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📖#1 千年前の和風シンデレラストーリー『和泉式部日記』

皆様、こんにちは。
ごきげんいかがですか。
マリナデシコです。

昔の少女漫画に『花より男子だんご』という大人気漫画があるのですが、皆様ご存知でしょうか。

ご存知ない方に簡単にご説明しますと、貧乏な女子高生が超お金持ち学校に入学し、二人のイケメン御曹司に取り合われる胸キュン漫画の金字塔です。
(皆様は道明寺派ですか? 花沢類派ですか? 私は花沢類派です)

かしこい大和男子・大和撫子の皆様はお分かりかと思います。
「そんな夢のようなシチュエーションはありえない!」と。

しかーし! 私は見つけてしまったのです!
千年前の牧野つくしちゃん(『花より男子』の主人公)を!

そのモテモテのラッキーガールの名は、和泉式部いずみしきぶ

中流階級の娘だったのに、天皇の息子(皇子)に愛されました。
身分違いの恋だったので、一大スキャンダルになり、世間から非難されます。
二人は相思相愛でしたが、一年後に皇子が亡くなります。
あんなに愛した人を失って悲しんでいた和泉ちゃんのところにやってきたのは、恋人の弟!
皇子の弟なので、当然ながら、この人も皇子!

そうです! 和泉ちゃんは身分が低いのに、二人の皇子に愛されたのです!
なんなんだ、このチートなシチュエーションは!!

「私の人生こんなもんね」とあきらめて受け入れた平凡女子代表の菅原孝標女すがわらのたかすえのむすめパイセンに謝ってほしいです!

むすめセンパイが『和泉式部日記』を読んだら泡吹いて倒れるんじゃないでしょうか?
(和泉ちゃんの方が古いので、むすめセンパイは読んだ可能性あるかも?)
センパイ! 私は味方ですよ!

▼むすめセンパイが書いた千年前の平凡女子の日記『更級日記さらしなにっき』はコチラをご覧あれ


一つだけご報告を。
アイキャッチの美しい人物画は、私が好きな大正時代の画家、高畠華宵たかばたけかしょう先生の作品なのですが、題名は『清少納言』。
和泉式部ではないのですが、この頭良さそうで切なそうな表情が和泉ちゃんぽいかなーと、アイキャッチにしちゃいました。
 

和泉式部いずみしきぶさんプロフィール

まずは、作者である和泉ちゃんのプロフィールをご紹介。

  • お名前:和泉式部いずみしきぶ

  • 自分と皇子の恋を書いた『和泉式部日記』の作者。

  • 父:中流階級の受領ずりょう(地方官)。

  • 夫:和泉国(現在の大阪あたり)の受領。父と同じ職場の人。最初の夫が和泉国の役人だったので、和泉式部と呼ばれました。

  • 18歳で結婚し、娘を出産したものの、夫の心が離れてしまい離婚。

  • 24歳で皇子と恋人になり、26歳でその弟の皇子とも恋人になる。

  • 31歳で『和泉式部日記』を執筆。

  • 36歳のころに再婚したものの、生涯の恋人は少なく見積もっても10人以上。

  • 歌がとっても上手。めちゃくちゃモテるのでよく悪口を言われた

  • 『源氏物語』を書いた紫式部は同じ職場の同僚

『和泉式部日記』は和泉ちゃん最愛の皇子との切ない恋物語。
和泉ちゃんが26歳ころの一番激しい恋をしていたときの話です。

平安時代の貴族の恋愛において、身分が高いことはもちろんですが、歌が上手なこともモテポイントの一つでした。
歌が下手だったり、送るタイミングが悪いと減点されてしまいます。
和泉ちゃんは天才的に恋の歌が上手でした。

そんな和泉ちゃんのことを、紫式部先生と藤原道長さんは、こう言っています。

紫式部先生「歌はすごく上手で言葉のセンスも光ってるけど、男性関係が派手で恋多き女性よね」
藤原道長「浮気っぽい女だ」

とにかく、よくモテたようです。
さびしがり屋で、恋愛依存症だったのかも?

記録にのこっているだけで、10人以上も恋人がいた和泉ちゃんですが、この日記に書いた恋人は何年経っても忘れられない最愛の人でした。

そりゃそうですよね。だって、天皇の息子ですもの。
これ以上のVIPは天皇しかいません。

中流階級の女子がプリンス二人から愛されるなんて、夢のような話です。
少女漫画だって、ここまでのシンデレラストーリーは、なかなかないと思います。

『和泉式部日記』は「日記」となってますが、文章を見ると第三者視線の物語のようになっています。
なので、学者さんによっては「『和泉式部日記』は和泉式部ではない人が書いた『和泉式部物語』だ」と主張されているのだとか。
うーん、どっちなんでしょうか。

普通に読むと分かりにくいので、分かりやすいように変えちゃって紹介しますね。
(例:原文では和泉式部のことを「女」と書いてますが、ここでは「和泉」と変えてます)
ちゃんと知りたい方は、原文を読んでみてくださいね。

では、さっそく本編へ。


夢より儚いのは最愛の人との仲

日記は和泉ちゃんが身分違いの恋を失って一年が経ったときから始まります。

中流階級の人妻だったけど、夫から愛してもらえなかった和泉ちゃん。
やっと見つけた心から愛せる恋人は、冷泉天皇の息子、為尊親王ためたかしんのう(皇子)でした。

この皇子、実は『蜻蛉日記』で作者の藤原道綱母ふじわらのみちつなのははが嫉妬しまくった恋人の正妻の孫
藤原兼家と時姫の娘が天皇と結婚して産んだ皇子が、和泉ちゃんの恋人です。

▼『蜻蛉日記』はコチラをご覧あれ



身分が違いすぎるので、絶対に結婚は出来ないけど、二人は相思相愛でした。

二人の間に身分差は関係ありませんでしたが世間はそうはいかず、和泉ちゃんのことを悪く言うゴシップが流れました。

世間がなんと言おうとも、二人の想いが通じ合っていれば幸せでしたが、出逢ってから一年で為尊親王ためたかしんのうは病気で亡くなってしまいます。

悲しむ和泉ちゃんのもとに、一人の男が現れるところから本編スタートです。

夢は儚いものだけど、夢よりももっと儚いのは、和泉と宮様(為尊親王ためたかしんのう)との仲でした。
和泉が悲しみながら日々を送っているうちに四月十日すぎになり、一年前に彼が亡くなった季節がやってきてしまいました。
和泉だけがしんみりしているところへ、亡き宮様(為尊親王ためたかしんのう)に仕えていた少年がやって来たのでした。

和泉「どうして長い間、姿を見せなかったの。あなたのことは亡き宮様との思い出の形見だと思っているのよ」
少年「用事もなくお伺いしたら図々しいと思って遠慮していました。宮様が亡くなってから頼るところがないので、今は弟宮おとうとみや様(敦道親王あつみちしんのう)のところでお仕えしてします」

為尊親王ためたかしんのうとの幸福な日々を思い出して悲しんでいたら、早いもので一年経ってしまいました。

しんみりしている和泉ちゃんのところに少年がやってきました。
この少年は以前、為尊親王ためたかしんのうに仕えていましたが、今は弟の敦道親王あつみちしんのうに仕えていました。
(こちらの皇子も藤原兼家と時姫の孫です)

なんで今更になって、弟宮に仕えている少年がやってきたのでしょう? ただのご挨拶?

いえいえ、そんなわけがない。
皆様、お察しのように、ここから和泉ちゃんの「千年前のシンデレラストーリー」が始まります!


続きます。


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