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電通:Integrated Marketing Communication(IMC)を活用した革新的戦略


学べるマーケティングモデル

Integrated Marketing Communication(以下、IMC)は、広告、PR、デジタル、セールスプロモーションなど、あらゆるマーケティングチャネルを統合し、一貫性のあるメッセージを消費者に伝達するための枠組みです。顧客の接点が多様化した現代では、それぞれのチャネルを独立して運用するだけでは効果が限られがちです。そこでIMCを用いると、チャネル間のシナジーを最大化し、ブランド体験を横断的に向上させることができます。たとえば、広告キャンペーンとSNS、店舗プロモーションを横断的に連携し、消費者に統一されたブランドイメージを提供することで、高いエンゲージメントとロイヤルティを獲得できるというわけです。

IMCのポイントは「一貫性」と「相互補完」。単なるメディア戦略ではなく、ストーリーやメッセージをどのチャネルでも同じトーンで展開し、チャネル相互の強みを掛け合わせて効果を高めるのが特徴です。株式会社電通は、このIMCを独自のノウハウと組み合わせることで、国内外の企業や社会課題に対して、革新的なソリューションを提供し続けてきました。


電通とは?

株式会社電通は、日本を代表する総合広告代理店であり、世界規模で広告・マーケティングサービスを展開する巨大企業です。その事業内容は広告制作やメディアプランニングといった領域にとどまらず、近年ではデータドリブンなマーケティング支援やDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進、さらには企業ブランディングや社会課題解決型プロジェクトのコンサルティングなど、多岐にわたります。テレビCMやネット広告の運用のみならず、多元的な観点から顧客企業の戦略を設計し、実行をトータルでサポートしている点が特長的です。

同社が掲げるビジョンは「Good Innovation.」というキーワードに凝縮されています。広告だけではなく、新しい価値や社会にとってポジティブな影響をもたらすイノベーションを巻き起こしていこうという強い想いが込められています。
また、歴史をさかのぼると、電通の起源は1901年(明治34年)に設立された「日本広告株式会社」にまで遡ることができます。その後、通信社との合併や業務拡大を経て、現在の「株式会社電通」として発展。100年以上にわたる長い歴史のなかで、日本の高度経済成長や情報化社会の進展を背景に、国内トップの広告会社として地位を築いてきました。


電通が直面した課題

株式会社電通は国内外で多種多様なマーケティング支援を行ってきましたが、その歩みの中ではいくつかの大きな課題に直面しています。ここではエピソードを交えながら、代表的な3つの課題にフォーカスしてみましょう。

1. デジタルシフトへの適応と組織体制の変革

インターネットやSNSの普及によって、消費者は企業やブランドに対して多彩な接点を持つようになりました。従来のマスメディア中心の広告手法だけではクライアント企業のニーズを満たせなくなり、データ分析やデジタルメディアの深い知見が不可欠に。電通は従来の組織構造を大幅に再編し、デジタル領域に特化した子会社を設立するなど柔軟な体制を整えましたが、一方で生え抜きのクリエイティブ人材や営業部隊との連携をいかにスムーズに図るかが大きな挑戦となりました。伝統的な広告代理店の強みを維持しながらも、新しいデジタルスキルの習得と文化的な融合を図る必要があったのです。

2. グローバル展開とローカルカルチャーの融合

電通は早くから海外企業の買収や提携を通じて、グローバルネットワークを構築してきました。しかし、国内の広告業界で蓄積したノウハウや手法は、必ずしも海外市場にそのまま適用できるわけではありません。たとえば欧米圏やアジア諸国では、文化や消費者の価値観が大きく異なり、国内と同じアプローチでは十分に効果を上げにくい場面も多々あります。また、大規模なM&Aによる組織拡大に伴い、異なる企業文化を持つ海外の社員と日本の本社組織とのコミュニケーションロスが発生するなど、企業統合の難しさが顕在化していました。

3. 社会課題への対応とステークホルダーとの連携

近年、SDGs(持続可能な開発目標)の浸透や環境・社会・ガバナンス(ESG)の重要性の高まりによって、企業にはビジネスを通じた社会課題の解決やサステナビリティの追求が求められるようになりました。広告会社としても、単に商品の売上向上やブランド認知拡大を目指すだけでなく、社会にプラスとなる施策をクライアント企業と共創する姿勢が期待される時代です。電通はこれを契機に「Good Innovation.」を掲げ、各種社会課題に取り組むプロジェクトを積極的に推進。しかし、売上や利益を確保しつつ、社会貢献の取り組みを真に拡大していくには、外部パートナーや行政、NPO/NGOとの緊密なコラボレーションが必要不可欠です。各所との利害調整やコミュニケーション設計に難しさがあるのも事実で、今なお組織横断的かつ戦略的なアプローチが求められています。


電通の課題解決策

これらの課題に対して電通が実施してきた解決策には、IMC(Integrated Marketing Communication)のフレームワークが大きく寄与しています。具体的には以下のような取り組みが行われました。

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