アメリカの空気を知らない身としては、ある意味『翔んで埼玉』のような内輪感を感じた『シビル・ウォー アメリカ最後の日』
【個人的な満足度】
2024年日本公開映画で面白かった順位:101/114
ストーリー:★★★☆☆
キャラクター:★★★☆☆
映像:★★★★☆
音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:★★★★☆
【作品情報】
原題:Civil War
製作年:2024年
製作国:アメリカ
配給:ハピネットファントム・スタジオ
上映時間:109分
ジャンル:アクション、戦争
元ネタなど:なし
公式サイト:https://happinet-phantom.com/a24/civilwar/
【あらすじ】
※公式サイトより引用。
連邦政府から19もの州が離脱したアメリカ。テキサスとカリフォルニアの同盟からなる“西部勢力”と政府軍の間で内戦が勃発し、各地で激しい武力衝突が繰り広げられていた。
「国民の皆さん、我々は歴史的勝利に近づいている——」。
就任 “3期目”に突入した権威主義的な大統領はテレビ演説で力強く訴えるが、ワシントンD.C.の陥落は目前に迫っていた。
ニューヨークに滞在していた4人のジャーナリストは、14ヶ月一度も取材を受けていないという大統領に単独インタビューを行うため、ホワイトハウスへと向かう。
だが戦場と化した旅路を行く中で、内戦の恐怖と狂気に呑み込まれていくー。
【感想】
あのA24が史上最高額の製作費を投じて作り、アメリカで2週連続1位という実績を打ち立てた映画。それだけで相当に期待が高まっていたのですが、実際に観てみたら「お、おう、、、」という感想の作品でした(笑)これは、なかなか日本人には理解されづらいかもしれません。
<映画を観ただけでは状況がよくわからない>
僕はてっきり「現代のアメリカで内戦が起こったら」という設定のもとに繰り広げられる激しいバトルアクションかと思ったんですよ。実際は、ジャーナリスト4人が大統領にインタビューするためにニューヨークからワシントンD.Cにあるホワイトハウスへ向かうロードムービーの要素が強かったです。その2拠点の位置すら僕は正確に答えられませんが、直線距離で大体330kmぐらいのところを、内戦の激化に伴う迂回で1300kmぐらい車で移動してました。
そもそも、映画を観ただけじゃなんでアメリカが内戦状態に陥ったのかもよくわからないんですよ。観た後にいろいろ調べましたけど、アメリカの大統領の任期は最大でも2期8年にも関わらず、劇中では3期目に突入し、自国民への空爆やFBIの解体など独裁的な政治を行っていたそうです。そこで、大統領を支持する政府軍と、テキサスとカリフォルニアの同盟軍である"西部勢力"が激突しているわけです。なお、テキサスとカリフォルニアは政治的な考えが正反対のようで、その2つが同盟を組むこと自体が現実離れしているのだとか。ここらへん、アメリカに詳しくないとパッとわからないですよね(笑)
<アメリカの分断社会が浮き彫りに>
そんな大統領の元へ向かう道中の危険極まりなさときたらないですよ。常に銃声が鳴り響き、いつ命を落としてもおかしくない状況なんですから。予告にもありますが、ジャーナリストたちが「僕らは同じアメリカ人だ」と言ったことに対し、ジェシー・プレモンス演じる男が「どの種類のアメリカ人だ?」と聞き返すシーンは強烈でしたね。確かにアメリカにはいろんな人種の人がいますが、同じ国民に対して「どの種類だ?」と聞くなんて、アメリカは相当な分断社会なんだろうなと感じます。劇中では内戦状態なので特にその分断意識が強く働いているんでしょうけど。いっしょにいたアジア人はすぐ射殺されてしまっていましたが、これは見た目というより、出身地とそれに伴う政治的な考えで判断されてたっぽいですね。とはいえ、アジア人が無残にも殺されてしまうところに、実際にあるアジア人差別の様相が垣間見える気もします。
<戦争の恐ろしさはビシビシ伝わってくる>
そういうアメリカの事情を知らないと、正直言って情報不足だなと思う映画ではあります。でも、終盤のワシントンD.Cにおける銃撃戦の迫力には圧倒されました。IMAXで観たことも影響しているんでしょうけど、他の戦争映画と比べて銃撃音がとにかく大きかったんですよね。実際に戦場にいたら近くの人ですら声が届かなくなるのではと思うぐらいの音量でビビりましたが、あえて銃撃音を強調していたんでしょうか。あと、みんな相手に容赦しないんですよ。まあ戦争なので当たり前かもしれませんが、敵は見つけ次第即発砲。命乞いしても即射殺。そこだけはアメリカの事情なんか知らなくても戦争の恐ろしさを体感できるシーンでした。
<そんなわけで>
アメリカで生まれ育ってないと本当の意味での面白さは興味深さは実感できないような映画でした。戦闘シーン自体はすごかったですが、映画自体は唐突に始まってあっさり終わるので、アメリカの空気をよく知らない身からしたら、映画としてちょっと物足りなさを感じます。逆にアメリカで話題になるのはよくわかりますけど。ある意味、『翔んで埼玉』(2019)のような内輪感があるかもしれません。