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生活保護をテーマに描かれる温かくも悲しい家族の物語『護られなかった者たちへ』
【個人的な評価】
2021年日本公開映画で面白かった順位:66/204
ストーリー:★★★★☆
キャラクター:★★★★★
映像:★★★☆☆
音楽:★★★☆☆
映画館で観るべき:★★★☆☆
【以下の要素が気になれば観てもいいかも】
ヒューマンドラマ
サスペンス
殺人事件
東日本大震災
生活保護
【あらすじ】
東日本大震災から10年目の仙台で、全身を縛られたまま放置され、"餓死"させられるという不可解な殺人事件が相次いで発生。被害者はいずれも、誰もが慕う人格者だった。
捜査線上に浮かび上がったのは、別の事件で服役し、刑期を終えて出所したばかりの利根(佐藤健)という男。刑事の笘篠(阿部寛)は、殺された2人の被害者から共通項を見つけ出し、利根を追い詰めていくが、決定的な証拠がつかめないまま、第3の事件が起きようとしていた――。
なぜ、このような無残な殺し方をしたのか?利根の過去に何があったのか?
【感想】
中山七里さんの小説が原作の映画です。濃厚な人間ドラマに打ちのめされますね、これは。
<サスペンスよりもヒューマンドラマ>
僕、原作は読んでいなかったんですよ。で、映画館で流れるあの予告でしょ?しかも、『64-ロクヨン』を撮った瀬々敬久監督だから、てっきりサスペンス全開なのかと思いきや。殺人事件はメインではなく、生活保護をテーマとしたヒューマンドラマでした。2018年に放送されていた『健康で文化的な最低限度の生活』というテレビドラマを思い出しました。
<犯人の動機が一番の注目ポイント>
ヒューマンドラマ寄りなので、殺人事件といえども複雑な話ではありません。むしろ、勘のいい人なら、事件の犯人は途中でわかってしまうかもしれないですね。でも、この映画は「犯人が誰か」はあまり重要ではないんです。それよりも、「犯人の動機が何か」というところがポイント。
サスペンス映画だと「動機がイマイチ……」みたいな話も世の中には多いですよね。その点、この映画はその動機に至る経緯が濃厚で、犯人に共感、、、してはいけないですが、気持ちがとてもよくわかるお話です。犯人探しが目的でないからこそ描けるものだと思いました。
<役所側の事情も理解できる>
こういう映画だと、「生活保護を受給できない人がかわいそう。役所は悪だ!」みたいな捉え方もできるかもしれません。でも、役所側だって、できることなら全員を助けてあげたいんですよ。とはいえ、震災で家族や友人を失くし、職も失い、生活保護受給者が急増。不正受給をする人もいれば、"スティグマ"と呼ばれる、生活保護を受けることを恥だと感じ、必要なのに申請しない人もいます。限られたリソースの中で、また不正をする人もいる中で、全員が望む形を実現する難しさも垣間見える。そういう役所側の葛藤があるのも興味深かったですね。
<その他>
この映画における殺人事件はひとつの結果でしかなく、その裏にある温かくも悲しい家族の物語こそが一番観て欲しいところです。原作者本人が「事件の犯人はわかっても、物語の犯人は読み終えた後も誰にもわからない、現時点での最高傑作です!」と言うのもうなずけます(笑)