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モラハラ・パワハラ・セクハラが当たり前で女性が奴隷のような扱いを受けている中で、自分を愛し自由を手にしたセリーの姿に涙した『カラーパープル』

【個人的な満足度】

2024年日本公開映画で面白かった順位:5/13
  ストーリー:★★★★★
 キャラクター:★★★★★
     映像:★★★★★
     音楽:★★★★★
映画館で観たい:★★★★★

【作品情報】

   原題:The Color Purple
  製作年:2023年
  製作国:アメリカ
   配給:ワーナー・ブラザース映画
 上映時間:141分
 ジャンル:ミュージカル、ヒューマンドラマ
元ネタなど:小説『The Color Purple』(1982)
      映画『カラーパープル』(1985)

【あらすじ】

※公式サイトより引用。
優しい母を亡くし横暴な父の言いなりとなったセリー(ファンテイジア・バリーノ)は、父の決めた相手と結婚し、自由のない生活を送っていた。さらに、唯一の心の支えだった最愛の妹ネティとも生き別れてしまう。

そんな中、セリーは自立した強い女性ソフィア(ダニエル・ブルックス)と、歌手になる夢を叶えたシュグ(タラジ・P・ヘンソン)と出会う。彼女たちの生き方に心を動かされたセリーは、少しずつ自分を愛し未来を変えていこうとする。

そして遂に、セリーは家を出る決意をし、運命が大きく動き出す──。

【感想】

原作小説は未読ですが、本作に備えて1985年版の映画は鑑賞しました。もともとはスティーヴン・スピルバーグ監督の映画だったのを、ミュージカル映画としてリメイクしたのが本作。感動的なストーリーと、圧巻の歌とダンスパフォーマンスが最高でした。

<女性が虐げられる環境が見るに堪えない>

この映画、実はけっこう重い設定なんですよ。主人公セリーは父親(終盤でで真実が明らかになりますが)の子供を2人身籠るも、生まれた直後に引き離されて生き別れ状態。その後、彼女は父親の決めた相手"ミスター"(コールマン・ドミンゴ)と結婚するも、ミスターは当初、妹のネティ(ハリー・ベイリー)を欲しがっていたんですね。でも、父親が「ネティは頭がいいからダメ。ブスだけどよく働くネリーならあげる」ってんで、本人のいないところで勝手に決めちゃって。自分の娘であっても女性が"モノ扱い"なんですよ。

セリーはミスターの家に嫁いでも、家の掃除や彼の子供の面倒、夜の生活など、まるで奴隷のような毎日を送ります。しかも、セリーが嫁いだ後、ネティは父親に手を出されそうになってセリーのもとに逃げて来るんですが、そこでもミスターに犯されそうになります。。。それを拒絶したが最後、ネティは激怒したミスターに家を追い出され、ここでも姉妹は生き別れになってしまいます。ミスターも何にキレてるんだって話ですが、彼はとにかく自分に反抗する女性が大嫌いなんですよ。自分が一番偉い、女性が一番下っていう価値観なので。もう現代で言うモラハラ・パワハラ・セクハラのオンパレードなわけです。それでいて、黒人自体の地位も低いため、白人からの扱いもひどく、この1900年代初頭の時代背景はとても観るに堪えない状況でした。日本でも昔は今以上に男性主権の社会でしたけど、それをはるかに上回るひどさがありましたね。

<縛られない生き方を覚えていくセリー>

しかし、そのような中でも革命的な人物ってのがいるんですね。それが、男と戦う自立したソフィアと、歌手となって男を虜にするシュグです。この2人との出会いが、セリーの運命を大きく変えます。クソみたいな生活の中でも腐らずに粛々と生きてきたセリーもたくましいんですけど、2人と出会うことでさらに戦うことと自分を愛することを覚えました。終盤でセリーがこれまでの心情を思い切り吐露する場面は、オリジナル版同様一番の見どころでしたね。日々生きていく中でいろいろ鬱憤が溜まって、でもそれをリアルでぶちまけたら角が立ってしまうので、今だったらSNSとかに思いの丈を書くんでしょうけど、ああやって人に感情をぶつけられたらどんなにスッキリするだろうってのはよく映画を観ていて思います(笑)

<オリジナル版とリメイク版の違い>

本作はミュージカル映画としてリメイクされたこともあり、やっぱり歌とダンスも注目ポイントです。エンドクレジットを見るとダンサーなんか100名を優に超えていましたが、それほどの大所帯で繰り広げられるパフォーマンスは圧巻です!主要キャストはみんな歌がうまいですし、ダンサーは画面の奥の方にいるモブでさえキレッキレの動きを見せてくれて視覚的にも強烈なインパクトがありました。今ドラマでやっている『不適切にもほどがある!』とは全然違います(笑)

そこがオリジナル版との大きな違いで、ミュージカルになったことで映画全体がオリジナル版よりもポップというか前向きな雰囲気になっているんですよ。もちろん、ストーリーや設定に大きな違いはないんですが、歌とダンスがあることで、女性たちがより強く生きようという姿勢が伝わってきます。また、最後の歌で「自分を愛することができるようになった」という言葉を歌詞に入れたのも印象深いんですよね。メッセージとしてはオリジナル版でも行間を読めばあったのかもしれませんけど、あえて言葉として明文化したのは、現代を生きる人へのメッセージとも言えそうです。

他にも、オリジナル版でわかりづらかったシーン(特にミスターが見せる唯一の優しさのところ)も、描写が丁寧になって理解しやすくなっていましたし、今回はいいリメイクだったと個人的には思いました。

<そんなわけで>

虐げられてきた女性たちが立ち上がる姿に勇気をもらえる映画だったと思います。同じ男から見ても当時の男性社会には反吐が出そうですが、その中でもたくましく生き抜いたセリーは強いです。ちなみに、オリジナル版でセリーを演じたのはウーピー・ゴールドバーグで、ソフィアを演じたのはあの名司会者のオプラ・ウィンフリーなんですけど、2人がちょうど30歳ぐらいだったのも今思うとエモいです。


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