令和の"セカチュー"足りえる、優しい嘘に涙ちょちょ切れた『今夜、世界からこの恋が消えても』
【個人的な満足度】
2022年日本公開映画で面白かった順位:65/118
ストーリー:★★★★☆
キャラクター:★★★★☆
映像:★★★☆☆
音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:★★★☆☆
【作品情報】
製作年:2022年
製作国:日本
配給:東宝
上映時間:121分
ジャンル:ラブストーリー
元ネタなど:小説『今夜、世界からこの恋が消えても』(2020)
【あらすじ】
僕(道江田俊介)の人生は無色透明だった。真織(福本リコ)と出会うまでは――。
クラスメイトに流されるまま、彼女に仕掛けた嘘の告白。しかし、彼女は“お互い絶対に本気で好きにならないこと”を条件にその告白を受け入れた。そうして始まった偽りの恋。やがてそれが偽りとは言えなくなった頃――僕は知る。
「病気なんだ私。前向性健忘って言って、夜眠ると忘れちゃうの。一日にあったこと、全部」
彼女はその日の出来事を日記に記録して、朝目覚めたときに復習することで何とか記憶をつなぎとめていた。その日ごとに記憶を失ってしまう彼女のために、日記が楽しい出来事で溢れるようにと、一日限りの恋を積み重ねていく日々。
しかし、僕には真織に伝えていないことがひとつだけあった……。
【感想】
いわゆる記憶障害系純愛映画です(いま命名しましたがw)。記憶を失うヒロインと、秘密を抱えた男の子のプラトニック・ラブ。まだこの手の映画で泣けるとは思いませんでした。
<とある映画と同じ設定ではあるけど……?>
正直、既視感はメチャクチャありました。基本的には『50回目のファースト・キス』(2005)まんまの設定だったので。交通事故の後遺症で一晩寝たら記憶を失くしちゃう真織。寝る前に日記を書いて、翌朝にそれを読んで記憶の再現に励むっていうね。何のひねりもないぐらい同じなんですよ。
ただ、だからと言ってつまらないっていうことではまったくないです。日々自分の日記でしか記憶をつなぎとめられない真織に対して、常に元気づけようとする透の姿が健気でよかったですね。少しでも真織が明るい気持ちになれるよう、徹底的に彼女を喜ばせようとしていて。
ちなみにふと思ったんですが、これ日が経つにつれ、真織が読み込む日記の量がだんだん増えてくるんじゃないか……という本編とは関係ないツッコミどころを感じました(笑)
<後半からのストーリー展開に注目>
とまあ、ここまでだったら『50回目のファースト・キス』とそんな変わりません。しかも、ハードルをものともせず、2人の仲睦まじい日々が繰り返されるのは、ほのぼのする反面、あまりに抑揚がなく、少し退屈してしまう方もいるかもしれません。でも、これが嵐の前の静けさというか、この平坦な流れが、後半の怒涛の展開を際立たせるんですよ。後半というよりラスト30分って感じでしたけど、もうね、まさかすぎました。冒頭から、透には何かがある感じはしていたので、「もしや……」と思っていたんですけどね。。。唐突すぎる印象は否めませんが、いざ"その流れ"を目の前でやられると涙がツツーって頬を伝いました。真織のことを想っての優しい、、、優しすぎる嘘。これこそが、この物語の一番のクライマックスと言えるでしょう。もしこの映画を大学生の頃に観ていたら、まさに『世界の中心で、愛をさけぶ』(2004)みたいな位置づけになったと思いますね。
<親友、泉を演じた古川琴音のいい演技>
この映画、出てくる人全員がいい人なのも救われるポイントです。大体こういう映画って、三角関係などで恋のライバルが出てきそうなものですが、今回はそういう人物もおらず、ただひたすらにメイン2人の純愛っぷりを追っています。むしろ、そういう対立関係なくしてよくここまでロマンチックにできるなと感心するほどに。一瞬、真織の親友の泉(古川琴音)が悪い人なのかもなんて勘ぐってしまいましたが、いやいや普通にいい親友。それどころか、今回の映画の中で一番いい演技を見せてくれました。ドラマや映画で最近よく目にしますが、いつも素晴らしい演技ですよね。
<純愛映画に定評のあるスタッフたち>
そして、スタッフが純愛映画に長けた人たちが集まっているのも本作の特徴なのかなと。監督は『思い、思われ、ふり、ふられ』(2020)の三木孝浩。脚本は『君の膵臓をたべたい』(2017)の月川翔と『明け方の若者たち』(2021)の松本花奈。それぞれの手掛けた作品を観ると、「な~る」と思います。
<そんなわけで>
綺麗で純粋なラブストーリーを観たいならぜひにと思います。いろいろ似通った設定の作品も多いですが、王道で外れはないなって感じです。
それにしても、髪型のせいもあってか、遠目だと福本莉子が浜辺美波にしか見えませんでした(笑)