ロマンチックすぎるひと夏の恋を描いた元祖デート・ムービー!撮影当時23歳と思えぬオードリー・ヘプバーンの美しさと36歳に収まり切らないグレゴリー・ペックの渋さが際立つ『ローマの休日 製作70周年 4Kレストア版』
【個人的な満足度】
2023年日本公開映画で面白かった順位:21/131
ストーリー:★★★★☆
キャラクター:★★★★★
映像:★★★☆☆
音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:★★★★☆
【作品情報】
原題:Roman Holiday
製作年:1953年
製作国:アメリカ
配給:TCエンタテインメント
上映時間:118分
ジャンル:ラブストーリー
元ネタなど:なし
【あらすじ】
ヨーロッパ最古の王室の王位継承者、アン王女(オードリー・ヘプバーン)は、公務に縛られ不自由な毎日にうんざりしていた。欧州親善旅行で訪れたローマでの歓迎舞踏会の夜、彼女は宮殿から脱走を図り、夜の街をぶらつき始めるのだった。
しかし、主治医に処方された鎮静剤が効きはじめた彼女はベンチに倒れこんでしまう。そんな彼女をたまたま助けたのは、アメリカ人の新聞記者ジョー(グレゴリー・ペック)だった。アン王女の正体を知り、これは大スクープのチャンスと意気込むジョー。彼は王女と知らないふりをしたままローマのガイド役を買って出るのであった。
美しいローマの街で、”真実の口”や”祈りの壁”など観光地をめぐり、はしゃぐアンの姿をジョーの同僚のカメラマン、アーヴィング(エディ・アルバート)に撮影させる。そうこうするうち、アンを捜しに来た情報部員との大立ち回りとなるが、間一髪逃れる。
そんな中、アンとジョーの距離は次第に近づいていくのだが…。
【感想】
「オードリー・ヘプバーンといえばこの映画!」というぐらい彼女の代表作と言えるでしょう。当時まだ無名に近かった彼女が一気に有名になり、1953年のアカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞した作品です。王女と新聞記者という身分の違いにも程があるラブストーリー。今となってはそういう設定もめずらしくはないでしょうけど、これが作られたのは今から70年も前のこと。そのときからこういう話があるということは、大まかな映画のパターンってもうその頃には出尽くしているんだろうなって思います。
<主演2人が醸し出す圧倒的雰囲気ですべてが成り立つ>
この映画で注目したいのは、やっぱり主演の2人でないでしょうか。オードリー・ヘプバーンは映画撮影当時23歳だそうですが、この若いキャピキャピとした感じと貫禄のある王女の出で立ち、両方を兼ね備えた雰囲気を出せるのは、もうさすがとしか言いようがないですよね。そして、相手役のグレゴリー・ペック。190cmの長身と端正な顔立ちが似合うおじさまと思いきや、実は撮影当時は36歳なんですよ。いや、36歳も十分なおっさんと言う人もいるかもしれませんが、僕はてっきり40代後半ぐらいに見えたので、想像以上に若くて驚きました。もはや僕の方が年上じゃないかって。いやー、30代でこの貫禄と渋さを出せる方がおかしいでしょう(笑)
なお、余談ではありますが、もともと、この映画は予算が少なかったこともあって、グレゴリー・ペックの出演が決まった時点で、ベテラン女優の起用は現実的でなかったそうです。なので、無名に近くても王女にふさわしいオードリー・ヘプバーンが選ばれたのだとか。彼女の才能を認めたグレゴリー・ペックは、新人であるにも関わらずオードリー・ヘプバーンを自分と同等のクレジットを与えるよう製作側に要求したそうです。そのおかげで、オードリー・ヘプバーンも注目されるようになったんですね。
<キャラが立っているからこそ王道ストーリーで事足りる>
物語としては王女と新聞記者のラブストーリーではありますが、そこは結果論と言いますか、身分の違いを超えるためにがんばるっていう話でもないので、見え方としては若い女性と年上男性とのロマンスっていうシンプルなものです。ただ、この2人がもう圧倒的な雰囲気を持っているがゆえに、そういうシンプルな王道ストーリーでも面白く感じられるんですよね。ローマの街の観光名所を巡り、初めて自由気ままに過ごせる時間にはしゃぐアンと、そんな彼女を微笑ましく見つめるジョーのバランスがすごくいいんです。特に、真実の口のシーンは僕のお気に入りです。グレゴリー・ペックは本番で、袖の中に手を入れて噛みちぎられた演技をしたんですが、オードリー・ヘプバーンが本気で驚いて叫び声を上げたので、あそこは演技ではなくガチなんですよね(笑)
そんな穏やかな時間を共に過ごすうちに2人の心が惹かれ合うというのは、定番ながらもロマンチックですよね。でも、アンは自分が王女であることを忘れず、最終的には元の生活に戻っていくのが切なく寂しいところです。きっと、2人で過ごした時間は人生において絶対忘れない甘いひとときとして一生輝き続けることでしょう。ラストの記者会見で見つめ合うアンとジョーを見ていると、こんなにも近くにいるのに凄まじく遠い関係にあるっていうのが感慨深いです。
<撮影秘話も興味深い>
本編とは関係ないですが、Wikipediaに書かれている撮影秘話も見てみると面白いですよ。撮影した1952年の夏は猛暑でメイクがすぐに流れ落ちたりとか。野次馬の整理が大変だったりとか。2人でスクーターに乗るシーンは3分ほどなのに、撮影には6日かかったりとか。とにかく撮影の大変さが伺えます。当時は、後でCGで処理するとかそういうことができないので、全部現場でやり切るしかないんですよね。
<そんなわけで>
70年経っても色褪せない不朽のラブストーリーとしてオススメです。この世に生を受けたなら、1回は観ておいて損はないかと!これ、カラーで観たかったなあ。予算の関係で白黒になってしまったらしいですが、ウィリアム・ワイラー監督もそのことが心残りだったそう。AIの力を使ってカラーにできないんですかね(笑)