
実は地球を支配しているのは彼らじゃないかと思うキノコの神秘に迫ったドキュメンタリー『素晴らしき、きのこの世界』
【個人的な評価】
2021年日本公開映画で面白かった順位:64/205
ストーリー:★★★★★
キャラクター:★★★★☆
映像:★★★★☆
音楽:★★★☆☆
映画館で観るべき:★★★★☆
【以下の要素が気になれば観てもいいかも】
ドキュメンタリー
キノコ
【あらすじ】
キノコ・菌類は、食物としてだけでなく、様々な生命の再生や維持、アルツハイマーやがんなどの治療、環境汚染の浄化にまで役立つことから、地球上の様々な問題へのきのこの応用が今、期待されている。
本作は幻覚作用をもたらす一方で、人間の命を救うほどの力も持っていると言われる、キノコ・菌類の可能性を提示する。偉大で神秘的なキノコの力を知ることで、鑑賞後には誰もが未来への希望を感じるはず。
パンデミックを経験し、希望をなくしがちな今だからこそ、心に響く一作だ。
【感想】
これはメチャクチャ興味深いドキュメンタリーでした。学生時代の理科の授業とかに観たかったですねー。キノコと言って思いつくのは食べることぐらいですが、彼らの持つ機能はもっと神秘的かつ、もしかしたら地球を支配しているのは彼らなんじゃないかと思うほどです。キノコは菌類に属しますが、そもそも菌類は現時点で150万種類あります。そのうちキノコになるのは2万種類ほど。諸説あるかもしれませんが、彼らの注目すべき点は以下の4つです。
【驚異の分解パワー】
キノコの「分解」する力って凄まじいんですよ。自然界においては、枯れた葉や木、動物の死骸など、いらなくなったものをすべて分解してくれます。そして、そこからまた新しい命が生まれるんですね。まさにキノコは命の終わりと始まりを司っている生き物なんです。中には油を分解する種類もあり、原油流出事故の型付けにも使われたりするぐらい、彼らの分解機能には目を見張るものがありました。
【ネットワーク機能】
個人的にはこれが一番びっくりしたんですけど、キノコの恐るべき機能のひとつに"ネットワーク"があります。胞子から発芽すると、菌糸と呼ばれる糸状のものを伸ばしていくんですが、それが寄り集まって、みんなのよく知るキノコの形になります。地中ではその菌糸がどんどん伸びていて、例えば森の中だと、無数のキノコの菌糸が網目状に絡み合います。まさに脳神経やインターネットのつながりを可視化したようなイメージですね。一説によると、その距離は数万キロに及ぶ場合もあるそう。
しかもすごいのが、森の木々はその菌糸ネットワークを伝って、同種の木を認識しているらしいんですよ。それでお互いに養分を送り合ったり、新芽にはより多くの養分が行くようにしたり、まさにコミュニケーションを取っているかのような働きをするんですって。その連絡網の役割を菌糸が果たしているんです。
【幻覚作用による人類の進化】
興味深いことに、人類の進化にキノコが役立っていたのではないかという話もありました。幻覚作用があるキノコは昔からあって、それを類人猿が食べた可能性もあるとのこと。それを食べることで、共感覚(ある感覚が別の感覚を引き起こすこと)が生まれ、それが人類の進化を促したとかなんとか。そこでのひらめきとかで、道具を使うようになったかもしれないと考えられているようです。
【医療にも応用されるキノコ】
キノコは医療にも使われています。ペニシリンも元は菌類ですよね。幻覚作用のあるマジックマッシュルームに含まれるシロシビンという成分は、幸福感をもたらす効能から、うつ病の治療にも使われているケースもあるみたいなんです。
【地球の支配者は菌類なのでは】
人類が滅亡したら、地球を支配するのは菌類なのではないかという人もいるんですよ。だって、人間は70億人もいるのに、外からの攻撃にめっぽう弱いじゃないですか。けっこう簡単に死んじゃったりして。生身の体では、自然界においては人間は最弱の部類だと思います。脳を発達させる代わりに、武器や防具の類をアウトソーシングしてしまったから。
ところが、菌類はとてつもなくたくましい。はるか昔、小惑星が地球に衝突し、自然環境が大きく変わった後も、地中で菌類は生き続け、再びこの世界を住みやすい星に変えました。生物としての存在価値を考えたら、圧倒的に菌類の方が高そうじゃないですか(笑)
鍋に入っているような食材がですよ?地中において宇宙を感じさせるようなネットワークを張り巡らし、様々な生命の再生や維持、病気の治療、環境汚染の改善に役立っているというのが意外すぎて。
【その他】
タイムラプスを使って撮影されたキノコの成長過程の映像も美しく、この映画を観ると、キノコの見方が変わりますね。もうキノコに足を向けて寝られません(笑)
ちなみに、ナレーションを担当しているのは、MCUのキャプテン・マーベル役でおなじみのブリー・ラーソンでした。