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『政策至上主義』を読む

休日の時間が過ぎるのは早く、家族との幸せな時間は瞬く間に過ぎ去り、松本へと帰る高速バスの中です。本日は、石破茂『政策至上主義』(新潮新書2018)の読書感想文です。


読書と電車旅は相性抜群

週末に横浜へ戻って来ると、土日のどちらか、もしくは両日とも息子の電車旅に付き合うのがお約束となっています。息子は、その為に私の帰宅を歓迎している…… と言っても過言ではありません。

帰宅する時間だけ伝えると、その日の電車旅のルートは専ら息子が主導してくれます。首都圏の路線図はJR、私鉄ともほぼ息子の頭に入っているので、丁度いい按配のコースに仕上げてくれます。電車に乗っている間は、駅の撮影などで私のスマホを独占しているので、その間の私は手持ち無沙汰になります。そこで、毎回本棚から一冊抜き出して持っていき、座席に座って本を読んでいる、という訳です。電車通勤をしている頃は、移動時間中の読書が日課だったので、集中できて捗ります。本書も215Pありますが、約4時間の道中、何度も中断を挟みながらも読み切れました。

政治家、石破茂らしい本

10月に行われた第50回衆議院議員総選挙で自民党は議席数を大幅に減らしたものの、第103代内閣総理大臣に就任した石破茂氏が2018年に上梓した本です。本書が発売された当時の石破氏は、自民党内で反主流派の位置にいて、「このまま政権中枢に戻ることなく終わってしまうのか...」と思われ始めていた頃です。

最近は、政治関連の書籍を手にする機会が増えており、先日は、菅義偉氏に焦点を当てた読売新聞政治部『喧嘩の流儀 菅義偉、知られざる履歴書』(新潮社2021)を、金曜日の横浜へ帰る高速バスや在来線の中では、朝日新聞政治部『鵺の政権 ドキュメント岸田官邸620日』(朝日新書2023)を読んだばかりでした。両書の中での石破氏への言及は限定的で、どちらかと言えば否定的な扱いになっていましたので、バランスを取る為に、石破氏の著作を読み直しておこうと思った次第です。

石破氏は、日頃から発信力があり、自分の主張を臆せず口にする、理念を曲げない愚直なタイプの政治家という印象を持っていました。本書では、国家安全保障と憲法改正に多くの紙幅が割かれており、「あるべき姿」に徹底的に拘る姿勢を貫こうとしています。「政治家・石破茂」らしい主張が展開されていて、あまり違和感はありませんでした。現実主義的で、手堅いものの、政治家生命を賭してやりたい政策がはっきりしなかった岸田文雄前首相と比べると、より主張の強いタイプの人物とお見受けしました。

現実主義者の一面も

本書で石破氏が好意的に名前を挙げている先輩政治家には、田中角栄、渡辺美智雄、竹下登、谷垣禎一、小泉純一郎、野田佳彦などの各氏がいました。長らく確執が噂されていた安倍晋三氏についても、憲法改正についての姿勢の違いを明確にしている以外は、敬意も示しているように思えました。

色々批判の元となってきた自民党の派閥についても肯定的で、選挙に強く、草の根活動を大切にする政治家を育成するにはいいシステムだと一定の評価を与えています。自身、実質的な派閥と言ってよい水月会を主催してきた人であり、権力の構造、支配の現実にも冷徹な理解のある人なのでしょう。

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