃないかって思いました(笑)
冒頭である村が悪者に襲われるんですが、けっこうここの描写が痛々しいんですよ。女性も子供も関係なく撃ったり斬られたりとなかなかハードな表現で。でも、そのおかげで観客としては悪者に対する嫌悪感が醸成されるので、そこからヴィクラムが敵をボコボコにするシーンのスカッと感がハンパないんですよね。もう、すべての要素は主人公への憧れを最大限にするための礎でしかないんじゃないかって。それがインド映画の定石なんでしょうね。いかに主人公に憧れさせるかっていうのが。
<インド映画のロビン・フッド>
そのヴィクラムの登場から30年後がこの映画の舞台なんですが、ここでもシャー・ルク・カーンがアーザードという役で登場しています。彼はトレインジャックをしたり保健相の大臣を撃って拉致したりと、テロ行為のようなことを仲間たちと行うんですが、ポイントはその目的です。当然、ただ人々を困らせるためにやっているわけではありません。警察の交渉役であるナルマダ・ライ(ナヤンターラ)を通じて、トレインジャックでは農民の自殺者を止めるために農家の借金をチャラにし、保健相の大臣については傷を治してほしくば物資の少ない病院に早急に必要な措置を取れと言います。長らく政府が改善してこなかったことを、ほんの数時間で解決してしまうんですね。やり方は間違っていますが、要求自体は正しいどころか、国や民を救うことに繋がっているので、まさにインドのロビン・フッドのような人物というわけです。
<最後まで観るとわかるこの映画の壮大な世界観>
そんなアーザードによる世直しだけでも小気味よくて面白いんですが、本題はそこからです。先に書いたヴィクラムの時代から続く因縁の敵との対立や、現代におけるアーザードが女性刑務所の所長をやっている理由など、点として散らばっていたあらゆる情報が物語の進行と共にどんどん繋がっていって、興奮するだけでなく、時には感動して涙が出るほどです。アクションもかっこよくて、終盤のカーチェイスシーンなんか『ワイルド・スピード』シリーズ(2001-)みたいな暴れっぷりでメチャクチャ見ごたえありました!もちろん、インド映画の十八番である歌とダンスも相変わらずド派手で、センターで踊りまくるシャー・ルク・カーンから溢れ出るスター性に視線が釘付けでした(笑)
<そんなわけで>
やり方は過激だけど瞬く間に国を変えていくのが痛快な映画です。なるほど、これは確かにインドで2023年の興収No.1になりますわ。きっと多くのインド国民が困っていることをフィクションながらも解決していくところに憧れと共感を持てるんでしょうね。それでいてただの夢物語では終わらせず、最後には国を治める人を投票で選ぶことの大切さも訴えているんだから、選挙の啓蒙映画にもなっていると思いました。これはぜひ映画館で観てほしい作品です。最後拍手出ました。