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美しくも儚い人喰い映画『ボーンズ アンド オール』

【個人的な満足度】

2023年日本公開映画で面白かった順位:28/32
  ストーリー:★★★☆☆
 キャラクター:★★★★☆
     映像:★★★☆☆
     音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:★★★☆☆

【作品情報】

   原題:Bones and All
  製作年:2022年
  製作国:アメリカ
   配給:ワーナー・ブラザース映画
 上映時間:130分
 ジャンル:ラブストーリー
元ネタなど:なし

【あらすじ】

生まれながらに人を喰べる衝動を抑えられない18歳の少女マレン(テイラー・ラッセル)。彼女はその謎を解くために顔も知らない母親を探す旅に出て、同じ宿命を背負う青年リー(ティモシー・シャラメ)と出会う。

初めて自らの存在を無条件で受け入れてくれる相手を見つけ、次第に求め合う二人。しかし、同族は絶対に食べないと語る謎の男サリー(マーク・ライランス)の出現をきっかけに、危険な逃避行へと身を投じていく―。

【感想】

君の名前で僕を呼んで』(2018)のルカ・グァダニーノ監督とティモシー・シャラメの再タッグということで鑑賞しました。でも、設定が非現実的すぎて、個人的にはあの映画ほどは切なさは感じられませんでしたね(笑)

<異国の地で出会った同じ人種に抱く安心感>

この映画はマイノリティ同士の恋愛模様を描いています。ただ、そのマイノリティというのがまさかの"人喰い"なんですよね。昨日観た『アラビアンナイト 三千年の願い』もそうですが、一癖ある設定の恋愛映画が流行っているんでしょうかね(笑)

さて、事の発端はマレンが起こしたある事件です。それは、お泊まり会でクラスメイトの指をモグモグしちゃうというスプラッター。冒頭からいきなりこんなシーンなので、ラブストーリーと聞いていたけどホラーなのかなと思たほど。マレンは一体何者なんだって話ですが、まさかの人喰い少女なんですよ。明確な説明はありませんが、もうそういう種族って感じでした。遺伝子に問題があるとかウイルスにやられたとか、そういうのではなく、「人を喰う種族」だと。見た目は普通の人間ですし、普通の食事もします。だから、まわりからはまさかこの子が人を喰うなんて微塵も思わないでしょう。でも、彼女は過去にも同様のことを行った経緯があり、そのせいで母親に捨てられ、ついには父親にも捨てられ、居場所がありません。だから、父が残してくれた自分の出生証明書に書かれた母親の住む街に向かおうと。『母をたずねて三千里』(1976)ってところですね。

その道中でリーと知り合います。ただでさえ居場所がない中で、同じく人喰いのしかもイケメンに出会い、同じように暗い過去を持つっていうんですから、恋に落ちるのに時間はかかりません。母を探す旅に同行し、絆は徐々に深まっていきます。で、たまに人を喰うと(笑)リーには家族がいましたが、誰も彼の本性は知りません。やはりリーも、同じような境遇のマレンに惹かれていきます。この世界には同じような人喰い種族が一定数いるようですが、どこにいるかはわかりませんからね。海外に行ったときに同じ人種に出会うとちょっと安心するみたいなのがあると思いますが、マレンとリーにも同じような感覚はあったのではないでしょうか。

<ゆーても普通すぎる恋愛映画>

設定が奇抜なので、さぞ斬新な恋愛模様が観れるんだろうと期待する人もいるかもしれませんが、正直そんなことはなかったかなと僕は思いました。2人が人喰いっていうところを除けば、普通の恋愛映画ですよ。しかも、恋愛する上での障害も特にないので、むしろラブストーリーとしても面白いかと言われると、個人的には首を縦に振りづらいですね。。。(笑)マレンやリーは、自分たちが生きるためには、必ず誰かの人生を奪わなければなりません。その行為にマレンは葛藤がありますが、リーは致し方ないことだとややドライに捉えています。この考え方の違いから徐々に亀裂が入っていくみたいな流れならもう少し楽しめるかなとは思ったんですが、そうもならないんですよね。別れたところで他に生きる選択肢もないので、なんだかんだでいっしょにいます。まあ、厳密には別のことが原因で少し離れることもありましたが、結局は元に戻っています。

結局、2人が同種族なのであんまりドラマにならないのかなと感じました。もし、これが普通の人間と人喰いとの恋愛で、"好きだから食べたいのを我慢する。でも……"みたいな展開だったりとか、普通の人間たちに人喰い種族が迫害されて、どちらかが殺されちゃうとか、そういうドラマチックな方が僕は好きです(笑)

ラストはジャンプスケア的な演出にちょっとビクッとしますが、内容としては想定通りでしたかねー。だいぶ無理矢理な気もしますが、もうそれしか終わらせ方がないよねっていう。

<そんなわけで>

ラブストーリーではありますが、監督の過去作である『君の名前で僕を呼んで』を想定していると、だいぶ期待外れになってしまうかもしれません。あれは"禁じられた恋"に手を伸ばす青年の切ない想いが存分に溢れていましたが、こっちはそういう胸が締めつけられるような描写がないので。むしろ、意外とスプラッターでグロいので、そういうのが苦手な人は注意した方がいいです(笑)相変わらずティモシー・シャラメは美しかったですけど。


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