金のために身内さえ平気で殺しまくる恐怖。アメリカ映画とはいえ白人を圧倒的悪者として描いた『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』
【個人的な満足度】
2023年日本公開映画で面白かった順位:94/146
ストーリー:★★★★☆
キャラクター:★★★★★
映像:★★★☆☆
音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:★★★★★
【作品情報】
原題:Killers of the Flower Moon
製作年:2023年
製作国:アメリカ
配給:東和ピクチャーズ
上映時間:206分
ジャンル:サスペンス、クライム
元ネタなど:ノンフィクション『花殺し月の殺人 インディアン連続怪死事件とFBIの誕生』(2017)
【あらすじ】
※公式サイトより引用。
地元の有力者である叔父のウィリアム・ヘイル(ロバート・デ・ニーロ)を頼ってオクラホマへと移り住んだアーネスト・バークハート(レオナルド・ディカプリオ)。
アーネストはそこで暮らす先住民族・オセージ族の女性、モリー・カイル(リリー・グラッドストーン)と恋に落ち夫婦となるが、2人の周囲で不可解な連続殺人事件が起きる。
町が混乱と暴力に包まれる中、ワシントンD.C.から派遣されてきた捜査官が調査に乗り出すが、この事件の裏には驚愕の真実が隠されていた――。
【感想】
これが今から100年ぐらい前に実際に起こった事件っていうことに衝撃を受けた映画。。金儲けのために身内を含めてひたすら邪魔者を葬り去っていく恐怖に頭おかしくなりそうでした。当時の事件の背景などはこちらに詳しく載っているので、興味があればぜひご覧ください。
<とにかく苦しめられてきた先住民たち>
この映画を観て思ったのは、とにかくアメリカの先住民であるオセージ族が可哀想すぎるということです。彼らの土地から石油が出て、年間約600億円も稼げるようになり、世界でトップクラスの富裕層になったのも束の間。白人の入植者たちがわらわらと集まって来て、次々と自分たちにとって都合のいい制度を作り上げていったんですよね。「抵抗できなかったのだろうか」っていう疑問はありますが、気づいたときにはオセージ族の土地も金も白人のいいようにされていたんです。
それが、やがてこの映画のメインである連続開始事件へと繋がっていきます。首謀者は地元の有力な牧畜業者である白人、ウィリアム・ヘイル。彼が甥のアーネストを使って、次々と邪魔な先住民や関係者を葬り去っていきます。アーネストは自分の妻およびその親や姉妹を、これまたいろんな人を使って亡き者にしていくんです。毒殺、銃殺、爆殺などなど、よくもまあ金儲けのためにそこまでやれるなってぐらいひどいですね。現代だって金のために人を殺すようなケースはニュースなどで目にしますが、こっちは小さな町の中で少なくとも60人以上が犠牲になっているというのですから規模や密度が違いますよ。当時の白人は先住民を野蛮な存在とみなしており、自分たちが管理しなくてはならないという意識であったそうなので、もしかしたら殺すことにためらいはなかったかもしれませんが。
それにしても、先住民からしたら本当にたまったもんじゃないですよね。だって、自分たちの方が先にこの土地に住んでいたのに、後からやってきた人たちにいいようにされて、住む場所や稼いだお金も奪われて。「白人って何様なの?!」って思いますわ。
<運命めいたキャスティング>
で、これはもう歴史のお勉強って感じで、トリビア的なネタになるんですが、この事件の捜査のために、現在のFBIの前身である捜査局が登場します。セリフの中にその名前が出てくるだけで、劇中で姿はありませんでしたが、その長官がJ・エドガーという、FBIの初代長官を務めることになる方です。実は、レオナルド・ディカプリオは彼の伝記映画である『J・エドガー』(2011)で、まさにその人を演じているんですよ!何という偶然というか、もはや運命めいたものを感じます。
過去にはそんな役をやりながらも、今回は捜査される側の役を演じたレオナルド・ディカプリオ。彼が演じたアーネストは、ちょっと抜けているというか、あまり頭はよくなさそうで、ひたすらヘイルの指示に従うだけだったから、果たしてどれだけ自分の意志で殺人を犯したのかは甚だ謎ではあります。洗脳とまでは言いませんが、ヘイルの存在感が強すぎたんでしょうね。地元の有力者ですから、彼に逆らったら自分の身がどうなるかっていう事情もあったかもわかりません。まあ、だからといってアーネストの罪が軽くなるわけではまったくないんですけどね。
<観るなら覚悟が必要なぐらい長いです(笑)>
それにしても、この映画、尺が長すぎます。ひたすら先住民が殺されていく流れで約3時間半。物語の設定とこれが実話ベースであるという衝撃から観るに堪える内容ではあるんですが、それでも長かった。。。よくある「面白かったからあっという間に感じた」ということはなく、僕ははみっちり3時間半分の長さを体感しました(笑)マーティン・スコセッシ監督の映画は、暗く濃厚な世界観のものが多いですが、けっこう長かったり淡々と進んだりで体力使う作品が多いイメージです。
<そんなわけで>
アメリカの黒歴史のひとつを知る上でも興味深い内容の映画でした。レオナルド・ディカプリオが、言われなければ彼と気づかないぐらい廃れたおっさん感出ているのも見ものです。ラストの演出が個人的にはちょっと謎でしたけど(笑)