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257人の敵兵を狙撃で倒したソ連邦英雄ヴァシリ・ザイツェフの静かながらも緊張と忍耐に支配される戦いに息を呑んだ『スターリングラード』

【個人的な満足度】

「午前十時の映画祭14」で面白かった順位:9/15
  ストーリー:★★★★☆
 キャラクター:★★★★☆
     映像:★★★★☆
     音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:★★★★★

【作品情報】

   原題:Enemy at the Gates
  製作年:2001年
  製作国:アメリカ・ドイツ・イギリス・アイルランド合作
   配給:日本ヘラルド映画
 上映時間:132分
 ジャンル:ヒューマンドラマ、戦争
元ネタなど:実在した狙撃兵「ヴァシリ・ザイツェフ」(1915-1991)
公式サイト:https://asa10.eiga.com/2024/cinema/1312/

【あらすじ】

※公式サイトより引用。
1942年、ドイツ軍の猛攻によりスターリングラードは陥落寸前だった。ウラルの羊飼いで、幼い頃から狼を撃つことを仕込まれていたソ連赤軍のヴァシリ・ザイツェフ(ジュード・ロウ)は、戦場で政治将校ダニロフ(ジョセフ・ファインズ)の命を救った。狙撃の腕を見込まれたヴァシリは、敵将校を次々と葬り、ソ連軍の士気は一気に高揚する。

対するドイツ軍はヴァシリを亡き者にするため、名狙撃手ケーニッヒ少佐(エド・ハリス)を派遣する。

【感想】

午前十時の映画祭14」にて。2001年のアメリカ・ドイツ・イギリス・アイルランド合作映画。ロシア(ソ連)の有名な狙撃兵に焦点を当てた作品で、静かに、でも確実に敵を葬り去る狙撃戦がスリリングでした。

<確実に敵を仕留める凄腕スナイパー>

この映画の主人公はヴァシリ・ザイツェフという実在したソ連軍の狙撃兵です。実際の彼はウラル山脈で育ち、幼い頃より鹿の狩猟によって射撃技術を磨いたそうなので、狙撃の腕前はピカイチでした。彼は狙撃によって257人の敵兵を射殺したそうで、その功績を称えてソ連邦英雄、ヴォルゴグラード名誉市民などの称号も得たとか。狙撃なんてやったことないので(サバゲ―でもあんまり聞かないですよね)なかなか実感沸きづらいですが、とにかく狙撃に関してはすごいということです。

劇中の舞台はスターリングラード攻防戦です。ドイツ軍の侵攻により陥落寸前だったものの、何とか持ち直し、最終的にはソ連軍の反撃によってドイツ軍は降伏したという歴史的な戦いです。その中で、ヴァシリはただひたすら身を潜め、狙いを定め、敵を撃ち抜く日々を過ごしていました。狙撃って敵に居場所を悟られることなく、確実に一発で仕留める正確性を求められるじゃないですか。だって、外したら敵も身を隠してしまうのでその後は狙えなくなりますし、こちらの居場所もバレてしまうで命を危険に晒すことになります。なので、相手を亡き者にするためには、ゴルフのパター以上の集中力と緊張感、そして敵が射程圏内にうまく入るまで待ち続けるという忍耐も必要になるでしょう。観ているだけで息を呑むような空気に包まれます。そんな状況を乗り越え、敵を次々と死に追いやるヴァシリの活躍は新聞の一面を飾り、広告塔としてもソ連軍の士気を高めるのに一躍買いました。

<敵も同等の力を持つスナイパーを手配>

もちろん、ドイツ軍もそんなヴァシリを前にして黙っているわけではなく、あちらはあちらでケーニッヒ少佐(エド・ハリス)という狙撃の達人を派遣してきます。この人物、調べたところ実在したかどうかが怪しいらしいんですよね。ドイツ軍には彼が在籍した記録がなく、ヴァシリを英雄として祭り上げるために、プロパガンダとして捏造した架空の人物である可能性があるそうです(ウィキペディアより)。とはいえ、これはあくまでも映画なので実在したかどうかは問題ではありません。独ソ両軍における凄腕スナイパー同士の戦いは静かながらも見ごたえのあるシーンでした。ちょっとでも動こうものなら弾が飛んでくる上に、弾を無駄にしないためにも確実に狙えるチャンスが来るまでひたすらじーっと待ちます。もはや我慢比べですよね。とはいえ、ラストはちょっとあっけなかったですね。ケーニッヒ、なぜ不用意に姿を現したんでしょうか。ヴァシリを倒したと思ったんですかね。。。狙撃兵がいるところでは、やたらめったら立ち上がらないことを肝に誓いました(笑)

<切ない三角関係も>

あと、意外にも色恋沙汰の要素があるのもこの映画の面白いところです。戦いの毎日に突如として訪れた癒し、ターニャ(レイチェル・ワイズ)。まさに才色兼備といった女性で、たちまちヴァシリは一目惚れ。ところが、彼だけでなく相棒の政治将校ダニロフも同じように一目惚れしていたんですね。いつ死ぬかもわからない状況におけるまさかの三角関係ですよ。ターニャもヴァシリに夢中だったので、もはやダニロフの入る余地はなかったのですが、それでもあきらめないダニロフにはちょっと同情してしまいました。そんなダニロフの想いなぞどこ吹く風、ヴァシリとターニャはみんなで雑魚寝している場で行為に及ぶんですからびっくりですよ。メチャクチャエロさを感じるシーンでしたが、いつ死ぬかもわからない中で愛し合うなんて、ああいう形でしかできなそうですよね。

ちなみに、ダニロフの役割である政治将校というのは、軍内におけるプロパガンダなどの政治指導を行う立場です。ヴァシリを新聞で取り上げるように取り計らったのもダニロフですが、三角関係のもつれからちょっとヴァシリを悪く書くこともあったんですよ。ただ、それをきっかけとして何か不都合が起こるわけでもなかったので、どうせならそこをもう少し深掘りしてくれたら面白くなる要素が増えたかもしれないなーと思いつつ、最終的にはこの恋路に未来はないと悟ったダニロフがせめてもの償いとして、ケーニッヒの居場所をあぶり出すために犠牲になります。うう、切ない。。。てか、相手が一発撃っただけで正確な居場所がわかるっていうのも狙撃兵のすごいスキルだなと思いましたけど。

<そんなわけで>

戦争映画とはいえ狙撃兵がメインなので、先日観た『プライベート・ライアン』(1998)より派手さはないものの(とはいえ、冒頭の戦闘シーンだけはかなりド派手です)、緊張と忍耐を強いられる狙撃の静かな戦いはハラハラするものがありました。あれは相当な集中力がないと務まらないでしょうね。。。

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