映画史上最もよく砂漠の広大さと神々しさを映しているけれど、それ故に撮影の過酷さがメチャクチャ伝わってくる『アラビアのロレンス』
【個人的な満足度】
「午前十時の映画祭13」で面白かった順位:7/7
ストーリー:★★★☆☆
キャラクター:★★★☆☆
映像:★★★★★
音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:★★★★☆
【作品情報】
原題:Lawrence of Arabia
製作年:1988年
製作国:アメリカ・イギリス合作
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
上映時間:227分
ジャンル:戦争、歴史
元ネタなど:回顧録『智恵の七柱』(1926)
【あらすじ】
1916年、英陸軍カイロ司令部に勤務するロレンス少尉(ピーター・オトゥール)は、敵国ドイツと同盟を結ぶトルコに対して反乱を起しつつあるアラブ民族の情勢を探ろうとしていた。元考古学者で現地の情勢に詳しいロレンスは、トルコの圧政に苦しむアラビア人たちに深く同情していた。
反乱軍の指導者ファイサル王子(アレック・ギネス)に会うために旅立ったロレンスは、トルコ軍の誇る近代武器の前に成す術もない反乱軍の無力さを目の当たりにする。そこでロレンスは、アラビア民族をまとめ上げてゲリラ戦を展開し、見事トルコ軍を打ち破ることに成功。
その後も次々と勝利を収めていく一方で、ロレンスはアラブ人同士の争いや国同士の政治的駆け引きに翻弄されるようになっていく。
【感想】
「午前十時の映画祭13」にて。1988年のアメリカ・イギリス合作映画。1962年公開のオリジナル版に再編集を加えたものが本作です。オリジナル版よりも20分尺が長くなっていますね。
<こんなにも砂漠を広大に映した映画は他にない>
この映画で一番感心するところが、あの砂漠の広大さや神々しさをこれでもかってぐらいスクリーンいっぱいに映し出しているところです。引きの画が多いんですが、そのおかげでいかに砂漠が広く、そこにいる人間がちっぽけなのかがよくわかりますし、オリジナル版は公開から60年以上経っているにも関わらず、これを超える映像にいまだに出会ったことがありませんから。生れて初めて砂漠に行ってみたいなと思えるほど圧倒的な光景なんですよ。もちろん、時代的にCGなんて一切使っていません。嘘偽りのない完全に生の風景です。
<ロケの過酷さがよくわかる>
それゆえに、一度でも映画の撮影に参加したことがある人ならば、本作の撮影がいかに大変だったかが想像できるでしょう。本編を観ればわかりますが、見渡す限り砂しかなく、近くに人が住んでいる気配ゼロですよ。今ならブルーだかグリーンだかの幕を張って、その裏にスタッフが待機してるなんてこともできるでしょうが、当時はそんな便利な手法はありません。撮影についての裏話は、こちらのブログに詳細が書かれていますが、スタッフはヨルダンの砂漠にテントを張って、寝泊りしながら撮影を行ったそうです。昼は50度前後にまで気温が上がり、夜は氷点下になることも。そんな寒暖差が激しいところに、カメラなどの精密機器を持ち込んでいるなんて、そのケアだけでも相当な神経を使いそうですよね。さらに、ロケ地から水の補給地までは240kmもあり、そんなところに600人もの撮影スタッフが出入りするもんですから、毎週45トンの冷凍トラックで食料を補給していたらしいです。カットがかかるたびに砂に着いた足跡を消す必要もあり、肉体的・精神的にかなりのハードワークだったに違いないですよね。。。その撮影も2~3年続いたっていうんですから、この迫力ある映像はまさにスタッフさんたちの血と汗と涙の結晶ですよ。幸いにも、当時のヨルダン国王は撮影隊にものすごく協力的だったそうで、3万人の砂漠パトロール隊員や1万5千人のベドウィン族がエキストラとして参加したらしいです。ナイス国王。
<ストーリーがとにかく長い>
そんな苦労を経て作られた画は、先にも書いた通り本当に素晴らしいんですが、映画として観たときにまず感じるのは、「なげぇ。。。」ということです(笑)227分ってほぼ4時間じゃないですか。しかも、世界史におけるアラブ反乱の知識がないと、話もちょっとわかりづらいんですよね。簡単に言ってしまうと、ロレンスがアラブ人の反乱を手助けするうちに、イギリスからもアラブからも邪魔者扱いされてしまうっていう話なんですけど。
もともと好戦的な性格でもなければ、したたかな人間でもないんですよ、ロレンスって。ちょっと不思議ちゃんな感じはありましたけど。そんな彼が、あれよあれよと言う間にアラブの独立に一役買うことになるものの、最終的にはけっこうかわいそうな状況に陥ってしまいます。イギリス人でありながらアラブ人の手助けをするもんだから、イギリス側からもアラブ側からも「扱いづらい人物」とみなされてしまうんですよね。あれだけがんばってきたのに、最後にはアラビアから追放されてしまうという捨て駒のような扱いを受けるのはかわいそうでした。それを4時間かけて描いていくんですが、、、うーん、、、やっぱり長い(笑)移動にものすごく尺を持っていかれるので間延びしてる感じはあるんですよ。まあ、そこに時間をかけているからこそ、砂漠の広大さが伝わってくるっていうのもあるんですけどね。バランスが難しいところです。
ちなみに、ロレンスは実在する人物でもあるんですが、除隊後、オートバイを運転中に、自転車に乗っていた2人の少年を避けようとして事故を起こし亡くなってしまいました。享年46歳。戦場を生き抜いたのにこんな人生の終わり方があるなんてやるせないですよね。。。
<そんなわけで>
物語よりもあの砂漠の壮大さを感じてほしい映画です。ロレンスを演じたピーター・オトゥールはこれが映画初主演だったんですが、あの青すぎる瞳が吸い込まれそうなぐらい美しいので、そちらもぜひ注目してみてほしいです。生まれ変わったら彼のような瞳になりたいなあ。