『上級国民/下級国民』を読む Part 1
今日の読書感想文は、橘玲『上級国民/下級国民』(小学館新書2019)です。著者の橘玲氏は、事実(ファクト)をベースに、現代の日本に生きる私達にとって信じたくない不都合な現実を炙り出す刺激的な著書を次々と発表されている人です。本書は2019年7月発売で、氏の最新刊です。読後に『うーむ……』と唸ってしまうさすがの内容でした。
本書は、
の三部構成になっていて、それぞれに印象的なキーワードが登場して、大変興味深い議論になっています。内容が濃いので、3回に分けて読書感想文として残しておきたいと思います。本日はPart1です。
Part1の「第1章 平成で起きたこと」 の冒頭文が的を突き過ぎていて、納得感が半端ありません。
これは、私の感覚ともぴったり合致しています。1980年代に世界のトップクラスに辿り着いて以降、バブル崩壊の後は停滞を続け、抜本的変化を避け続けた結果、国際社会での日本の地位は凋落を続けています。経済成長のスピードには勢いがありません。右肩下がりの日本で暮らすということは、明るい未来や夢を持ちにくいのが現実です。上昇気流に乗ってある程度景気が良かった時代の日本を覚えている私は、仕事の場面において、「日本はもはや大した国ではなくなってしまった……」という溜め息をつく場面が増えています。著者の言葉通り、
その上で、失われた20年についてデータを基に、
と言い切ります。成功事例としての日本的雇用制度が温存される中で、生産性の高い製造業の工場までが閉鎖されることになり、日本国内での職を奪う静かなリストラが進行しました。その犠牲になったのは若者世代です。そして私も100%同じ意見ですが、
昨今「働き方改革」という名の、正社員の既得権益の引き剥がしが活発化しているのは、日本社会の中核を成している団塊世代(≒勝ち組世代)がほぼ労働市場から現役引退したから可能になっている、という分析にも完全に同意します。そして、
という絶望的で腹立たしい観測が記されます。
残念ながら、橘氏の予測は的中しそうな気がします。そしてこの問題先送りに耐え抜ければ、下級国民が溢れ返る一層貧乏臭い国が残り、社会保障制度が耐え切れずに完全崩壊すれば、亡国者が続出して、国家破産になる危険もある、と警告しています。
こんなみすぼらしい先行きなのであれば、長生きなんてしない方が良さそうです。子供達の未来を考えて、個人で対処していく他ありません。こここまでが、Part1の要約です。
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