人類史上最も尊いコラボレーションに全身鳥肌が立ち、音楽においてこの奇跡のレコーディングを超えることはおそらく二度とないであろうと思った『ポップスが最高に輝いた夜』
【個人的な満足度】
2024年日本公開映画で面白かった順位:1/17👑
ストーリー:★★★★★
キャラクター:★×100
映像:★★★★★
音楽:★×100
映画館で観たい:-(配信のみ)
【作品情報】
原題:The Greatest Night in Pop
製作年:2024年
製作国:アメリカ
配信:Netflix
上映時間:97分
ジャンル:ドキュメンタリー
元ネタなど:歌『We Are The World』(1985)
【あらすじ】
※公式サイトより引用。
1985年1月のある夜、音楽界のスーパースターたちが集結して「ウィー・アー・ザ・ワールド」をレコーディング。歴史に残る夢のようなイベントの舞台裏に迫るドキュメンタリー。
【感想】
これほどまでに眼福・耳福な作品があるでしょうか、いやない。音楽におけるアベンジャーズとは、まさにこの歌のことを言うのだろうなと思いましたね。歌聴いただけで涙出ましたもん。これは映画館で観たかった。そして、その売上をすべて寄付してほしかった(笑)
<メンバーが豪華を超えて神がかったレベル>
本作は、1985年3月28日に発売された『We Are The World』という歌の舞台裏に迫ったドキュメンタリーです。この歌はアフリカの飢餓と貧困をなくすために作られたもので、もともとはボブ・ゲルドフが始めた「バンド・エイド」というチャリティー・プロジェクトの成功に倣ったもの。実は、僕は中学生のときに英語の授業で『We Are The World』の制作風景のビデオを観たことがあるんですよ。もしかしたら、そのときと同じ映像が使われているところもあったかもしれませんね。
この歌のすごいところは、何と言っても参加しているアーティストたちの豪華さでしょう。ライオネル・リッチー、マイケル・ジャクソン、シンディ・ローパー、ボブ・ディラン、ブルース・スプリングスティーン、ビリー・ジョエル、スティーヴィー・ワンダー、レイ・チャールズ、ダイアナ・ロスなど、総勢45名が参加しています。ひとりひとりが歌を出せばチャートのトップに入るぐらいの超有名歌手で、普段、音楽はおろか洋楽なんてまったく聴かない自分でも、その名と代表曲を聴いたことがあるぐらいには、世界レベルで多大な影響力を持っている人たちだ。もはや豪華ってレベルじゃないですね、神ですよ神。
<一筋縄ではいかないレコーディング>
全員が多忙を極める中、スケジュールを合わせるのは至難の業です。そこで、多くの人が出演するアメリカン・ミュージック・アワードの授賞式の後にレコーディングを行うことを決定。時間が限られている中、ライオネル・リッチーとマイケル・ジャクソンは大急ぎで曲を制作します。
そして、1985年1月28日、ついにレコーディングの日です。続々とスタジオに集まるアーティストたち。中には自身のツアー帰りにやって来る猛者もいました。全員が集えるチャンスはこの一夜しかありません。レコーディングは夜通し行われましたが、アーティストたちの意向をすべて汲み取っている時間はなく、疲労と焦りが募る中でのレコーディングはかなり辛かったろうと想像できます。しかも、全員が一流すぎるアーティスト。体力だけでなく気疲れで精神的にも相当な負担だったに違いありません。
みんな素直に言うことを聞いてくれればいいのですが、スティーヴィー・ワンダーは「スワヒリ語で歌おう」なんて無邪気に発言して、それに反対したウェイロン・ジェニングスはスタジオを去ってしまい、アル・ジャロウはお酒を飲みすぎてミス連発。そうスムーズにはいきません。ただ、うれしいハプニングもありました。このプロジェクトを最初に構想したハリー・べラフォンテの『バナナ・ボート』(1956)をみんなで歌ったり、お互いにサインし合ったり。たった一夜の中でいろんなことがありました。ちなみに、『バナナ・ボート』ってあの『野茂英雄のテーマ』の元ネタなんですね(笑)
<各メンバーについて>
個人的に、特に印象に残った人について簡単に備忘録として残しておきたいと思います。まずは、全員をまとめる立場だったライオネル・リッチーです。これだけ尖ったアーティストたちがいれば、先に書いたようにいろんな問題が起こるんですが、それをうまく調整してプロジェクトの成功に導いた彼の貢献は大きいです。しかも、彼は歌の作詞・作曲も行い、歌手としても参加していますからね。かなり負荷がかかっていたと思います。
次に、歌のプロデュースをしたクインシー・ジョーンズ。「彼がやるなら」と集ったアーティストも多く、有名歌手たちからの人望の厚さに感服しました。彼の手腕は絶大で、あのマイケル・ジャクソンは「自分もライオネル・リッチーもひとりで曲は作れるけど、クインシー・ジョーンズがいたら偉業を成せる」と言うほどでした。
マイケル・ジャクソン。僕は音楽には疎いですが、そんな素人からしても彼の歌声は次元が違うなというのを感じます。あの高く柔らかいウィスパーボイス。歌声だけでなく、話し言葉もささやくような感じなのが印象的ですね。
シンディ・ローパー。僕が中学生のときにビデオを観たときから、その見た目の派手さが強烈に頭に残っていて、いまだに忘れられません。もちろん、見た目だけでなく、歌唱力もハンパないぐらいパワフル。あれだけ高い音域でシャウトできるのが本当にすごいなと思いました。
ブルース・スプリングスティーン。彼もまた中学生のときから、そのダミ声が印象に残っていました。彼の歌は映画でもよく使われいるのですが、今回のドキュメンタリーを観て、ようやくこのダミ声の主がブルース・スプリングスティーンとして一致しました(笑)
ボブ・ディラン。このレコーディングの中で、唯一最後まで笑わなかった人です。まわりがみんな楽しんでいる中で、ひとりだけ苦しそうな表情をしていたんですよね。実は、彼は自分がマイケル・ジャクソンやスティーヴィー・ワンダーのように歌えないことに苦悩し、どう歌ったらいいかわからなくなっていたそうです。最終的には「OK」が出てうれしそうでしたが、ずっとひとりでムスッとした表情だったのを観て、いかに有名な歌手とはいえ、ここまでずば抜けた才能の持ち主が大勢いると自分を見失いかねないんだなということを感じました。
<そんなわけで>
歌自体もシンプルで覚えやすいので僕はずっと好きですし、何よりも一流アーティストが一堂に会する画のインパクトがデカすぎました。昔と比べると現代は娯楽が多様化し、ひとりひとりのスター性が薄れている気がするので、これほどのインパクトはもう出しづらいかもしれませんね。なお、この歌が集めた寄付金は現時点で1億6000万ドルだそうです。歌の持つ力の大きさよ。本当に素晴らしいドキュメンタリーだったので、各アーティストのファンはもちろんのこと、そうじゃなくてもぜひ観ていただきたいです。