伝説のクリエイターが集う胸熱作品なのに中身がちょっとコレジャナイ感あった『クリーチャー・デザイナーズ ハリウッド特殊効果の魔術師たち』
【個人的な評価】
2022年日本公開映画で面白かった順位:48/78
ストーリー:★★★☆☆
キャラクター:★★★★☆
映像:★★★☆☆
音楽:★★★☆☆
映画館で観るべき:★★★☆☆
【ジャンル】
ドキュメンタリー
メイキング
特撮
特殊メイク
アニマトロニクス
CG
【元になった出来事や原作・過去作など】
往年の名作の制作に関わったスタッフたち
【あらすじ】
今日ほど映画のモンスターたちが熱狂的に支持されていることはない。映画という文化と共に進化してきた特撮、特殊効果は、巨大なスクリーンに突如現れる想像上のモンスターたちに驚異的な変化をもたらしてきた。モンスターを実物の物体として表現する特殊造形の時代からデジタルの時代へと突入した今、その魅力と背景を紐解いていく。
数々の映画で活躍してきた有名なアーティストたちのインタビューをもとに、クリーチャーとその制作者の間の魅力的な関係性に迫るドキュメンタリー。
「現代のフランケンシュタイン(=怪物の創造主)」と呼ばれるあらゆるスペシャリストたちがゼロから生命を作り出す瞬間に迫る。
【感想】
これは洋画好きな人にはたまらないでしょうね。『スター・ウォーズ』(1977)や『エイリアン』(1979)、『ターミネーター2』(19991)、『ジュラシック・パーク』(1993)など、往年のSF映画を中心に、そこに登場するクリーチャーを手掛けた人たちへのインタビューで構成された本作。ファンには願ってもない内容です。
ちなみに、アメリカの映画かと思いきやフランスの映画で、しかも本国で公開されたのが2015年。なぜこのタイミングでの日本公開になったのかは謎です(笑)
<題材はすごくいいのだけど、、、>
結論から言いますと、すごくもったいないなと思うドキュメンタリーでした。先に挙げた映画やその舞台裏には興味はあれど、作った人たちまでは知らないという身からすると、ちょっと退屈に感じてしまうところがあったからです。もちろん、内容としてはものすごく興味深いんですけど、僕が知りたかったのは「どうやって作ったのか」、「どうやって撮影したのか」ということなんですよね。
ところが、この映画で主に扱われているのは、特集効果の歴史と作った人たちのへのインタビューがメイン。肝心の制作過程そのものについての言及は少なく、引用されている映画たちの本編映像もほぼありません。昔撮ったメイキングのアーカイブ映像でツギハギされている感じなので、やや物足りなさがあったんですよね。レジェンド級のクリエイター勢ぞろいなのは人によってかなりエモいかとは思うんですけど、その人たちの思い出話ばかりなので、そのクリエイターたちのファンでもない限りはハマりづらいかもしれません。
前に『ようこそ映画音響の世界へ』(2019)という映画のBGMや効果音に焦点を当てたドキュメンタリーがあったんですけど、あっちの方が知られざるエピソードがてんこ盛りかつ体系立った構成でとても面白かったことを覚えています。
<ハリウッド映画の特撮の歴史>
とはいえ、クリーチャーという切り口で、ハリウッドの特撮まわりの歴史を大まかに知れたのは有意義だと思います。コマ撮りや特殊メイク、アニマトロニクスやCGまで、その変遷がざっくりわかります。クリーチャー自体もやろうと思えばいくらでも奇抜なものは作れるようですけど、「いかに現実にいそうか」ということを念頭に置いてデザインされているため、きちんと加減を設定し、実在する動物の動きを参考にすることが多いそう。
そんな中で、やっぱり『スター・ウォーズ』、『ターミネーター2』、『ジュラシック・パーク』の3作品はエポックメイキングだったそうですね。特に、『ターミネーター2』は当時の特撮技術のすべてを注ぎ込んだようで、僕が人生で2番目に大好きな作品がゆえに、なんだか誇らしい気持ちになりました(笑)
80年代~90年代前半まではまさに特撮の黄金期で、クリエイターたちはまわりから敬われ、みんなセレブになれるぐらいいい時代だったみたいです。それが、デジタル化の流れで何でもCGになってしまったことで、特殊メイクアップアーティストはアニメーターに取って代わられ、閉鎖したスタジオも多いとか。
もちろん、何を作りたいかによって使われる手段は異なります。今でも特殊メイクはありますし、アニマトロニクスも使われていますが、昔と比べると圧倒的にCGだそう。昔ながらの職人たちは、時代の流れを受け入れつつも、やっぱりどこか寂しそうな印象を受けました。
とはいえ、働いている人たちがとにかく楽しそうだったのは、『ようこそ映画音響の世界へ』といっしょ。「仕事と思ったことはない」、「もはや生活の一部」、「少年の頃の情熱を忘れずにいることが大事」などなど、みんな好きなことが仕事になっていて素敵でした。
<そんなわけで>
正直、“知られざる舞台裏”みたいは感じは弱かったですけど、ハリウッド映画の特撮の歴史を"クリーチャー"という観点から知れるのは有意義なので、そういうのが好きな人にはオススメできます。それにしても、『ようこそ映画音響の世界へ』でもエポックメイキングだとされていた『スター・ウォーズ』、特殊効果の面でもエポックメイキングだったのはさすがですね。