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takemotohiroko
春雪三日
春雪三日。
この言葉だけが、僕の頭の中に残っていた。
春の雪は三日間降り続くとか、多分そんな言い伝えのようなものだろうと思っていた。
ところが、辞書で調べても、「春雪」は掲載されているが、「春雪三日」はない。
では、歳時記か。
しかし、歳時記にもない。
春雪の傍題にも出ていない。
春雪三日。
ググってみる(ちなみに娘には、ググるが古いと言われました。じゃあ、なんと言う)。
しかし、出てくるのは、石田波郷の、
春雪三日祭の如く過ぎにけり
こればかり。
春雪三日は、石田波郷の造語なのかもしれない。
父は何かにつけて、俳句をつぶやく人だった。
パイナップルの缶を開ける時には、
鳥わたるこきこきこきと缶切れば
と秋元不死男の句を。
僕が熱を出して寝込むと、
水枕ガバリと寒い海がある
と西東三鬼の句を。
湯豆腐を食べる時には、
湯豆腐やいのちのはてのうすあかり
と久保田万太郎の句を。
そんな父だから、この季節に雪が降ると、この石田波郷の句をつぶやいていたのだろう。
幼い僕の頭には、出だしの「春雪三日」だけが残ったのかもしれない。
春雪三日。
なんとなく、この雪のあとに春が待っている、そんな期待にあふれた言葉だ。
こちらでも、今日は雪が待っている。
今日から明日にかけてがピークとも。
豪雪地帯の方は、お気をつけください。