【ネタバレあり】盲目の鍼師が国家最高権力者の闇に立ち向かう、実話とフィクションを織り交ぜた秀逸なサスペンス・スリラー『梟ーフクロウー』
【個人的な満足度】
2024年日本公開映画で面白かった順位:8/26
ストーリー:★★★★★
キャラクター:★★★★★
映像:★★★★☆
音楽:★★★★☆
映画館で観たい:★★★★★
【作品情報】
原題:올빼미(The Night Owl)
製作年:2022年
製作国:韓国
配給:ショウゲート
上映時間:118分
ジャンル:サスペンス、スリラー
元ネタなど:朝鮮王朝時代の記録物『仁祖実録』(1645年)
【あらすじ】
※公式サイトより引用。
盲目の天才鍼師ギョンス(リュ・ジョンヨル)は、病の弟を救うため、誰にも言えない秘密を抱えながら宮廷で働いている。しかし、ある夜、王の子の死を"目撃"し、恐ろしくも悍ましい真実に直面する。見えない男は、常闇に何を見たのか?
追われる身となったギョンスは、制御不能な狂気が迫る中、昼夜に隠された謎を暴くために闇夜を駆ける――。絶望までのタイムリミットは、朝日が昇るまで。
【感想】
自分の身近にいる数少ない映画フリークの友達に薦められて鑑賞しましたが、、、いやはや、この映画すごすぎですよ。いわば朝鮮の時代劇といったところなんですけど、実話ベースの中にうまくフィクションを織り交ぜて至高のサスペンス・スリラーに仕上がっていました!以下、ネタバレになっていますので、まだ知りたくない方はここでページをそっ閉じしてください。
<実話とフィクションを掛け合わせた秀逸な設定>
この映画、僕は見どころが2つあると思っているんですが、まずひとつ目はその設定にあります。主人公のギョンスは盲目の鍼師なんですが、彼自身は架空の人物となります。朝鮮史に残る怪死事件の真相を、盲目のギョンスを使って解き明かそうっていう話なんですよね。ただ、映画を観ていくとわかると思うんですが、ギョンスは盲目なのにいろいろ手際がいいんですよ(笑)これには実はちょっとした秘密がありましてですね。まあ、目が見えないことに変わりはないんですが、夜になるとちょこっと見えるらしいんですよ。だからこその『梟』というタイトルにも納得なんですけど。でも、能力の高さを認められて宮廷で働くことになったギョンスは、一貫して全盲を貫いていきます。その方が何かと都合がいいですから。
その設定がこの映画の面白さに直結します。前半はギョンスが宮廷で働き始めるまでを描いていて、特段大きな動きはないのですが、それが後半になってからガラっと変わります。なんと、ギョンスの目が見えないのをいいことに、彼の目の前で王である仁祖の子が殺されてしまうんですよ。本人も全盲ということにしてある手前、当然見えないフリを続けなければならず、目の前の凶行を止めることもできませんし、後から声を上げたところで信じてすらもらえないでしょう。さらに、黒幕となっている仁祖とのパワーバランスから、下手したら自分が殺されてしまう可能性もあります。それでもギョンスはわずかな理解者と共に証拠集めに奔走し、仁祖への反逆罪をものともせずに真実の追求を試みます。このテンポのいい展開と、終盤からラストにかけての悲劇と喜劇のダブルパンチはマジで秀逸でした、、、!!
<ユ・ヘジンの演技力が凄まじい>
見どころのふたつ目は、仁祖を演じたユ・ヘジンの演技力です。「韓国映画にこの人あり!」って言うぐらい、いろんな映画で見かける役者さんなんですけど、個人的にこの人メチャクチャ好きなんですよ。『コンフィデンシャル』シリーズ(2017-2022)における熱血刑事や『タクシー運転手 約束は海を越えて』(2017)における情に厚いタクシー運転手など、"いい人"のイメージが強いですよね。ところが、今回は180度変わって、政治的理由から我が子を手にかけるよう暗躍する悪どい王の役です。冷酷かつ非情なキャラクターな上に服装もいつもと違うので、しばらく仁祖がユ・ヘジンだと気づかなかったほどです。主人公のギョンスも印象的ですが、個人的には仁祖の方が存在感が大きかったように感じました。
<そんなわけで>
朝鮮の時代劇×新感覚サスペンス・スリラーって感じで、世界観も物語の運びも最高に面白かったです。夜のシーンが多いので若干全体的に見えづらいのと、「ギョンス見えすぎでは」というツッコミもありはするんですけど、そんなの気にならなくなるぐらいには圧倒的に引きつけられる内容で楽しめました。マジでオススメです!