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『成長戦略・親米政策への懐疑』を読む
本日は、仕事を終えて帰宅して夕食を済ませた後は、19:00から『50代・60代向け金融セミナー 退職後のお金について考える編~ライフプランと資産形成を見直そう~』という無料セミナーをWebで聴講した後、確定申告作業に打ち込み、そこそこ生産的に過ごせたことで満足です。
本日の投稿記事は、最近読み始めた佐伯啓思『さらば、欲望 資本主義の隘路をどう脱出するか』(幻冬舎新書 2022)の中に収められている『成長戦略・親米政策への懐疑』(P29‐32)という短いコラムの感想文です。
叫ばれ続けた「改革」は実行された
著者の佐伯啓思氏について、結構著書は持っているにもかかわらず、どういう立ち位置の思想家なのか、よくわからずに読み流してきました。本書は、昨日BOOK-OFFで手に入れた数冊の中の一冊で、氏が2018年~2022年にかけて「社会時評」「文明論」に発表した手記をまとめたもののようで、数年前の空気感を知るのに良さそうな気がしています。興味をそそられたタイトルから読み進めており、その中の一つが、本日取り上げる『成長戦略・親米政策への懐疑』(P29‐32)です。2018年9月に発表されたものです。
自民党総裁選挙で、安倍首相の三選が実現した時です。以下の佐伯氏の筆は極めて的確で、「まさにその通りだ」と思わず、膝を打ちました。
1990年代初頭に、小沢一郎氏が自民党を割って出て以来、政治改革、行政改革、経済構造改革等々、「改革」こそが野党の役割であると彼らは訴えてきた。そして、小選挙区制の導入、二大政党による政策論争、政治主導による官僚行政の制御、市場競争原理の広範な導入など、「改革論」の主張はかなりの程度において現実化した。
現実は、見ての通りです。「改革」は実現したけれど、国民の不満は燻ったままです。ひょっとすると、日本の状況は佐伯氏がこの小文を発表した2018年9月より、確実に衰退し、活気が薄れたように感じています。
そして、これら「改革」の成果を最大限に利用して政治を行ったのが、安倍長期政権だった、という総括も肯首できるものでした。
安倍政治への冷静な考察
安倍政治の軸になっていたのが、成長戦略、グローバル競争、親米 であったことは確かでしょう。佐伯氏は、「ひとつの方向性ではあるが、それが最善の道とは思えない」という立場を取ります。日本にはそれらが機能する条件が整っておらず、むしろ成長と競争を軸とする国家戦略は、日本の存立を危うくさせるのではないか…… という考えです。
避けられない超高齢化と人口減少、予想される巨大災害リスクを抱える国が、投機化で過熱しがちな金融主導のグローバル経済の中で、利己的な米国をサポートして、成長と競争を挑むのは果たして得策なのか…… 身分不相応な戦略を掲げていないか、という疑念は湧きます。
短絡的かもしれませんが、なるほど、そうかもなあ、と唸った次第です。
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