今年の締めくくりにふさわしい!まさに国境を超えたアッセンブル!フランス料理のAll for Oneに歓喜と涙が入り混じる大人のスポ根映画『グランメゾン・パリ』
【個人的な満足度】
2024年日本公開映画で面白かった順位:18/147
ストーリー:★★★★★★★★★★
キャラクター:★★★★★★★★★★
映像:★★★★★
音楽:★★★★★
映画館で観たい:★★★★★★★★★★
【作品情報】
原題:-
製作年:2024年
製作国:日本
配給:東宝、ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
上映時間:117分
ジャンル:ヒューマンドラマ
元ネタなど:テレビドラマ『グランメゾン★東京』(2019)
公式サイト:https://grandmaison-project.jp/movie/
【あらすじ】
※公式サイトより引用。
「グランメゾン東京」が日本で“三つ星”を獲得してから時が経ち―。尾花夏樹(木村拓哉)は早見倫子(鈴木京香)と、フランス料理の本場・パリで、新店舗「グランメゾン・パリ」を立ち上げ、アジア人初となるミシュラン“三つ星”を獲得するために奮闘していた。
名だたる巨匠たちがしのぎを削る本場フランスで、フランス料理で“三つ星”を獲得することは、尾花にとっての悲願。だが異国の地のシェフにとっては、満足のいく食材を手に入れることにすら高い壁があり、“三つ星”に選ばれるなど夢のまた夢。「グランメゾン・パリ」は結果を出せない日々が続いていた。
そしてあるガラディナーでの失態が原因で、かつての師と「次のミシュランで三つ星を獲れなければ、店を辞めフランスから出ていく」という約束を交わしてしまう…。
かつてカリスマシェフと称された尾花夏樹は、挫折や国境の壁を乗り越え、仲間と共に世界最高峰の“三つ星”を手に入れることは出来るのか―!?
【感想】
僕の2024年日本公開映画最後の作品。今年の映画納めにふさわしい映画でした。ミシュランの三つ星獲得に向けての対立、葛藤、情熱。ある意味、大人の青春といった感じで胸が熱くなりましたね。
<元ネタはテレビドラマ>
本作は2019年に放送されていた『グランメゾン★東京』の劇場版で、ちょうど昨日、今回の映画に繋がる形でのスペシャルドラマも放送されていましたね。僕は『グランメゾン★東京』がここ5年のドラマの中で一番好きだったので、個人的にはこの映画に対する期待も高かったですし、実際、興奮と涙でとても楽しむことができました。
<王道ストーリーだからこそのわかりやすさ>
今回の映画(というよりテレビドラマ版も含めてになりますが)の面白いところはいくつかあるんですけど、まずはフランス料理を題材にした大人のスポ根要素です。テレビドラマ版では東京ミシュランの三つ星を獲るために、映画ではフランスミシュランの三つ星を獲るために、チーム一丸となって切磋琢磨していく流れはオーソドックスであるがゆえにわかりやすくて気持ちいいです。決して斬新な設定があったり、振り切ったキャラクターが出てくるわけではないんですが、みんなが対立や葛藤を乗り越えてひとつの目的のためにがんばる姿は心を打ちやすいです。
<夢に届かない苛立ちが状況を悪化させていく>
その王道ストーリーの中で活きてくるのが木村拓哉演じる尾花夏樹というシェフです。キムタクらしいみなまで言わない性格で人に頼ることが下手なんですが、料理の腕は超一流。かつて彼がいたグランメゾン東京で降りかかってきた幾度の危機も、彼の手腕によって解決されることも多かったです。
が、フランス料理の激戦区であるパリではそうもいきません。よそ者にはいい食材がまわってこず、いつまで経っても二つ星止まり。そんなこともあって、尾花はシェフとしてメニューの方向性を「他国の要素は一切入れず、伝統的なフランス料理の形を守る」ことを決意します。三つ星に届かない苛立ちからか、他人の言うことは耳に入らず、どんどん独裁的な傾向に陥っていき、チームの雰囲気は最悪な方向へ。グランメゾン・パリの存続も危ぶまれていきます。
<自分を変えることができる柔軟さが大事>
でも、やっぱり尾花にはカリスマ性があるんでしょう。対人コミュニケーションにはやや難ありですが、彼の作る料理には人を幸せにする力があります。だから、そんな彼に三つ星を獲らせたいと思う倫子さん(鈴木京香)や、尾花が三つ星を獲ってスピーチする姿を見たい京野さん(沢村一樹)は、水面下でいろいろ動いて尾花の夢を叶えようとするわけです。よく「早く行きたければひとりで行け、遠くへ行きたければみんなで行け」みたいなことを耳にしますが、尾花にとって三つ星はその「遠いところ」であり、ひとりでは獲れないことを痛感し、最終的には自ら頭を下げ、みんなの協力を仰ぎました。また、「フランス料理は進化する」という師の言葉を思い出し、自分のチームが多国籍であることを武器に、様々な国の要素を料理の中へ入れるという最大の変化を遂げます。
プライドの高い天才的なシェフが失敗を糧に自分のやり方を変えて再び立ち上がる展開はやっぱり面白いですね。意固地な部分もありつつ、最終的にはまわりの環境に柔軟に対応していくことが成功への近道ということを教えてくれます。他のドラマや映画でもスポーツやビジネスを題材にしたものではよくそういうのを目にしますけど、それを料理の世界でやったというのがこの映画のポイントかなと。いい歳した大人たちが本気で夢のために突き進んでいる姿はかっこいいし応援したくなりますね。スポ根モノって若い子がメインのことが多いので、そういう意味では新鮮というか、海外の作品みたいに大人たちががむしゃらにがんばるのは日本の作品においてめずらしいかもしれません。
<うっとりするような芸術作品のような料理たち>
そして、この映画でもうひとつ推したいのが美しい料理の数々です。僕自身、そこまで食にこだわりがある方ではないですし、日頃からマクドナルドや松屋をこよなく愛していますが、本作で出てくる料理は当然ながら完全に別物です。味だけでなく(映画じゃ味はわかりませんがw)、盛り付けの色合いやレイアウトが繊細で美しく、まるで芸術作品のようです。さらに、客のもとに料理が出てくるときに一番おいしい状態になるように、食材だけでなくお皿の温度まで計算され尽くして提供されるんですよね。もう職人とかアスリートとかそういう領域だなと感じます。どんなに満腹の状態でもこれを観ると自然とお腹空いてくるのがすごいです。
<そんなわけで>
フランス料理を通じて大人たちが情熱と執念を持って突き進むのがとても面白い映画でした。キムタクがやっているからかはわかりませんが、これを観ていると料理の道に進むのもいいなあと思えてきます(笑)テレビドラマ版を観ていた方がより楽しめると思いますが、大きなスクリーンで美しい料理の数々を堪能できるのはこの映画だけです。ぜひ年末年始に映画館へ足を運んでみてはいかがでしょうか。