見出し画像

社長とは普段はいったい何をしているのか?

社長をしている時によくあった話です。
新入社員がその先輩や上司に向かってする質問に
「社長はいつも何をやっているのですか?」
というのがありました。
きちんと答えてくれる上司もいたと思いますが、若い先輩だと「実は私もよくわからない」という回答もあったと聞きます。
そこで今日は改めて社長は普段はいったい何をしていたのか?ということを振り返ってみたいと思います。

社長の日常業務とは?

さて、社長は普段何をしているのか?
実は非常に難しい質問だなと思います。
毎度の言い回しで恐縮ですが、社長によって、会社によって様々であり一概にこれをしているのは実はないのかもしれません。まさに「人それぞれ」「社長それぞれ」なのではないでしょうか?

社長同士での飲み会などで他の社長さんたちと話す機会は多々ありましたが、普段何をしているの?という会話をした記憶もあまりありません。したとしても覚えてない。

むしろ今になって、皆さん何をしているのだろうと思う気持ちも湧いてきてしまいます。

営業が好きな社長さんの場合、自らが先頭に立って営業に回っている社長さんをよく見かけます。社員数が少ない会社だと自らが動くというのはあり得ると思うのですが、そこそこ社員さんもいて営業部長さんもいるのに、それでも社長自らというケースもあります。部下たちが頼りないという思いもあるのかもしれませんし、シンプルに営業の現場が好きという場合もあるでしょう。こうした仕事ぶりであれば、若い社員から見ても社長が何をしているのかはとても分かりやすいだろうとは思います。

この営業社長さんのケースは、技術系や研究開発系のケースにも当てはまりそうです。自らが研究開発した商品を扱っている会社だと、社長さん自らが次の商品を開発したり、その為の研究を重ねて続けているケースもよく見かけます。ベンチャー系は特にそうしたケースが多いのではないでしょうか?こうした仕事の仕方も周囲からは分かりやすいと思います。

私の社長時代というと?

では私の社長時代ですが、実際に日々どんな仕事をしていたかを振り返ってみたいと思います。

通販会社の場合、いわゆる営業職のような外回りをしてお客様を訪問して回って受注するという業務はありません。また一般的な小売業のように店舗を開けて来客を待ち応対するという業務もありません。

基本的には外勤というよりも内勤で行なう仕事が多いものと認識しています。取引先を訪問して打ち合わせをすることもありますが、どちらかというと取引先が自社まで来てくれるというケースの方が圧倒的に多い。

そういう背景もあってか、社長も社員も社内で仕事をする時間の方が長かったというのが実情です。商品開発などでは全国の会社を回ったり、時に海外に行って商品を探して回ることもあるので、そうした仕事を担当している人は社内にいることは少なくなります。

私も社員時代は、国内外を出張してばかりであまり出社しないという時期もありました。しかし、常務、社長となるにつれて、基本現場に権限を移譲する経営をしてきたこともあり、次第に自ら商品を探して回るというケースは減っていきました。

さて、社内でしていたことの多くは、各種販売状況のデータのチェックと今後の展開の試算をしていたことが多かったです。通販広告のチェックや新商品のチェックも行なっていましたが、やはり現場の企画を尊重するスタンスでしたので、自ら何かを制作するということもあまりありません。

どちらかというと結果に対して、それが良くても悪くても、なぜそうなったのか?という分析をデータを参照しながら仮説を立てたり、または自分の経験からコンセプトのずれや、訴求点のずれ、表現方法の分析にあたる時間が多かったです。

チャレンジをしてみて、その結果を受けて「次にどうするか?」から本当の仕事が始まるという感じと言えば伝わるでしょうか?いわゆる「受け」のスタンスと言っていいかもしれません。

そうして考えた仮説を担当部門長や担当者と話し合って改善点を導き出したり、または現場からの分析と私の分析をぶつけ合いながら深掘りしていったりという時間に費やすことが多かったです。

現場と社長の観点における絶対的な違いを挙げるとすれば、財務的な判断基準が入るかどうかでした。「では次はこうしていこう」「今度はこうしたモノを作ろう」という仮説ができた時、最後は社長がそれを決断するわけですが、その決断の基準が現場とはどうしても異なってしまう。なぜなら、現場は純粋に企画としてのデータや将来性で行なうわけですが、社長の基準ではそこにプラス財務的に可能かどうかが加わります。そしてどうしてもそこが最優先になってしまう。

そうしたことでいえば、財務的な試算も日常業務でした。銀行借入はほぼなかったので、資金繰りというほどではないですが、お金の入りと出のバランスは常にチェックしていました。
通販の業務上、先に商品を仕入れ、広告費をかけてから販売を行います。基本的な流れでいえば、先に費用を払ってから、その後に注文が来るのを待つという流れです。注文が計画通りであればいいのですが、下回っている場合は、日々の結果を基に着地点を何通りも想定して、支払を無事に行えるのかをヒヤヒヤしながら計算していた記憶は今も生々しく頭に残っています。

攻める社長、守る社長、そして・・・

私は、元来自分で目標を定めて自らグイグイと進んでいくというよりも、必要に迫られたり、社員たちからの要望を基にして目指すゴールを判断するという気質です。また一方、いかにラクをして利益を最大化するかという考えで生きているタイプです。

そうしたこともあってか、「攻め」の仕事というよりも「受け」の仕事にウエイトをおいていたのは確かかもしれません。

社長の気質というのは社長の普段の仕事にも大いに影響すると思います。
強気にどんどん攻める社長、常に外を駆け回る社長、デスクで数字を追いかけ回す社長、慎重にしっかりと守りを固める社長といった具合です。

しかし実際には、どちらかに分かれるというよりも、皆さん攻めも守りも両方されているのが実情だと思います。
そこの社員さんから「うちの社長はイケイケですよ」と聞いていても、実際に二人で話をしてみるととても慎重に緻密に経営をされていると感じる方が多かったです。逆のパターンもまた然り。

あくまでも私の感想ではありますが、基本的に社長であれば攻めも守りも両方を常に考えているものです。どこで攻めるか、どこまで慎重に守るか、そのタイミングを図っているというのはあると思います。社員からの報告、数字の変化の推移、社会状況、競合の状況など要素は多種多様ですが、そうした状況を見極めて、いつどのタイミングでどれくらいの予算をかけて勝負に出るかという判断をしている。

自分なりにひとつ分類してみるとすれば、自らグングン攻めていく気質の社長と、社員にドンドン攻めさせる気質の社長に分かれると思っています。
社員に攻めさせるというと、社長は安全な場所にいて社員にリスクを負わせると受け取る人もいるかもしれませんが、そうではありません。
社員が自らやりたいと思うことを応援し、社長はそれをサポートするという意味です。敢えてカッコつけていうならば「サーバントリーダーシップ」というスタイルとも言えましょうか。

サポートするという姿勢が入ると「攻め」の対義語は「守り」というよりも「受け」と言った方が私はしっくりします。「受け」止めながら、更に攻める姿勢を鼓舞したり、時に早々に撤退して、新しい「次」へ攻めることを促す。

しかしただ「受け」るだけでは次に進まないので、日頃のデータの読み込みや状況の変化といった情報を蓄積し、整理し、見極め、その時に必要な情報を出し、且つその相手のやる気が上がる表現方法を以て次のステップへと進んでいく。

そんな社長像をイメージして取り組んでいました。

しかし、やなりこれも正解というわけでもありません。

まず伝えたいことがあるとすれば、
「社長とはこうあるべきだ」
という論はあまり意味はなく、その人、その会社によって社長の仕事の仕方はどれも異なるのが自然だということです。
そしてそのことを社長自身も認識し、また社員たちも理解してくれるといいなと思います。
「どこそこの社長はこうしている」ということもあるとは思いますが、
「うちの社長はこうしたいんだ」や「うちだからこそ、こうした社長であって欲しい」という観点があると、社長の仕事というものに対してもっと共感できるのではないかと私は思うのです。

私自身はこんなことを考えていた、今振り返るとこういうスタンスだったかな、という振り返りから、今日の文章をしたためてみました。
しかし実際に「出来ていたのか?」と問われたら、非常に心許ない自分がいるのが本音です。

でもこうした振り返りができるのも、一応は社長という立場で10年以上にわたり経営をしてこれたからでもあります。
これもまた社長冥利であったのかもしれません。


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?