
親切を貫く時〜映画「ホワイトバード はじまりのワンダー」
「ワンダー 君は太陽」でオギーをいじめていたジュリアン。
校長からの停学2日の処分に納得できない母親が、転校すると告げて君の手を引いて校長室を出る。
あの時、助けを求めるように校長を振り向いた彼の目。
その目が、僕はずっと忘れられなかった。
さて、「ホワイトバード はじまりのワンダー」はそのジュリアンの物語。
転校先で居場所のない毎日を過ごすジュリアン。
ある日、パリから画家として活躍している祖母サラが訪ねてくる。
ジュリアンの「あの経験で学んだのは、人に深入りしないこと。意地悪もしない。普通に接すること」と話すジュリアンに対して、サラは語り始める。
ナチス占領下のフランスをユダヤ人として生き延びて来た過去のこと。
出会った優しさ。
失った愛。
そして、ジュリアンをジュリアンと名付けた理由を。
サラが語る物語の大半は、第二次世界大戦下のフランスを舞台にしているが、ジュリアンに伝えたいのは戦争のことだけではない。
むしろ、日常を生きるために必要なことだ。
「ワンダー 君は太陽」で、担任が生徒に伝える格言。
「正しいこと、親切なこと。選ぶなら親切なことを」
それは、サラの口からも語られる。
親切には勇気がいること、命がけの親切が奇跡をおこすことを。
その勇気は、ジュリアンに伝わるだろうか。
タイトルのホワイトバード、白い鳩。
最後に展覧会の会場でスピーチをするサラが、そっと原稿台の端におく鳩の彫物。
すっかり黒くなっているが、それは…
ジュリアンを演じるのは前作に続いて、ブライス・ガイザー。
サラを演じるのは、ヘレン・ミレン。
年の暮れに、いい映画を見せてもらった。