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Eテレで現在放送中の「キッチン戦隊クックルン」の多様性の描き方がナチュラルで素敵すぎるので、シェアさせていただきたい

毎週月・火・水曜日の朝7:00~7:10にEテレで放送している「ゴー!ゴー!キッチン戦隊クックルン」をご覧になったことがある方は、どれくらいいるだろうか。

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我が家には小学5年生の息子と小学1年生の娘がいるため、平日の朝のリビングのテレビはもっぱらEテレが映っている。従って、私もEテレ(の画面左上に表示される時刻)をちらちら見ながら、バタバタと朝の支度をしている。

「ゴー!ゴー!キッチン戦隊クックルン」とともに朝を過ごすようになって1年以上経つが、大人の私でも、見るたびに本当に面白く素晴らしい番組だと常々感じていた。特に、多様性の描き方が素晴らしいなと思っていて、いつかどこかで誰かとシェアしたいと考えていた。

今回、「#多様性を考える」というnoteの企画を見つけたので、この機会に書かせていただこうと思った次第である。

「クックルンをいつも見ているよ」という人も、「そんな番組知らないよ」という人も、少しお付き合いいただけると嬉しいです。


そもそも、「ゴー!ゴー!キッチン戦隊クックルン」は子供向け料理番組である

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(登場キャラクター:左からムール姫、マイカ、タイゾー、クラム。右側の動物のようなものは放送回ごとに異なる怪人。ムール姫以外の3人が「クックルン」に変身して怪人と戦っているという設定。)

このクックルンという番組は、「仮面ライダー」や「プリキュア」シリーズと同じように、フォーマットを変えずに舞台やキャラクターの設定を変えて1~2年周期でリニューアルされている番組である。初代クックルンは2013年放送開始で、現在のクックルンは5代目になる。

基本的に前半のアニメパートでストーリーや食材との出会いが描かれ、後半の実写パートで料理を作って食べる、という構成になっている。

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(実写パート:左からマイカ、クラム、タイゾー)

教育番組、子供向け、食育という観点から、大事なのは後半の実写パートであるはずだが、前半のアニメパートの力の入れようがとにかくすごい(と私は思っている)。大人でも夢中になってしまうというか、とにかく平日朝という子供ありのワーキングマザーが一番バタバタしている時間帯にもかかわらず、つい見入ってしまうことがよくある。

その理由は挙げると10個以上出てきてしまうので、今回は特に2点お伝えしたいと思う。

素晴らしいと思う点❶:アニメパートのテンポとボケが秀逸

個性豊かな登場人物が織りなす、テンポのよい掛け合い。所々に散りばめられた、子供にもわかりやすく、大人でも共感してしまう時事ネタ絡みのボケ。脚本書いている人は絶対お笑いのセンスが抜群だなと感心している。

特に私のお気に入りの回を載せておくが、残念ながら見逃し配信は終了しているので、概要だけ記載する。

(1)「バナナナナナナナーンの弟子」(2022年1月26日放送)

そもそも、「バナナナナナナナーン」という怪人の名前を呼ぶのにナが一個足りない、逆に多い、という王道のボケが入る。

そしてバナナナナナナナーンの弟子が3人登場する。スモモ怪人のスモモモモモモモーン、とろろ怪人のとろろろろろろろーん…この規則性から、クックルンたちの間で最後の一人の名前を当てるゲームが始まる。

「〇■■」というような音の食べ物の姿をしているに違いない…「〇■■■■■■■ーン」という名前に違いない…何だろう…。

ヒントは「おにぎりの具」。

正解は―「おかか」。実際、3番名に登場した怪人はおかかの姿だった。

喜ぶクックルンたち。しかし怪人は「おかぴょん」と名乗った。

クックルンから一斉にブーイングを受けるおかぴょん。確かに、なぜ「おかかかかかかかーん」じゃないんだ…と思うが、勝手に期待したのはこちら側で、名前を批判されるおかぴょんが少し可哀そうであった。

(2)「アイドルは大変だ」(2021年11月17日)

「小松坂8(こまつざかエイト)」という小松菜怪人のアイドルグループ。そして8(エイト)なのに7人しかいない。

恋愛禁止のアイドルグループ…坂…そしてこの制服みたいな衣装…と、私はあるアイドルグループを意識した名前や設定にじわじわきていたが、もう一つの意味も明らかになっていく。

放送日がタイムリーだったこともあり、少し話題になったらしい。

どこまで狙っていたが分からないが、もう脱帽であった。こまつな…ではなく、こまつセブン。小松松男と末永くお幸せに。


素晴らしいと思う点❷:タイゾーのお父さんが車いすに乗っていることも、マイカのお父さんがいないことも、特別なこととして描かれていない

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(画像中央がタイゾーのお父さん、エビオさん)

主人公タイゾーのお父さん(エビオさん)は魚屋さんを経営しているのだが、普段から車いすに乗って生活している。おそらく足が悪いのだと思われるが、そこについて何の背景も説明もされていない。本編を進めていく上での重要な意味も、今のところはなさそうだ。(ホイールチェアースピードレースに出場したという回もあるが、いくつもあるエピソードのうちの一つという感じであった。)

つまり、物語上、エビオさんが車いす生活者である必然性がないのだ。歩けるという設定だってよかったのに、車いすに乗っている。そこに深い意味がないことが、私はとても好ましいと感じた。

また、マイカのお母さんは優秀な発明家(自称、となっているが、タイゾーのお父さんの車いすを修理したり飛べる仕様にしたりすることができるので、実際優秀なのだろう)であり、マイカと二人暮らしをしている。お父さんは出てこない。マイカにお父さんがいないことも、特に説明されていない。

同じく、マイカにお父さんがいないことの必然性はない。正しい表現ではないのは分かっているが敢えて書くと、「特段深い意味を持たせないなら、いわゆる一般的と思われる家庭(両親がいて、子どもがいる)を描いておく」となりそうだが、そうでない。さらっと何気なく描写されているところが、すごくいいなと思った。

(なお、マイカのお父さんがいないのは今日現在のことであり、この先ストーリーが進んでいく際に、重要な意味を持って登場する可能性はある。ただ、現在のクックルンが開始して丸一年経ち、ムール姫の秘密のくだりが終わってもなお登場していないとなると、今後出てきたとしても後付けというか、当初なかった設定になるのだろうと思われる。)

(ちなみにタイゾーのお母さんがめったに出てこないのは、漁師で遠方の海に出かけていることが多いためである。)


まとめ:本当の「多様性の尊重」というのは、違いを違いとすら認識しないことだと私は思う


私が小さいころは、まだ「多様性」という言葉が浸透していなくて、学校では障害があったり複雑な家庭事情のある友達に対して、「優しくしましょう」と言われていた。そしてその「優しくする」という言葉に、どこか「他の友達よりも”特別に”意識して優しく接しましょう」というニュアンスが含まれているのではないかと感じていた。実際、当時の私はそう受け取り、そう行動してしまっていたと思う。

でも、最近は、「本当の『多様性の尊重』というのは、違いを違いとすら認識せずに、普通に、シームレスに接することなんじゃないか」と考えるようになった。

もちろん、生活したり行動したりする上で、不便だったり誰かの手が必要だったら手を貸すのは当たり前だ。そうでないところでは、必要以上に譲ったり遠慮したりしない。

足が不自由なことも、片親であることも、例えば、髪が長い・人見知り・運動神経が良い・手先が器用―そういった個性の一つと何ら変わりない。そういうことだと、私は考えている。

(そう考えるようになったきっかけは、トランスジェンダーの同僚との出会いであるが、その件はまた別のところでお話できればと思う。)


「車いす生活だけど、お父さんいないけど、それが何か?」と言わんばかりのクックルンの潔さに、改めてそんなことを考えされられた。

今期のクックルンの魅力は他にもたくさんあるので(マイカの人選観とか、人間味あふれる敵キャラとか、etc.)、また折を見て語りたい。


#多様性を考える



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