【公開】ピアスキーマ療法LINEグループの活動〜事件と解決の抜粋と説明〜
スキーマ療法が他の療法と決定的に違うのは、セラピストとクライアントが「治療的再養育」の関係にあることです。
クライアントは幼少期、実際の親かから不適切な扱いを受け、子供なら当然持つはずの感情や欲求を満たせないまま大人になってしまいました。
それをセラピストがもう一度、適切に感情や欲求を満たして養育し直すことでクライアントに安心感や幸福感や安定感をもたらすことが治療的再養育的関係の目的です。
スキーマ療法には普通のカウンセリングのようにセラピストとクライアントが1対1でやるものと、複数のクライアントがグループでカウンセリングを受けるものとあります。
グループスキーマ療法では、先ほど説明した治療的再養育関係が、セラピストとクライアントだけでなく、クライアント同士でも作用します。
あるクライアントが姉になり、兄になり、父になり、母になる。そうすることで、クライアントたちが体験できなかった適切な家族を体験することができます。
クライアントたちはグループの中で家族のような関係を築き、そこでさまざまな感情や欲求を満たし直していきます。
私はスキーマ療法のセルフグループラインを主催していますが、先日のやりとりが、まさに、グループスキーマ療法の家族的関係だと思えたので、やり取りを一部抜粋して紹介し、最後にコメントをしようと思います。
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A:不条理な世界から抜け出すために、今すぐ首吊って死ぬか今すぐデパスを大量服薬して寝るかストレッサーである人物にわざと怒りを爆発させるかこのまま朝まで裸でクーラーの寒すぎる部屋で気絶するか悩んでます。
幼少期、中学生、高校生、大学生、元恋人のときに生じた負のモードの連鎖にハマっている自覚があります。
知ることに貪欲で、自己犠牲的で、攻撃的で、巻き込まれている。そして、裏切りを体験している。
B:どんな感じで悩んでいるかもしよかったら聞かせていただけませんか?
A:私はいますぐ意識を失えるほど疲れていて、頭が痛くて、歯を噛み締めていて、体が熱くて、食欲もなくて、裸でリビングに倒れたきり起き上がれず自室に行って寝れない。これに悩んでいます。
疲れたのは、ODしてしまうメンヘラ友人に関して被害者と私だけでなく、もう1人、メンバーを加えて、メンヘラ超会議を14:00-19:30まで行っていたからです。
メンヘラ超会議のためにこの1週間は資料作成に追われました。いろいろな知らなかった事実が明らかになり、「裏切られ体験」をしました。
B:大丈夫です!?救急車呼ぶ案件では!?
A:救急車は不要です。ロキソニンをてにすれば治りますし寝れば治ります。今疲れてるだけ。
B:なるほど…とりあえず体のことでは危険ではないのですね
B:めっちゃ頑張ったのに裏切られてしまったのですか…
A:会議のメンバーに裏切られたのではなく、メンヘラに関わる明らかになった様々な事実による裏切りです。
裏切られ体験を一気に大量に摂取したので、基本的信頼スキーマが消失しかけていて、不信スキーマが強烈に刺激され、裏切られという不正義への懲罰的なモードが動き出しそうなのを、とりあえずヘルシーな私がなんとか食い止めています。
A:自分の状態をスキーマ用語で語ると安心感があり、かなり死への欲求は減り、とりあえず早く部屋に行って寝たいくらいになりました。スキーマモニタリングはすごいなぁ。
B:メンヘラのことで衝撃的なことを知ってしまった、という感じ?
A:そうですそうです。
A:サポート資源はこのグループラインとモニタリング力、安心できる空間、そしてBさん。コーピングはモニタリング。
A:モニタリングをしていたらやや頭痛が和らぎました。モニタリングすごい。
B:よかったー
A:自分の状態に名前をつける、語彙力が大切だとスキーマ療法を初めてよくわかります。自分の状態に名前をつけることで状態の確認ができる。把握すれば対策も立てやすい。
B:どういうことをお知りになったかわからないですが、信じていたことが嘘だったとか、間違ってたとかに直面すると、本当に混乱しますよね…
A:嘘に敏感なので怒りが激しく、人間関係リセットモードに転化しそうですし、実際に転化してるところがあります。
人間関係リセットモードは、ときには有害だけど、ときにはヘルシーなモードだ思います。私のことを最も大切にしてるから。
B:状況によって日頃悪いスキーマでもいいことしてくれたりとかあるのは自分もですね
B:やっぱりスキーマは自分を守る為にできたものなんだなぁ…って思います
A:そのスキーマが適応的な環境があるから形成されたのだから、大人になった今でもそのスキーマが適応的な状態なら、そのスキーマやモードは不適応ではないんだと思います。だから、ヤングの不適応スキーマの説明はやや間違いですね。
大人になってからでも、そのスキーマが適応的な状態がある。だから、早期不適応スキーマは大人になっても残ってしまったスキーマという認識だとずれる気がします。
といいかけて、このような不適応スキーマが適応的になるのうな状態にいるのはすできスキーマとモードによる負のサイクルで自分で自分を環境設定してしまっているからかもしれないと思いました。
A:そして、スキーマ療法のことを考えてたら噛み締めが減りました。
私にとってはセルフでもスキーマ療法は重要なコーピングのようです。まさに、一生付き合うことになる療法ですね。
C:スキーマ療法を身につけたいまのAさんだったら、人間関係「全」リセットモードで突っ走るのではなく、人間関係組み替えモードとか、境界線引き直しモードとかに転換できそうな気がします。そして、それはヘルシーアダルトな行動なんじゃないでしょうか。
B:なるほど…スキーマを思いっきり変えるのでなく、少し調整していいものにしてしまおう!って考えでしょうか?興味深いです…
A:たしかに、そうかもしれません。境界線引き直しモードがしっくりきます。そしてそれはヘルシーだとも納得できます。ただ、過度な引き直しにならないように、適度に自分を監視するペアレントを作らないといけなさそうです。
C:あー、でも、いったん過度な引き直しをしても、そこで関係が切れなければ、お互い落ち着いた時に再引き直しが可能かも。相手のヘルシーさの程度によるかもしれないけど。
B:そういうよく作用することもある既存のスキーマは持ったまま悪く作用する状況とか、自分を傷つけてしまうではヘルシーアダルトに出てきてもらって、守る感じが理想になるんでしょうかね?
A:関係性の回復や調整には、ある程度距離を置くこともヘルシーさの1つだと思うので、相手がヘルシーであると信用できるなら、過度な引き直しをしてもいいのだろうと思いました。
そして、相手が信用できないような相手なら、その線引きは過度ではなく適切だったと後からわかるだろうと思いました。
どちらもそんなに自分が苦しまない行動に思えます。つまりヘルシー。
A:ヤングは不適応スキーマの消失を目標にし、伊藤は消失させた上でハッピースキーマの形成を目指していました。
今の私は不適応スキーマをもち、ハッピースキーマも持っている。ただ、不適応スキーマを消失させることは非常に難しく、カウンセリングでも放棄した。その代わりにヘルシーモードがメキメキと成長した。
A:まだ私のスキーマ療法は終わりじゃないと再認識させられた本日ですが、自分のスキーマやモードのコントロール力も把握できたのでよかったです。
A:転んでもタダでは起きない、とヘルシーな私が言います。今日私はひどく中核的感情欲求を破壊された。けれども、自分のスキーマ療法の身につき具合を把握した。これはいいことだと思う。
C:中核的感情欲求を壊されたら、怒ったり、泣いたり、動けなくなったりするのは、自由なチャイルドだったら当然だよね。
A:ああ、その発想は全くありませんでした。そうですよね、そうです。
私、怒ったり泣いたりしていいんですね。
すごくすごくホッとしました。
C:いいんだよ。安心できている子どもなら、思いっきり泣いたり、怒ったりすると思うよ。
A:つらかったね、泣いていいんだよ、怒っていいんだよ、疲れたね、休もうねって、グッドペアレントに言われた気持ちになりました。
C:うん、ほんとに大変だったね。
A:今の言葉ですごく安心して、すごく泣きそうで、泣けたら楽そうと思ったのに、すごくモードワークだ!と思ってしまって涙が引っ込んでしまいました
A:Cさんはグッドなお母さんみたいです
Cさんはグッドペアレントモードで傷ついたチャイルドモードの私を見守ってくれている、そんな気分です。
C:はは、たまには私にもそんなことができるのかな。
でも、上に書いたこと、全部、本当にそう思うよ。
A:少なくとも、今の私にとってはCさんはグッド名お母さんでした。
A:そして、全部が本当だというのが、ワークではなく、現実だと思えて、信頼できます。
A:今日は裏切られて不信スキーマが高まりましたが、今ここで、ここの人たちは信頼できるという、限定的な基本的信頼スキーマが再形成されました。ありがとうございます。
B:Aさんが危機を脱せたみたいでホッとしました。お先に寝落ちさせていただきます!
A:ご心配おかけしました。遅くまですみません。おやすみなさい。声を真っ先にかけてくれてありがとうございます。私もそろそろ部屋に戻れそうなところまで回復できました。
処方通りの服薬をして就寝しようと思います。本当にありがとうございました。
C:はーい、おやすみなさい。
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Bさんは傷ついて荒れているAさんの様子を見てすぐに答える優しい兄のようです。
状況を把握した上で、救急車が必要かどうかの確認をするなど、安全確保を第一に動けていて、とても健全な反応だと思います。
Aさんはトラブルに動揺しながらも、普段から習慣にしているモニタリングとグループラインを利用することで、自分の危機を食い止めようとする気持ちが働いています。衝動的な行動を止めようとする健全な行動です。
そしてAさんは自分自身の行動を分析することで最悪の事態を免れています。
それをみたBさんが「よかった」と言うことで、Aさんには感情的に寄り添ってくれる相手がいることを感じさせることができます。
簡単な一言ですが、Aさんを受容するのにとても効果的な一言です。
Cさんは危機を脱したAさん対して、Aさんの行いが誤りではないことを説明します。むしろ適切な行動であることを説明することで、Aさんの劣等感や失敗感を和らげる効果があります。
AさんはCさんの言葉で、自分がそれなりに適切な行動をできていることに納得します。一方で、
自分の中の満たされていた感情や欲求が破壊されたことを自覚し、自分の未熟さを語ります。
CさんはそんなAさんに、子どもなんだから泣いたり怒ったりしていいんだと説明します。
適切な行動をしよう、早く健全な人間になろうと焦るAさんは、自分のなかの満たされていない子どものことを思い出します。そして、自分のなかの満たされていない子どもを安心させて、自由に振舞っていいんだ、窮屈な思いをしなくていいんだと思い直します。
このことで、Aさんは自殺という大きな危機を脱しただけでなく、破壊されたはずの感情や欲求を満たし直すことにも成功し、さらに安心感を高めました。
Aさんにとって、Cさんはお母さんのように見えたようです。これがまさに、グループスキーマ療法の中で起こる、家族的関係です。
AさんはBさんという兄に心配され、Cさんという母親に安心感を与えられました。
このグループラインのいいところは、問題がほぼ解決したと判断したBさんが、自分から今日のラインをやめるというところです。
ずるずるとAさんのトラブルとトラブル解決に自分の生活を犠牲にするようなことはせず、適切なタイミングで自分の生活を大切に扱おうとしています。
Bさんのこの行動は自己犠牲や巻き込まれの危険を回避して、自分を守る意識があるとても健全な行動です。
そしてAさんは具体的にこれから何をするのかを伝えることで、冒頭で投稿したような危険なことはしないので安心して解散していいということを伝えます。
Cさんはそれに答え、3人はきちんと解散しました。
この、きちんと解散するというのはとても重要なことです。
セラピストとクライアントが1対1で行う対面式のカウンセリングでは、必ず時間の区切りがあり、ずるずるとお互いが引きずられることはありません。
しかし、セルフグループのライン投稿のやり取りでは、明確な終わりの時間は設定されていません。だから、きちんと終わりの宣言をしないと、いつまでも会話が続いてしまします。寝たいのにいつまでも会話から抜け出せない、という不適切な行動をせず、安全を確認してから場を抜ける宣言をすることで、1対1でのカウンセリングの終了の再現ができます。これは、参加者が自分の生活を犠牲にしないために必要で重要なスキルだと思います。
それを3人がきちんと行い、きちんと解散していることが、今回の事件の幕引きとしてとても良いと思いました。
ちなみに、クライアントとセラピストが子ども役、母親役になって会話をすることを「モードワーク」と言います。
モードワークは、実際にあった事件のモニタリングをもとにして、イメージで会話をするワークです。
スキーマ療法の中で特に他の療法と異なるとされるのがこのモードワークですが、執筆者であり、グループライン唯一のスキーマ療法経験者である私は、このモードワークは寸劇をやっているようであまり効果的に思えませんでした。
ところが、実際に起きた事件をリアルタイムで兄役母親役が登場して、イメージではなか実際の会話をすることのできるグループスキーマ療法は、たとえプロのセラピストがいなくても、モードワークよりもより強力な効果が得られるのだと確信しました。
スキーマ療法は専門家から受けようとすると金銭的にも地理的にも非常に難易度の高い療法です。だからみんな、セルフに走ります。でも、セルフだけではうまくいかない。それは、反応してくれる人が誰もいないからです。
私は今回のこのグループラインのやりとりを見て、セルフスキーマ療法のグループラインを作って心底よかったと思いました。
1人ではできない体験を参加者が経験できる。しかも、プロのセラピストとのワークより強力な仕方で体験できる。それは、グループの強みだと思います。
スキーマ療法に興味があるけれど、お金がない、近くにスキーマ療法のできるセラピストがいない、自分1人だと続かない、自分1人だとうまくいかない。
そんな、この投稿を読んでいるあなたに、私のグループラインにぜひ入って欲しい、体験して欲しい、見てるだけでも構わない。一言も話さなくても構わない。1人にならないでお金で絶望しないで、仲間を作って欲しいと、切に願います。
私はあなたの味方です。
サポートありがとうございます。みなさんのサポートは、スキーマ療法や発達障害、当事者研究に関する書籍の購入やスキーマ療法の地方勉強会、ワークショップ開催などの費用に充てたいと思います。