タイトルからは想像できないほどファンタジックバトル炸裂な明治能力者浪漫譚だった『わたしの幸せな結婚』
【個人的な満足度】
2023年日本公開映画で面白かった順位:34/43
ストーリー:★★★★☆
キャラクター:★★★★★
映像:★★★☆☆
音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:★★★★☆
【作品情報】
製作年:2023年
製作国:日本
配給:東宝
上映時間:115分
ジャンル:アクション、ファンタジー、ラブストーリー
元ネタなど:小説『わたしの幸せな結婚』(2019-)
【あらすじ】
文明開化もめざましい近代日本。特殊な能力【異能】を受け継ぐ家系の者たちが代々、国を治める帝と共に、様々な災いから人々を守り続けてきた。
帝都に屋敷を構える異能家系の長女・斎森美世(今田美桜)は、能力を持たずに生まれたことで、継母と異母妹から虐げられて生きてきた。すべてをあきらめ、耐え忍んで生きる彼女に命じられたのは、若くして異能部隊を率いる、冷酷無慈悲な軍人・久堂清霞(目黒蓮)との政略結婚だった。
数多の婚約者候補が三日も持たずに逃げ出したという噂の通り、清霞は美世に冷たく言い放つ。
「ここでは私の言うことに絶対従え。出ていけと言ったら出ていけ。死ねと言ったら死ね――」
辛く当たられようと逃げ帰る場所のない美世は、久堂家で過ごすうち、清霞が悪評通りの人物ではないことに気づいていく。そして清霞もまた、美世の心遣いに触れ、いつしか2人は互いに心を通わせるようになる。
しかし、その頃帝都では、不穏な【災い】が次々に人々を襲う事件が発生。清霞はその最中で国民の盾となることを命じられる。命を賭して戦う清霞。
その身を案ずる美世。【災い】の影には、思いもよらぬ陰謀が渦巻いていた。任務を全うする清霞の背後で、美世にも魔の手が迫る。
やがて残酷な運命が、容赦なく二人を切り裂いていく――。
【感想】
原作小説は未読なんですけど、いやー、これね、面白かったですよ!タイトル通り受け取って、よくあるキラキラ青春純愛物語だったら観なかったと思います。でも、予告の時点でファンタジックなバトルシーンがあったので、それに惹かれて鑑賞したら、これが思いの外よかったっていう!完全にタイトルに騙されました(笑)
<ありそうでなかった魅力的な世界観>
この映画、邦画の実写にしては珍しい世界観なんですよね。まさかの時代劇×ファンタジーですから。架空の世界ではありますが、明治や大正時代を思わせる雰囲気の中で炸裂する異能の力。まあ、言ってしまえば"能力者"ってことで、魔法みたいなもんですよ。それを、代々伝わる血筋だとか家柄だとかに絡めて、その血をを濃くするために政略結婚が多いっていう設定は、日本らしくアレンジされているので、日本人ならなじみ深いんじゃないでしょうか。
個人的には、こういうファンタンジー要素のある映画においては、バトルシーンはド派手で大規模な方が好きなので、そういう意味では本作はちょっとこじんまりしてるかなっていう印象はあります。とはいえ、ハリウッド映画のような形にはできない中で、必要最低限に押さえた演出は、逆にこの古き良き日本の世界観にマッチしていたようにも思います。変にド派手にしたら、それこそミスマッチだったかもしれません。
<キャストの演技が素晴らしい>
さらに、キャラクターも魅力的なのがこの映画のもうひとつの推しどころです。まず、能力者の家系に生まれながら、その能力が開花しないために虐げられた美世。『シンデレラ』(1950)や『家なき子』(1994)並みにいじめられています。そんな環境で育ったものですから、とにかく自己肯定感がメッチャ低くて、何かあるとすぐに「申し訳ありません」って呼吸するように謝るんですよ。そんな美世を演じた今田美桜さんの演技がうまくて!今まで彼女が演じた役って、どちらかといえば自己肯定感が高いキャラクターが多いイメージなんですけど、今回のように生きていることに常に申し訳なさを感じているような幸の薄さを醸し出す演技がよかったですね。
そして、火、氷、水など複数の能力を扱う久堂。あの目黒蓮さんがですよ、手から炎や氷を出しちゃうんですよ。イケメンがやると似合うんですよねー、そういうの。口数は少ないんですが、美世を傷つけた者に見せる怒りの表情がよくて!もう尊さしかないなって。これはファンの人にはたまらないでしょうなあ。ただ、冷酷無慈悲という設定がどこからくるのかはちょっとわかりませんでした。そう聞いてはいましたが、職場ではまわりからすごく慕われていましたし、美世にも優しいですし、彼の何が冷酷無慈悲と判断されたのかが映画だけではつかめませんでした。
<そんなわけで>
個人的には、世界観とキャラクターがすごく好みの映画でした。タイトルだけで判断して毛嫌いしなくてよかったですよ。内容としては普通に面白いのでオススメです!Snow Manの歌う『タペストリー』って主題歌も耳なじみがよくて気に入りました。あの終わり方からして、商業的に成功すれば続編も期待できそうです!