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【ネタバレあり】圧倒的熱量に魂の震えが止まらない!映画は剣よりも強し!1本の映画が人を、国を変えていく過程に心が突き動かされる『ジガルタンダ・ダブルX』

【個人的な満足度】

2024年日本公開映画で面白かった順位:2/106
  ストーリー:★×20
 キャラクター:★★★★★★★★★★
     映像:★★★★★
     音楽:★★★★★
映画館で観たい:★★★★★★★★★★

【作品情報】

   原題:Jigarthanda Double X
  製作年:2023年
  製作国:インド
   配給:SPACEBOX
 上映時間:172分
 ジャンル:ヒューマンドラマ、アクション
元ネタなど:映画『ジガルタンダ』シリーズ(2014-)
公式サイト:https://spaceboxjapan.jp/jdx/

【あらすじ】

※公式サイトより引用。
1970年代前半のマドラス(現在のチェンナイ)。警察官採用試験に受かったキルバイ(S・J・スーリヤー)は、血を見ると気を失うこともある小心者。着任を間近に控えたある日、不可解な殺人事件に巻き込まれ、自身が牢に繋がれることになる。

彼は、政界に強いコネクションを持つ悪徳警視ラトナ(ナヴィーン・チャンドラ)に脅されて、無罪放免・復職と引き換えにマドゥライ地方のギャングの親分シーザー(ラーガヴァー・ローレンス)を暗殺することを命じられる。ラトナは、西ガーツ山脈のコンバイの森に派遣された特別警察の指揮官で、冷酷非道な男。その兄のジェヤコディ(シャイン・トムチャッコ)は、タミル語映画界のトップスターにして、次期州首相の候補と噂されている。

一方シーザーは、「ジガルタンダ極悪連合」という組織のトップで、地元出身の野心的な有力政治家カールメガムの手足となって象牙の違法取引から殺人まで、あらゆる非合法活動を行っている。シーザーに近づくために、キルバイはサタジット・レイ門下の映像作家と身分を偽り、シーザーを主演にした映画の監督の公募に名乗りを上げる。クリント・イーストウッドの西部劇が大好きなシーザーは、キルバイを抜擢しレイ先生と呼ぶようになる。

そこから2人の運命は思いもよらない方向に転がり始め、西ガーツ山脈を舞台にした森と巨象のウエスタンの幕が上がる。

【感想】

※以下、ネタバレあり。
ジガルタンダ』シリーズ第2作目。いやー、、、すっごいですわこれ。。。前作もそうでしたけど、とにかく監督の映画愛が凄まじいです。
映画で人や国が変わっていく過程を描いているのが映画好きにはたまらなく愛おしいですね。

<映画には世界を変える力がある>

この映画、2作目ではあるものの、前作との繋がりはほとんどありません。だから、前作の予習はしなくてもまったく問題ないです。もし、予習したいという方がいらっしゃったらこちらの「インディアン ムービー オンライン」で。おそらく、今はここでしか観れないのではないでしょうか(なお、視聴するには1000円かかりますので悪しからず)。

ただ、関連性はなくとも根底にある魂はいっしょでした。監督も「スピリットにおける続編」と言っているぐらいなんですが、まさに「映画の力で世界を変える」っていうところが共通しているんですよね。設定も似ていて、ギャング映画を作るために本物のギャングに近づいたら、予測不可能すぎるまさかのオチへと転がっていくという流れです。

予想だにしない展開に興奮と感動の嵐

そのまさかのオチっていうのが、この映画の一番の見どころですね。不可解な事件に巻き込まれ、濡れ衣を着せられて牢屋に入れられることになったキルバイ。無罪放免にする代わりに突き付けられた条件が、ギャングの親分シーザーを殺すこと。そこでキルバイは映画監督と身分を偽ってシーザーに近づき、甥のドゥライ(サティヤン)といっしょにカメラをまわし続けます。ここまでの話だと、映画を作りつつ、その隙を突いてシーザーを殺すんだろうなって思うじゃないですか。もちろん、自分もそうやって観ていました。観ていましたが、前作が終盤から急展開して予想だにしなかったオチになったので、この映画でもそれを期待していたんですよ。そうしたら最後の最後でやってくれました!!それもまたこちらの予想を裏切る形で!!

<備忘録としてのざっくりネタバレ>

尺が長い上に情報量が多いので、ここではすべてを書きません。あくまでも、後で自分が見返したときに内容を思い出せる程度の備忘録として記しておきたいと思います。

劇中では警察も手を焼いているシェッターニという密猟者がいて、キルバイはシーザーがシェッターニを捕まえることで株が上がるストーリーに仕立てようとしました。で、シェッターニが出没するところの近くにシーザーの故郷の村があるというので、キルバイとシーザーでそこに向かいます。まあ、キルバイの思惑としては腕っぷしの強いシェッターニにシーザーを倒してもらおうっていう裏の目的もあったんですけど(笑)ところが、激闘の末に勝ったのはなんとシーザーだったんです。シーザーはシェッターニを警察に突き出すことで、タミル州首相からも感謝される、、、はずでした。

実は善良だと思われていた州首相が悪い人だったんですよ。州首相はシーザーの村周辺の土地を偉い人に売りさばいて、共和国のトップの席を用意してもらうように画策していました。そのためにその土地から動物や人間を一掃したくて“わざと”シェッターニを放っておいたと。そのシェッターニが捕まってしまったので、州首相はいちゃもんをつけてシーザー含めて村人たちを皆殺しにするようラトナ警視に命じます。本当になんて恐ろしい人なんだと思いましたね。

キルバイも当初はシーザーを殺そうとしていましたが、同じ時間を過ごすうちに、実はシーザーには暗い過去があって本当は気高い人だということを知り、警察の対応にも疑問を持っていたので、いつしかシーザーとの間に友情に近いものが芽生えていました。先に捕らえたシェッターニは再び森に放されるも、たまたま出くわしたキルバイとシーザーに州首相の目論見を告げ、「逃げろ」と諭します。キルバイたちは村に戻ってそのことを村人に伝えるも、逃げたところで住む場所がないと村から出ようとしません。シーザー自身も「逃げるのは嫌だし、かといって敵とはいえ命を奪うこともしない」という意志がありました。結果、シーザー含めて村人たちは「逃げないし戦わない」という選択をしたのです。そして、シーザーはキルバイの持つカメラを指して言いました。

「俺たちの武器はこれだ」。

なぜかと言うと、政治家は白を黒にしますが、カメラは白は白、黒は黒として記録します。だから、今までキルバイが撮ってきた映像はもちろんのこと、この後で仮に自分たちが死ぬことになっても、それらは事実として残るんです。それをいろんな人に見てもらって、悪いのはどちらかを人々に決めてもらおうと言うのです。なんということでしょう。ずっと恐怖と暴力で支配してきたシーザーが、今回は暴力を使わずに戦おうとするだなんて。故郷の村に戻って過去のトラウマを克服し、また、シーザーにはこのタイミングで子供が生まれるんですけど、そういったこともあってか心変わりしたんでしょうね。

やがて到着する警官隊。シーザーたちはひたすら太鼓を叩いて歌をうたい、相手に危害を加えない抵抗を続けます。そんなシーザーたちをラトナ警視は「反乱が起こっている」として、村人たちを次々に銃殺していきました。その様子をひたすらカメラに収めるキルバイ。目の前で人が殺されていく中で、自分にできることがカメラをまわすことだけというこの状況、とてつもなく辛かったでしょう。。。キルバイはシーザーが最後に凶弾に倒れた映像を収めた後に、村で恋仲になったパインギリとシーザーの子供を連れてバイクでその場を離れようとしますが、ラトナ警視に狙撃されて崖下へと落下。彼らの命と今まで撮りためたフィルムはどうなってしまうのでしょうか。

しかし後日、シーザーをかわいがっていた大臣がフィルムを回収し、各地で上映します。これは州首相に対しては裏切り行為に当たるんですが、彼はシーザーがシェッターニを捕まえた時点で「あんたのかわいがっていた男がおとんだことをしてくれたね!」と州首相から見限られているので、もはや忖度する義理はないんですね。映画が上映されたことで、州首相や警察の悪事が白日の下に晒され、悪は潰えることとなりました。キルバイが命懸けで撮った映像はすべての事実を捉えており、国民に真実を知ってもらうことができたわけです。シーザーが「俺たちの武器は映画だ」と言っていましたが、まさにその通りになった展開に涙しました。

うーん、言葉だけだとなかなか魅力が伝わらないですが、本当にこれは胸が熱くなる展開だったのでぜひ映画館で観てほしいですね。

<そんなわけで>

ギャング映画を撮るはずが、政治家や警察の悪事を記録し、国民にその是非を問う方向へと変わっていく展開が秀逸すぎる映画でした。「映画には人を、国を変える力がある」、そんなことを感じさせてくれる内容に興奮と感動がありました。なお、前作を観ていると最後の最後でとんでもないサプライズが待っています。それは、シーザーの子供の名前です。

「セードゥ」。

前作のギャングのボスの名前なんですよ、これ!つまり、これは前作の前日譚ということになりますね。さらに「XXX」の文字まで。今回が『ダブルエックス』だったので、『トリプルエックス』ということでしょうか。つまり、続編がある、、、?!

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