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📖#6 「人生は運ゲー!成功もお金も運次第なんてひどい!」江戸娘、狂った社会に物申す『独考』
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【前回までのあらすじ】
江戸時代後期の仙台藩お抱え医師であり、外国とのつながりを持つ父の娘に生まれた真葛ねえさんは、外国(ロシア)と日本の違いを知り、「日本だって外国に負けないんだからね!でも、お付き合い期間のある結婚制度はいいわね」と羨ましく思うのでした。
江戸社会の女性の窮屈さや、武家の厳しい財政事情や、外国との違いについてだったり、一人で色々と考えてきた真葛ねえさん。
こんなにも色々と考えて「日本女性のお手本になるの!」と清く正しく生きてきた真葛ねえさんなのに、どうして人生が上手くいかなかったのでしょうか。
これは、真葛ねえさんだけの悩みではないですね。
現代日本を生きる私たちも、同じようなことを悩んだのではないでしょうか?
「こんなに真面目にがんばってるのに、どうしてうまくいかないんだろう?」
「なんで、あの人は私よりも成功しているんだろう?」
その答えを真葛ねえさんは、ついに見つけたのです!
人生は運ゲーだ!
こうして色々考えているうちに、この世界には生きている時代のリズムがあると理解しました。
世の中では、儒教(古代中国の孔子がとなえた道徳的な教え)にそむいて、悪いことをする人が成功することが多くて、道徳を守って良いことをする人が、全然評価されずに不運なのはどうしてなのかと思っておりましたが、私の中で答えがでました。
それは、正しいことをしている立派な人は、時代のリズムに遅れてしまい、悪いことをしているずるい人は、時代のリズムを外さないからです。
どんなにチャンスを与えられても、世の中に評価されない人は、時代のリズムを外しているのです。
真葛ねえさん曰く、真面目に生きていても成功できない人がいる理由は、時代のリズムに乗っていないから。
時代のリズムに乗れた人は成功するけど、乗れなかった人は、どんなに立派なことをしていても評価されないし成功しないとのこと。
いやはや、もう、ねえさんのおっしゃるとおりですわ!
この部分を読んだとき、私は思わず膝をたたいてうなずいちゃいましたよ!
自分が生きている時代にピッタリと合っていることをすれば、大勢の人に受け入れられて成功するけど、時代に合っていないことをしても、その時代を生きる大勢の人には見向きもされませんよねー。
たとえば、既婚女性のメイク方法の一つだったお歯黒を、誰よりも上手に歯に塗ることが出来たところで、歯が白いことが美しいとされる現代日本では評価されませんが、毎朝お歯黒をつけていた江戸時代だったら、その特技はとても重宝されたと思います。
江戸時代にお歯黒塗り方講座をやったら、大金を稼げて成功出来たかもしれません。
でも、現代では誰もお歯黒にしていないので、真葛ねえさん的には「時代のリズムに合ってない」ことになります。
どんなに高い技術があっても評価はされないのです。かなしいですねー。
真葛ねえさんのこの結論をまとめると「この世は運ゲー」ってことです。
才能や実力も大事ですけど、成功するために最も大事なのは運だと、今から200年も前に、真葛ねえさんは気づいていたんですねー。
パナソニック創業者であり、経営の神様とされている松下幸之助さんの名言に「成功するかどうかの90%は運」とありますし、あのビル・ゲイツさんも運の力を信じていたそうです。
現代の成功者たちよりも先に、この世は運だと気づいちゃった真葛ねえさん、すごすぎますよね!
しかし、肝心のねえさんの運はというと……。
私の人生を振り返ってみると、私は時代のリズムより早過ぎて合わず、世間一般の人と同じレベルにはなれませんでした。
だから、私は世の中に評価されなかったのでしょう。
ねえさんが意識高い系の負け惜しみみたいなこと言ってるー!!
「俺は悪くない。俺の素晴らしさを理解できない一般人と時代が悪いんだ」みたいな。
いや、そうなんだけどね!
真葛ねえさんは賢くて文才もあって、エリート職を経験していて、国際的な考え方が出来る稀に見る才女で、この時代の一般女性より抜きん出た才能の持ち主でしたけども!!
そんな真葛ねえさんに、江戸時代のリズムは遅すぎましたけども!!
こんな堂々と「私に時代が追いついていない」と言えちゃうなんて、ねえさん、すがすがしいくらい自信たっぷりだなー。あっぱれですわ。
儒教の教えは、人の心を規則で取り締まっておけば扱いやすいから、心に縄をかけて指導するのです。
そんな教えをまったく気にしない悪者たちは、好き勝手に行動するので、儒教の教えを守る善良な人たちが引き下がらなければならなくなり、いつも損をすることになります。
儒教の教えを素晴らしいと思って学んでいると、いつの間にか自分の手で心を締めつけてしまって、時代のリズムに合わなくなるのです。
なんて、おそろしいのでしょうか。
これも真葛ねえさんのおっしゃるとおりですね。
悪い人たちは、常識や道徳に縛られることがないので、周りの迷惑なんて考えず、自分の主張を無理やりにでも通してしまう。
最近のクレーマーやモンスター●●も、これに当たりますね。
そうなると、常識や道徳を守る善良な人が我慢するしかないので、しわ寄せが来るのはルールを守った側という、なんとも理不尽!
「なんで常識を守った側が損をしないといけないんだ!」と、拳を振り上げて抗議したいですけど、これがまかり通っているのが世の中というもので……うーん、やりきれない。
しかも、非常識なことをし続けた人の方が成功する確率が高いんだから参っちゃいますよね。
「正直者が馬鹿を見る」って、ことわざはむかつくけど、悲しいことにそのとおりですよね。
最近は「真面目に生きるって損だよね」と考える方が一般的になってきているようで、社会全体がギスギスしていて、なんだかなーって感じです。
この世界に生まれた人間は、時代のリズムに合うことを選び、合わないことと関わらないようにすれば、一生おだやかに過ごせるでしょう。
仏の教えも儒教も、どちらも人が作ったものにすぎないのですから、自然とは違うのです。
絶対に動かないものは、めぐる月日と時代のリズムです。
これをつまらないことだと思う人たちは、真実を知らないのです。
これ、実は、かなりの問題発言なんです。
真葛ねえさんが生きた江戸時代は武士の時代であり、武士の精神には儒教が影響していました。
儒教で大切なことは、大きく分けて8つ。
みんなに優しくしよう(仁)
正義を守ろう(義)
礼儀正しくしよう(礼)
いっぱい勉強しよう(智)
主君には忠誠を誓おう(忠)
誠実でいよう(信)
親孝行しよう(孝)
年長者を敬おう(悌)
これが武士の基本ルール。
幼いころから、武士の子どもはこのルールを頭に叩き込まれます。
それを、真葛ねえさんは、
真葛ねえさん「人間が作ったこんなルールを守ってもしょうがないですよ。時代のリズムにあわせて生きることの方が大事なことです」
と言いきっちゃったんですね。
このことが、とある大作家先生をぶち切れさせることになり、真葛ねえさんが書いた『独考』は出版されず、世の中に出ることはありませんでした。
その大作家先生とは、江戸時代最高にして最大のベストセラー作家、滝沢馬琴先生!
代表作は『南総里見八犬伝』
28年もの長期連載だった大長編ファンタジーアクション物語です。
現代日本では知らない方が多いと思いますが、当時はそれはそれは大人気でして、たとえるなら少年ジャンプに連載中の『ONE PIECE』みたいな感じでした。
(余談ですけど『ONE PIECE』って、2024年で連載27年なんですね。あと2年続いたら『八犬伝』越えちゃいますね! すごい!)
そんな江戸時代の尾田先生もとい、馬琴先生から、真葛ねえさんの書いた『独考』はダメ出しを受けてしまいます。
詳しいダメ出し内容と、ぶち切れの経緯は次回にて。
ともあれ、真葛ねえさんはご自分で言ったとおり、最後まで時代のリズムに合わず、成功出来なかったのです。
続きます。
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