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【ネタバレあり】助演が輝く映画!ベタな要素のてんこ盛りだけど、後ろの若い女性客が死ぬんじゃないかってぐらい泣いてて心配になった『366日』

【個人的な満足度】

2025年日本公開映画で面白かった順位:3/4
  ストーリー:★★★★☆
 キャラクター:★★★★☆
     映像:★★★☆☆
     音楽:★★★★☆
映画館で観たい:★★★☆☆

【作品情報】

   原題:-
  製作年:2024年
  製作国:日本
   配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント、松竹
 上映時間:122分
 ジャンル:ラブストーリー
元ネタなど:歌『366日』(2003)
公式サイト:https://movies.shochiku.co.jp/366movie/

【あらすじ】

※公式サイトより引用。
2024年2月29日、東京。音楽会社に勤める湊(赤楚衛二)の元を、一人の少女が訪れる。戸惑う湊に彼女が渡したのは、一枚のMD。そこに入っていたのは、15年前に別れた恋人・美海(上白石萌歌)からのメッセージだった――。

20年前、沖縄。高校の後輩・美海と出会い、初めての恋をした湊は「いつか湊先輩の作った曲、聴きたいです」という美海の言葉に背中を押され、東京へ。2年後に美海も上京し、湊と再会。2人の幸せな日々が始まる。

「こんな幸せな日々が、365日ずっと続きますように」

そう願っていた2人。

しかしある日、湊は突然別れを告げて、美海の元を去ってしまう。失恋の悲しみを抱えたまま美海は沖縄へ帰郷。2人は別々の人生を歩むことに…。

あの時伝えられなかった想い。果たせなかった約束。美海からのメッセージを聞いた湊は、ある決断をする――。

【感想】

※以下、敬称略かつネタバレあり。
HYの名曲『366日』から着想を得た映画です。ベタな展開ですが、そこがまたいいというか、令和の『世界の中心で、愛をさけぶ』(2004)的な映画だなと思いました。僕はHY世代なんですが、これまでまったく聴いてこず、『AM11:00』以外の歌を知らなかったので『366日』の歌もこの映画で知ったぐらいです(笑)ちなみに、2021年放送のテレビドラマ版も未鑑賞ですが、話としてはそれとはまったく別物なので、そちらを観ていなくても問題ないです。

<若者向きの映画かも>

レビューサイトの評価も高いので観てみたんですが、個人的には案の定そこまでハマりませんでした。案の定と書いたのは、この手の映画が昔ほど自分には刺さらなくなってきているんですよね(昔っていうのは大学生ぐらいまでの頃を指します)。劇中での湊と美海は年齢的に僕と同世代なんですけど、それでもあまり感情移入できず。主人公が若くて自分が通ってきた人生だと、懐かしさやわかりみはあっても、「まあ、そういうこともあるよね」と淡々とした目で見てしまうんですよ。これがもっと中年メインの話だったりすると、まだ見ぬ世界ゆえに物語自体に夢を感じることができて楽しめるんですけど。

<"言わない"ことによるすれ違い切なくもどかしい>

とはいえ、決してつまらないわけではありません!ストーリー自体はすごく切なく綺麗な話だとは思いました。2003年、高校生のときに出会った湊と美海。そんな2人を微笑ましく見守る美海のクラスメイトの琉晴(中島裕翔)。高校卒業後、湊と美海は東京に出てルームシェアするも、ある日突然湊が別れを告げます。その前に湊が体調悪いそぶりを見せるんですが、これは伏線ですね。彼、白血病なんですよ。邦画の純愛映画における病気の発症率、高すぎではって思いますけど(笑)

で、美海に迷惑はかけられないとして湊は何も語らず去ってしまいます。言えよって話なんですが(笑)そんなタイミングでなんと美海が妊娠していることも発覚するんですが、もう気持ちのない湊に言っても迷惑だろうということで彼女もまた何も言いません。言えよって話なんですが(笑)まあ、お互い相手を想って口にしなかったことで、事情を知っている観客はそこにもどかしさを感じつつ、そのすれ違いが泣くポイントだと思います。それにしても、愛し合っている描写がまったくないのにいきなり妊娠ときたもんだから、唐突というか不自然な気もするんですけど、、、邦画の純愛映画って直接的な性描写を避ける傾向にあるのはいつも気になります。

<すべてを受け入れた琉晴の器のデカさに感動>

映画で白血病っていうとほとんど死亡フラグのような感じなので、「これは湊が亡くなって美海が後悔するパターンかな」と思いきや、なんと湊は3年後に完治します。治るんかーいって。いや、おめでとう、よかったよ。でも、時すでに遅し。美海は故郷の沖縄に戻り、子供を生んで仕事も続けました。そんな彼女を支えたのが幼馴染の琉晴です。美海の両親には自分の子供だということにして出産と育児の許可を彼女の両親にもらうんですよ。メッチャいいやつじゃないですか。。。ずっと好きだった人の側にいるために、他人の子供を受け入れて育てるなんて。。。普段、明るくてバカっぽいキャラだったのに、いやだからこそ素直にそういうことができたんでしょうね。裏表なくそういう対応が咄嗟にできるところに好感持てました。

琉晴は美海と正式に結婚式も挙げるんですが、湊は退院した後に一度だけ沖縄に戻ってその様子を遠くから眺めるシーンがあるんですね。そこで2人の子供である陽葵と目が合うんですが、ちょっとうるっときましたね。本当は抱きしめたいんだろうけど、それが叶わない現実には、子供を持つ身として数少ない感情移入できた部分です。

<相手を慮る湊にグッとくる>

時は流れて2024年。今度は美海が病気になっていつどうなるかもわからない状態になります(また病気かいってw)。そんなとき、琉晴は娘の陽葵(稲垣来泉)に1枚のMDを託します。そこには、15年前に美海から湊へ当てたメッセージが録音されていました。実は当時、美海が湊の家の郵便受けに入れたんですけど、美海がいなくなってしまうことを恐れた琉晴がこっそり取ってしまったので、美海のメッセージは湊へは届かないままだったんですよ。美海の死期に際し、最後は"本当の家族"で過ごした方がいいという琉晴の計らいで、今回東京から沖縄へ届けさせました。それを娘に行かせるのは意味のあることだとは思うものの、ちょっと酷ですよね。娘からしたらいきなり生みの父親に会いに行くことになるわけですから。

でも、湊はわかっていました。「美海が本当にいっしょにいたいのは僕じゃないよ」って。だから、彼は沖縄に行くことはせず、代わりに美海のために作って渡せないままだった曲をMDにしたためて陽葵に渡しました。美海もまた、本当にいっしょにいたいのは琉晴と陽葵だったと言うので、湊のヨミは当たっていたというか、そこは2人ともわかりあっていたんだなって思います。彼女の中では湊とのことはしっかりケジメをつけたんでしょう。あのMDにメッセージを吹き込んだ時点で。今ある幸せを美海は選んだんです。最後は湊から渡されたMDを聴きながら、美海は穏やかに眠っていました。息を引き取ったのかどうかは観た人の解釈に委ねるような形で。

<湊の背中を押す先輩のナイスアシスト>

美海が湊から渡されたMDですが、そこに至るまでもいいエピソードがあるんですよ。実は湊も昔、美海のために曲を作ると決めたものの、病気のこともあって止まっていました。それを後押しししたのが湊の会社の先輩である橘(溝端淳平)です。「おまえはそれで後悔しないの?自分が音楽に救われたように誰かを救いたいんじゃないの?おまえの曲を待っててくれる人がいるんだろ?」って(セリフはうろ覚えですが)。そのナイスアシストに心打たれましたね。いや、何気ないやり取りですし、正直、橘の出る尺も短く、キャラとして印象に残るようなインパクトもなかったんですけど、個人的に彼が刺さってしまって。これは僕自身も後輩が増えて、彼らをアシストする役割も少なくないってこともあって、なんかちょっと自分と重ねてしまったんですよね。

<時代を感じるMDの交換>

そういえば、高校生時代、湊と美海がお互いに音楽が好きっていうことからMDを交換するシーンがあるんですけど、このアナログさがよかったんですよ。まず、MDっていうところ。おそらく、もう少し前の時代設定なら確実にカセットテープでしたよね。それがMDだと。僕がMD全盛期の世代なのでここはとても懐かしく感じるところでした。そして、お互いに自分の推し曲をMDにまとめて相手に渡すっていう行為がすごく愛らしくないですか?相手に聴いてほしい曲を考えながら録音して、曲目を書いたシールも貼って、けっこうな手間じゃないですか。その手間をかけてでもMDを交換し続けるっていうところに、それだけお互い好きなんだなっていうのが見て取れるので、その青春感にちょっとやられました。今だったらYouTubeとかSporifyのリンクを送るって感じですかね。便利っちゃ便利ですけど、おじさんからするとやや味気ない(笑)

<気になった点>

重箱の隅をつつくようなツッコミで恐縮ですが、映画を観ていて2つ気になった点がありました。ひとつ目は、湊と美海の住んでいた部屋です。このルームシェアしていた部屋が広くてオシャレすぎて、大学生が折半して住める家賃だろうかっていう(笑)ふたつ目は、劇中では20年経っているんですけど、役者が変わらなかったため、上白石萌歌に中学生の娘がいるっていうのが違和感ありまくりでした(笑)

<そんなわけで>

琉晴と橘という脇役のナイスプレーが感情移入しやすい映画でした。『【推しの子】』(2020-2024)で「集客に繋がる主演と作品の質を担保する助演」みたいな表現がありましたが、まさに後者の方がこの映画では心に残りました。自分の年齢的に、メイン2人の方には感情移入できませんでしたけど、若い子には刺さると思いますよ。後ろにいた若い女性客なんか声が漏れ出るぐらい泣いてて大丈夫かって心配になったほどですから(笑)

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