この役者に勝てる人いるのかってぐらいロバート・デ・ニーロの患者役の演技が凄まじかった『レナードの朝』
【個人的な満足度】
「午前十時の映画祭12」で面白かった順位:5/26
ストーリー:★★★★★
キャラクター:★★★★★★★★★★
映像:★★★☆☆
音楽:★★★★☆
映画館で観たい:★★★★★
【作品情報】
原題:Awakenings
製作年:1990年
製作国:アメリカ
配給:コロムビア・トライスター映画
上映時間:121分
ジャンル:ヒューマンドラマ
元ネタなど:ノンフィクション『Awakenings』(1973)
【あらすじ】
1969年、ニューヨークのブロンクス。慢性神経病の専門病院にセイヤー医師(ロビン・ウィリアムズ)が赴任してきた。当初、患者たちへの接し方に苦労したセイヤーだったが、様々な訓練療法を施した結果、次第に効果が現れ始めていた。
最も重症の患者は、30年前に入院して以来、半昏睡状態で寝たきりの生活をおくるレナード・ロウ(ロバート・デ・ニーロ)。セイヤーはまだ公式に認められていない新薬を使い、レナードの機能回復を試みるが―。
【感想】
「午前十時の映画祭12」にて。1990年のアメリカ映画。いやもう、ロバート・デ・ニーロの演技に圧倒されました。。。しかも、あのヴィン・ディーゼルの映画デビュー作っていう(エキストラみたいな位置づけでノンクレジットだけど)。
<不器用だけど人間愛に満ちたセイヤー医師の魅力>
原作はオリバー・サックスという医師が書いたノンフィクションですが、本映画はそれを基にしたフィクションです。主人公のセイヤー医師が赴任してきたのは、慢性神経病に侵された患者たちで溢れかえった病院。患者たちはこちらの呼びかけにも反応がなく、常に放心状態で治療法も見つからないままでした。ただ時が流れるのを待つだけという、死んではいないけど、もはや"生きてもいない"状態だったんですね。
そんなところにやってきたセイヤーですが、彼は患者の一人が落ちたメガネを拾い上げる動作をしたことをきっかけに、彼らに反射機能が残っていることを発見します。その証拠にボールを投げるとみんな手を伸ばしてキャッチするんですから。他の医師たちはこれまで患者に対して手間暇かけることを半ばあきらめているような状態ですが、セイヤーは先の現象から患者たちの中身は正常であるという確信を持ち、名前を呼んだり、音楽を聴かせたり、本を朗読してあげたりと、彼らと向き合って様々な訓練療法行います。人付き合いが苦手で、いい歳して独り身のセイヤーでしたが、実は人間愛に満ちた優しく誠実な人物で、その人柄はとても惹かれるポイントでしたね。後に彼は、この患者たちはみんな1920年代に流行した嗜眠性脳炎にかかった人たちだということを発見し、新薬の投与に踏み切ります。
<ロバート・デ・ニーロの圧倒的な演技力>
そんな彼が一番手をかけたのがレナードです。彼は幼い頃に病気を発症して以来、30年も入院している人物でした。レナードも当初は放心状態だったのですが、新薬の投与を始めてから劇的に症状が回復します。30年も放心状態だったのに、短期間で立って話すことができるまでに。その後、他の患者にも新薬を投与し、同様にみんな回復していきました。「そんな急激に回復する?!」っていうツッコミはさておき、このレナードを演じたロバート・デ・ニーロがとにかくすごいんですよ。
放心状態で心ここにあらずな演技があまりにもリアルでびっくりするんですが、薬で回復した後、その副作用で全身に痙攣が起きる演技が特に凄まじいんですよ。。。自分の意志とは関係なく震え出す手足を抑えながら、何とか平静を保とうと必死になる演技が圧巻でした。あの表情や言動、、、僕は演技に関してまったくの素人ですが、なんでここまでリアルにできるのかが不思議なぐらいです。
<涙を誘うレナードの自己犠牲>
もちろん、役者としてのロバート・デ・ニーロだけでなく、キャラクターとしてのレナードも印象的です。痙攣で苦しんでいる姿をビデオに残せとセイヤーに伝えるんですから。セイヤーはとても撮れる状態じゃないと拒否するものの、「構わん!俺から学べ!」と。自分を実験台にしてでも、他の患者のことも考えて治療の礎になろうとする姿勢がまた心を打つんですよ。
そんなレナードが、病院で父親のお見舞いに来ていた女性に恋心を抱くも、副作用が出ることを踏まえて自ら引き下がるところは泣けましたね。。。せっかく手に入れた自由がまた奪われるのかと。。。セイヤー自身も、彼が新薬を投与したことでレナードを一時的に覚醒させたものの、副作用が出てしまうことで、「命を与えて、また奪うのか」と葛藤するところも印象的でした。
結局、新薬に耐性ができてしまい、レナードを含む患者たちはみんなまた放心状態に戻ってしまいます。ただ、その一時的に覚醒していたときに、失われた時を取り戻そうとする患者たちを目にして、人間の魂の素晴らしさを知ったというセイヤーの言葉は、何よりも説得力がありましたね。
<そんなわけで>
とにかくこの映画におけるロバート・デ・ニーロの演技はぜひ観てほしいです。。。これまでもマフィアからボクサー、不倫する男性などいろんな役柄を演じてきましたが、まさか重度の病気を患う患者までをも演じ切るとは、本当に尊く感じますから。。。