【ネタバレあり】見てくれの若さに固執した妻の行き着く先が悲惨だった『地下室のヘンな穴』
【個人的な満足度】
2022年日本公開映画で面白かった順位:124/133
ストーリー:★★★☆☆
キャラクター:★★★☆☆
映像:★★☆☆☆
音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:★★☆☆☆
【作品情報】
原題:Incroyable mais vrai
製作年:2022年
製作国:フランス・ベルギー合作
配給:ロングライド
上映時間:74分
ジャンル:ミステリー
元ネタなど:なし
【あらすじ】
緑豊かな郊外に建つモダニズム風一軒家の下見に訪れた中年夫婦のアラン(アラン・シャバ)とマリー(レア・ドリュッケール )。購入すべきか迷う夫婦に怪しげな不動産業者がとっておきのセールスポイントを伝える。
地下室にぽっかり空いた“穴”に入ると「12時間進んで、3日若返る」というのだ。夫婦は半信半疑でその新居に引っ越すが、やがてこの穴はふたりの生活を一変させていく……。
【感想】
地下室のヘンな穴に入ると「12時間進んで、3日若返る」という、時間の流れが通常と異なる面白い設定でした。しかし、12時間進もうが3日若返ろうが、パッと見でわかりづらいから、設定の割には地味な映画かなと(笑)ネタバレしないと感想書きづらいので、ここはもうネタバレしちゃいます。なので、内容を知りたくない方はページをここでそっ閉じしてください。
<設定は受け入れましょう(笑)>
この穴ってのが不思議で、地下室にあるのに出口はなぜか家の2階なんですよ。で、そこを通ると世界は12時間進んでいます。にも関わらず、体は3日若返ってるんですよね。なんでそんな穴があるのか、どんな仕組みなのか、まったくの謎。劇中でも特に説明はありません。もう、そういう設定だと受け入れるしかないです。
<穴に対する興味度が運命を狂わせる>
この穴がアランとマリーの運命を変えていくんですが、アランがそれに興味を持ったのは最初だけなんですよ。それ以降は、あまり活用する意味を見出せないのか、まったく使ってませんでしたね。
一方、マリーはその逆でバンバン使うんですよ。体が若返るということに興味津々で。昔やってみたかったモデルになるべく、延々と穴に入り続けました。劇中では年齢に関する明確な描写はありませんが、元々50歳ぐらいでしょうか、それが最終的に20歳ぐらいになっていた印象です。なので、30歳若返った感じですね。
<マリーの若さに対する執念>
ここで、ちょっと考えてみましょう。1回穴に入るごとに、3日しか若返れません。ということは、1年若返るには122回入る必要がありますね。30歳若返ったということは、、、3,650回も穴に入ったということになるんですよ。なんというルーティンでしょうか。
で、その間に外の世界では12時間が過ぎています。穴の外にいる人からしたら、穴に入った人に会えるのは12時間後。つまり、アランは12時間×3,650回も妻に会えなかったわけです。これって5年なんですよ。5年もの間、同じ家にいながら夫婦は離れ離れになっていたということなんですね。
マリーは若返ってモデルの仕事を始めるものの、これが思うようにいきません。それで精神を病んじゃって、最後は病院送り。アランはマリーと仲良く暮らすために、念願のマイホームを買いました。それなのに、マリーが若さに固執した結果がこれですよ。人智を超えた事象ってのは、それを扱う人間のモラルが問われますね。
<もしかしたらと考えるとゾっとする設定>
さらに、ひとつ怖い点があります。マリーは途中で腐ったリンゴといっしょに穴に入るんですが、当然リンゴも綺麗な形に戻ります。ところが、そのリンゴをアランが食べたときに、中は腐ったままだったんですよ。劇中では明確にはされていませんでしたが、、、これ、見た目だけ若返って、中身はそのままっていうケースは十分に考えられることです。となると、、、マリーは見た目だけ20歳に戻っても中身は50歳のままっていうことになりますね。見てくれだけ変えることの意味を改めて問われる作品でもあるんじゃないかと。
<設定がうまく伝わってこない>
このように、いろいろ考えさせられる部分はある映画なんですが、最初にも書いた通り、「12時間進んで、3日若返る」っていう時間の流れが微妙なんですよね。パッと見でほとんど変化がないから、設定の割に視覚的な刺激がほとんどなくてもったいなかった印象でした。あと、全体的に映像がぼやけていて、ちょっと観づらかったです(僕だけ?)。
<そんなわけで>
そんなわけで、『世にも奇妙な物語』みたいな話が好きな人は楽しめると思います。尺も74分と短いですし、サクッと終わりますから。
ちなみに、本編とは関係ないんですが、アランの友達の設定がちょっと面白いです。夜の生活のために電子ペ〇スにして、硬さも大きさもスマホで自由に変えられるっていう中途半端な下ネタ。この人だけメッチャ浮いていたんですが、なんかキュートでしたね(笑)