マフィアの兄と警察官の弟のブラザーフッドに涙した香港ノワールの金字塔『男たちの挽歌 4K リマスター版』
【個人的な満足度】
「午前十時の映画祭14」で面白かった順位：4/14
ストーリー：★★★★★
キャラクター：★★★★★
映像：★★★★☆
音楽：★★★★☆
映画館で観たい：★★★★★
【作品情報】
原題：英雄本色（A Better Tomorrow）
製作年：2022年（オリジナル版は1986年）
製作国：香港
配給：ツイン
上映時間：96分
ジャンル：ヒューマンドラマ、アクション
元ネタなど：なし
公式サイト：https://asa10.eiga.com/2024/cinema/1308/
【あらすじ】
※公式サイトより引用。
ホー（ティ・ロン）と相棒のマーク（チョウ・ユンファ）は、紙幣偽造組織の幹部。ホーには警察官を目指す弟キット（レスリー・チャン）がいたが、闘病中の父親に諭され、弟のために足を洗おうと決意する。最後の仕事としてホーは台湾に赴くが、取引は失敗し逮捕されてしまう。
3年後、出所したホーは香港に戻るが、今や刑事となり、兄の真の姿を知ったキットの怒りは激しく、絶縁を言い渡されてしまう。
兄は弟と和解するため堅気になるが。
【感想】
「午前十時の映画祭14」にて。1986年の香港映画の4Kリマスター版。フレンチ・ノワールと日本の任侠映画が大好きなジョン・ウー監督が手がけたそれらのハイブリッドのような作品でした。それまでコメディやカンフーが多かった香港映画に、新たに「香港ノワール」というジャンルを根付かせた映画でもあるらしいですね。
＜仁義を大切にする男社会＞
本作はひとことで言ってしまえば、香港のヤクザ映画って感じなんですが、実際に観てみると本当に面白いです。男同士の義理や人情が色濃く出た作品で、香港映画ながらもどこか懐かしい感じがするのは、日本の任侠映画の要素も含んでいるからかもしれません。そして、義理や人情が強いからこそ、マフィアなのに怖くないというか、男として芯の通ったキャラクターたちに魅了されます（決して反社そのものをよしとしているわけではないです）。
＜悪の兄と正義の弟の対比に心動かされる＞
特に印象的なのは、マークとキットのブラザーフッドです。マークとホーの相棒同士の友情もいいんですが、やっぱりこの兄弟ですよ。兄のマークはマフィアで、弟のキットは警察官。しかも、キットは兄の仕事を知りません。だけど、マークが取引先の裏切りによって警察に捕まったことでそのことが明るみに出るだけでなく、取り調べを受けるホーへの脅しとして彼の所属する三合会はホーの父親の身柄を拘束しようとするんですよ。で、刺客を送り付けるものの、たまたま居合わせたキットとの乱闘の最中、父親は刺殺されてしまって。これでキットは怒り心頭。正義の象徴である警察官を目指す立場なのに、兄はマフィアで、その兄のせいで父親は殺されたわけですから。しかも、兄がマフィアであることを理由に昇進すらできないときたもんです。3年経ってホーが出所し、カタギに戻るよう努力していても、キットは兄を許すことはできず、2人の溝が埋まることはありませんでした。
＜人として尊敬できるホーの真っ直ぐな生き方＞
転機が訪れたのは、ホーがマークと共に新たな仕事を依頼されたから。依頼したのがシン（レイ・チーホン）っていう三合会の幹部です。ホーが捕まる前まではペーペーだったのに、ホーがいない間に幹部に出世し、今ではボスを差し置いて三合会を掌握するまで上り詰めたやり手です。あんなにホーやマークにペコペコしていたのに、急に偉そうになった豹変っぷりに驚きましたけど。そのマークも今やシンの下っ端として働く身。実は、マークはホーが捕まった後に彼の仇を取ろうと、単身敵地に乗り込んで皆殺しにするんですが、そのときに足を負傷してしまい、いまだに歩くのが困難なほどの後遺症が残っています。
マークは再び返り咲こうとシンの依頼を引き受けようとしますが、カタギになったホーは弟のこともあり、仕事は引き受けないと断ります。が、それをよしとしないシンは弟のキットにも手を出そうとするんですね。いかにもマフィアらしいやり方です。紆余曲折を経て、マークとホーはシンと戦うハメになるんですが、そこに最終的には兄を受け入れたキットも参戦し、本作最大のクライマックスである銃撃戦へ。火薬を大量に使った爆発シーンもあって、メチャクチャ見ごたえありました！何とかシンを倒したホーは、最後に弟に自分を逮捕させる形を取るんですが、いやはや、このホーって男はどこまで義理堅いんだと、その漢気溢れる姿に涙しちゃいました。
＜そんなわけで＞
男同士の義理と人情、友情と兄弟愛が交錯するとても面白い映画でした。こういう男性像は現代にはそぐわないかもしれませんが、あの義理堅さは見習いたいですね。ホーみたいな上司が欲しいです（笑）