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リアリティを追求した制作スタイルに圧倒される『モスル~あるSWAT部隊の戦い~』
【個人的な評価】
2021年日本公開映画で面白かった順位:146/263
ストーリー:★★★☆☆
キャラクター:★★★☆☆
映像:★★★★☆
音楽:★★★☆☆
映画館で観るべき:★★★☆☆
【要素】
アクション
シリア内戦
市街地戦
【元になった出来事や原作・過去作など】
・雑誌記事
Luke Mogelson"The Desperate Battle to Destroy ISIS"(2017)
【あらすじ】
物語の舞台は、かつては文化の中心だったが、長引く紛争で今ではすっかり荒廃したイラク第2の都市モスル。この地で働く21歳の新人警察官カーワ(アダム・ベッサ)は、ISIS(イスラム過激派組織)に襲われたところを、あるSWAT部隊に救われる。
部隊を率いるジャーセム少佐(スヘール・ダッバーン)は、カーワをその場でSWATの一員に徴兵する。彼がISISに身内を殺されたという、入隊条件を満たしていたからだ。彼らは10数名の元警察官で編成された特殊部隊で、本部からの命令を無視して独自の戦闘を行っていた。彼らを繋ぐ使命は秘密で、カーワにも明かされない。
やがて手段を選ばない激烈な戦闘で仲間を失っていく中、絶望的な状況に直面する。それでも部隊は、ISISの要塞へと向かう決断をするのだが──。
【感想】
『アベンジャーズ/エンドゲーム』のルッソ兄弟がプロデューサーってことで鑑賞。シリア内戦において、実際にあった「モスルの戦い」。それに関する雑誌記事、"The Desperate Battle to Destroy ISIS"をベースにしたのが本作です。
<ドラマ性を極力排除した作り>
この映画、正直、他の戦争映画とそこまで変わらないかなって個人的には思うんですよ。市街地における銃撃戦がメインで、映画の始まりから終わりまで、どこかしらで銃声や爆音が聞こえるぐらい、至る所で戦闘が行われている様子は凄まじいですけどね。そこは、日本に暮らしていたら想像もできない状況だと思います。ただ、SWAT部隊の任務遂行の一部始終を淡々と描いているのみなので、むしろ他の戦争映画と比べるとドラマ性は薄いかもしれません。
でも、それがこの映画の魅力なんです。ドラマ性を極力排除した分、ノンフィクションに近い重みがあります。それもそのはず、本作は監督の意向で、「アラビア語を母国語とする俳優を起用しなければ意味がない」とし、難しいキャスティングを実現させたそうです。さらに、キャストは撮影前から実際の戦地で通用するまでの軍事訓練を受けたらしいですからね。かなり本格的な制作スタイルなんじゃないかと。
<ゲームのようにも見えるけど、ゲームではない世界>
家族をISISに殺された者たちのみで結成された特殊部隊。ISISのメンバーを見つけたら容赦なく殺すところに、彼らの復讐心の強さを感じます。躊躇なんかしません。見つけたら殺し、武器や金を奪い取ります。こう言うと語弊があるかもしれませんが、本当にゲームか何かのようだった。最近、バトロワ系の映画も流行っていますし、海外ではFPSも主流ですからね。
とはいえ、これはゲームではありません。実戦では当然痛みを伴いますし、精神も極限まで追いつめられます。僕が一番印象に残ったところは、混戦状態となって、急に目の前に飛び出してきた仲間を撃ってしまうシーンです。ゲームだと味方プレイヤーは攻撃できないことが多いですが、実際にはあるんだなって。しかも、弾が当たったらそこで終わりですから。やり直しもないし、すぐに回復するようなアイテムもありません。これは撃った本人もかなり精神的に辛いでしょう。。。隊長に「おまえは悪くない」と諭されているシーンが、妙に胸がざわつきました。。。確かに悪意があるわけでもないし、仕方のないことではありますが、、、その罪悪感にメンタルやられそうですよね。。。そんな状態に身を置いているからこそ、警察になってまだ2ヵ月しか経っていなかった新人のカーワも、映画が終わる頃には、面構えが特殊部隊員そのものに変わっていました。
<その他>
どの戦争映画も、もちろん事実に基づいて作られてはいると思いますが、これはほんの4~5年前に実際にイラクであった出来事で、場所は市街地かつ民間人も次々に犠牲になるシーンもあり、とても生々しい内容です。シリア内戦の実態の一部を知るにはいい映画だと思います。