『ドラゴン桜』を超えるインドの教育革命!実話ベースの奇跡の塾講師に興奮と感動の『スーパー30 アーナンド先生の教室』
【個人的な満足度】
2022年日本公開映画で面白かった順位:14/141
ストーリー:★★★★★★★★★★
キャラクター:★★★★★★★★★★
映像:★★★★☆
音楽:★★★★☆
映画館で観たい:★★★★★
【作品情報】
原題:Super 30
製作年:2019年
製作国:インド
配給:SPACEBOX
上映時間:154分
ジャンル:ヒューマンドラマ
元ネタなど:数学者・塾講師「アーナンド・クマール」
【あらすじ】
貧しい家庭の生まれながら、天才的な数学の才能を持つ学生、アーナンド(リティク・ローシャン)。ある日、彼は数学の難問の解法をケンブリッジ大学に送ったところ、その才能が認められ、イギリス留学のチャンスを得る。だが、貧しい家計から費用が出せず、当てにしていた援助もすげなく断られ、「王になるのは王の子供じゃない。王になるのは能力のある者だ」と、いつも彼を励ましてくれていた父親も心臓発作で亡くなってしまう。
留学を断念した失意のアーナンドは、町の物売りにまで身をやつすが、IIT(インド工科大学)進学のための予備校を経営するラッラン(アーディティヤ・シュリーワースタウ)に見いだされ、たちまち学校一の人気講師になり、豊かな暮らしを手に入れた。
そんな中、貧しさゆえに路上で勉強する一人の若者との出会いが、アーナンドの心に火をつけた。突如として予備校を辞めた彼は、才能がありながら貧困で学ぶことができない子供たち30人を選抜して、無償で家と食事を与えて、IIT進学のための数学と物理を教える私塾、スーパー30を開設したのだ。
私財を投げ売ったアーナンドは、資金に苦しみ、教育をビジネスとしか考えないラッランから様々な妨害を受けながらも、型破りな教育で、生徒たちに自信を持たせていく…。
【感想】
ボリウッドが誇る極上の教育エンターテイメント!映画も面白かったんですけど、一番すごいなと思ったのは、元ネタとなっているアーナンド・クマールという人物ですね。
<子供たちに無償で学ぶ機会を提供するアーナンド・クマール>
本作の主人公のアーナンド先生。全国の貧しい家庭から優秀な頭脳を持つ30人を選抜して、無償で食事と寮と教育を与えるという私塾を開き、教鞭を執っているんですよ。そして、開始した2003年からずっと、世界三大難関試験の1つと言われる、インド最高峰の理系大学“IIT(インド工科大学)“へ塾生を送り込み続けるという脅威の実績を挙げています。しかも、年によっては30人全員が合格しているとか。世界から大絶賛されているのもうなずけます。
<教育の機会に恵まれない子供たち>
ここに全国から子供たちが集まるんですよ。遠いところからはるばる。川をラフティングで下ってきたり、交通費がないからニワトリを盗んで売って、それを運賃に充てたり。彼らの親はゴミ収集や日雇い労働者など、決して恵まれているとはいえない家庭環境の子ばかりです。なのに、そこまでしてやって来るんですよね。それだけ学びたい欲があるんですよ。日本でも教育に力を入れているご家庭もあると思うんですけど、それとは比較にならない執念を感じました。おそらく、本当に教育で人生が変わるんだと思います。インドって。日本では想像もつかないような貧富の差があって、教育のあるなしで暮らしに雲泥の差が出るんでしょうね。だから、みんなここまでの覚悟と危機感を持てる気がします。
個人的に気になるのは、ここまでやってくる子供たちはどうやって選抜試験を受けるだけの学力を身につけたのかってことです。子供たちも家計を支えるために働いていており、その合間を縫って勉強をしていたそうなんですが、もともと教育の機会があまりなさそうな感じだったので、生まれつきの才能に恵まれていたんでしょうかね。それとも初等教育だけは受けていた……?しかも、彼らの将来の夢がNASAで働くことだったり、機械工学を研究することだったりと、普段の生活から直結しなそうなことだったので、何をきっかけにそういうのに興味を持ったのかはちょっと知りたいですね。
<映画自体はエンタメ感強い>
本作はそれをベースにした話です。アーナンド先生ご本人が尊すぎるんですが、映画としてはきちんとエンタメ要素も入れて観やすい工夫がされていました。インド映画らしく尺は長いんですけど、振り切った設定やキャラクターに加えて、歌や踊りもありますし、アーナンド先生が同業他社から命を狙われるっていうスリリングな展開もあって、ベースは感動的なヒューマンドラマなんですけど、それに留まらない面白さがあります!
<アーナンド先生ご本人と同じ場に>
ちなみに、本編とは全然関係ないんですが……実はアーナンド先生ご本人と同じ回を観る機会に恵まれまして。イベントとかではなくプライベートなんですけど、「映画を観てくださる日本の皆さんと時間を共にしたい」と、昨日急遽twitterで告知されてたんですよ。
とても優しそうな方でした。かつてケンブリッジ大学に入学許可をもらいながらも通えず、開校から20年経った今でも子供たちに無償で教え、これまで何度も襲撃を受けている波瀾万丈な方とは思えないほどに。
<そんなわけで>
映画はフィクションもだいぶ盛り込まれているとは思うんですけど、アーナンド・クマールという人物がいて、優秀な人材を輩出しまくっている私塾がインドにあるという事実を知れたのは、とても有意義なことです。これは本当にオススメの映画ですねー。数学ができるといいなと改めて思いました(笑)