5.「令和の白拍子」 宝塚歌劇団の沼にハマる
「令和の白拍子」こと、花柳まり草(はなやぎまりくさ)こと、まりちゃんです。
早いもので5本目の記事となりました。
前回の記事を書く前に、ついつい読み耽ってしまったWeb漫画ですが、お陰様で読み終える事が出来ました。
読んで良かったと心から思います!素敵な作品と巡り合えて、本当にラッキーでした。
そう言えば、この「無料漫画をついつい読んでしまう」という案件について、友人がとても共感してくれました笑。
しかも、わざわざメッセージをくれたんですよ。
いやー、しみじみと嬉しかったですね。
想像するに、きっとその時の友人は「あ、コレ、私もめっちゃわかるわ〜」って思いながら文章を読んでくれた訳ですもんね。
共感するって、響き合うことだと思うんです。
遠くにいる友人が、私の文章を読んで、本題とは違うところだけれどちょっとクスッとしてくれた。
それはつまり、私の心と友人の心がちょっと触れ合って、擦れて、軽やかな音色を奏でた…
超絶大袈裟かもしれませんが、私にはそんな風に思われました。
という訳で、前回の続きから参りましょう!
(前回の記事はコチラ)
■この人は、何でこんなにお目々が大きいのだろう
小学校の時の担任の先生から、姿月あさと様率いる宙組公演「エリザベート」のチケットを譲ってもらった私。
眠い目を擦りながら、有楽町駅前にある「1000days劇場」に向かいました。
その時、東京宝塚劇場は建て替え中で、仮設の劇場が有楽町駅前に建てられていたのです(今は無印良品とLoFtの建物になっています) 。
劇場に入ってまず感じたのが、「お客様がとてもウキウキ&キャイキャイ&キラキラしている」ということでした。
その時は「へぇ…」と割りと冷めた目で見つめていたと思います。
「私、劇団四季のファンだし」と笑。
その数ヶ月後には、自分自身も興奮しながら劇場に足繁く通うことになるとは露知らず…。
「エリザベート」は、今や日本を代表するミュージカルで、宝塚だけではなく東宝ミュージカル、つまり男女混合ミュージカルでも度々上演されています。
当時、私が観た宙組公演の前にも、雪組と星組で上演されていました。
短い期間に2回目の再演ですので、どれだけ人気がある作品であるかが分かります。
この作品は、オーストリア=ハンガリー帝国の皇后エリザベートをヒロインに、彼女の波乱に満ちた生涯とハプスブルク家の没落、そして彼女を愛し続ける「死(トート)」によって紡がれる、壮大な愛の物語です。
物語の冒頭に、エリザベートを暗殺した「ルイジ・ルキーニ」という男が狂言回し的な役割で登場するのですが、その時、私はものすごい衝撃を受けました。
「ヒゲをはやして男の人にしか見えないのに、この人は、何でこんなにお目々が大きいのだろう」と。
エリザベートの一番最初の登場シーンは、彼女の肖像画が出てまいりまして、その絵の部分がドアの様にパカッと開き、そこから幼少期の彼女が登場する、という演出。
が、その時にも思いました。
「うわ、めちゃくちゃかわいい。それにしても…この人は、何でこんなにお目々が大きいのだろう」と。
何はともあれ「トート閣下格好良い!トート閣下が待っていていくれるなら、すぐ死んでもいい!」と、とても興奮して初観劇を終えたと思うのですが、その時の私の心の大部分を占めていたのは、やはり「この人たちは、何でこんなにお目々が大きいのだろう」という思いに尽きていたと思います。
…本当にひどいです。
土下座したいくらいです。
自分の中では「劇団四季ファンである」という自負も強く、「オ、オペラ座の怪人だってすごいもん!」という具合に、謎の対抗意識を燃やして帰ったことも覚えています。
■見比べる、そして、沼に落ちる
そんな私が、どうして宝塚ファンになったのか。
さて、記念すべき初観劇後、小学校の時の担任の先生が大量の「宝塚ビデオ」を送ってくださいました。
そう、当時はまだビデオでした。懐かしい。
その中には初演の「雪組版エリザベート」と、再演である「星組版エリザベート」のビデオも入っていたのです。
やはりちょっと興味がありまして、まず雪組バージョンから拝見させて頂きました。
その時のトップスターは一路真輝様、そしてエリザベート役は私が拝見した宙組公演と同じく、花總まり様でした。
「あれ?同じ作品なのに…しかも同じヒロインの方なのに、印象が全く違う」
「トート役の解釈はもちろん、メイク、お衣装も全然違う!!!」
当時は初演です。
花總様も初役ですから、演じ方が違っていました。一路様のトートも姿月様と全く違いますが、「THE貴公子」という風情でとても魅力的でした。
「同じ作品なのに…しかもエリザベートは同じ花總様なのに!役者の皆様の役作りによって、そして組のカラーによって、何もかもが全く違って見える!」
面白い!!!!!
すぐに星組版も再生しました。
この時の星組トップスターは麻路さき様。
エリザベートは、もともと本場ウィーンで上演されていたミュージカル。
歌のナンバーがとても難しいのです。
雪組の一路様も、宙組の姿月様もシンガーとして名を馳せているスターさんで、それはそれは素晴らしい歌声で朗々と歌い切ってらっしゃるのです。
ただ、麻路様は、決して歌が得意なスターさんという訳ではなかったのです。
しかし、再生ボタンを押した私は鳥肌が立ちました。
麻路様は、歌っていらっしゃいませんでした。
麻路様は、語っていらっしゃいました。
トート閣下を演じているのではなく、トート閣下そのものでした。
随所に見られる細かい工夫。
ちょっとした手の差し伸べ方。
目線のもって行き方。
彼女の腰を抱いた時の力の入れ具合。
その仕草のひとつひとつに、色気と、エリザベートに対する深い「情愛」が垣間見える。
もう、完全に虜になりました。
ご自身の短所を覆い尽くし、むしろ短所をその人独自の「味わい」に転化してしまうまでの徹底的な役作り。
そんな麻路様をはじめ一路様と姿月様が率いる、三組三様のパフォーマンスの違いにこれほど魅せられるとは…。
「見比べる」ということをして初めて、組ごとのカラーやトップスターさんの芸風の違いを分析して観劇する、という視点が生まれました。
やばい、宝塚、楽しい。
ここにきて、はじめて私は「宝塚」という沼に嵌ることになるのでした。
■「劇団四季は無理でも、ここなら行けるかもしれない」…根拠のない確信
それからは、担任の先生が送って下さるビデオを千本ノックのように観まくる日々。
大好きだったのは、星組の麻路さき様と白城あやか様ペア。
そして麻路さんの前に星組トップスターだった紫苑ゆう様。
月組トップスターの真琴つばさ様。
とにかく観まくりました。
いつしか、「エリザベート」は全ての場面と全ての役を一人で演じられるくらいになっておりました。
しかも、それぞれのトップスターさんによる「演じ分けの癖」までも真似できるようになりました。
宝塚が好きという同級生を巻き込み、教室で「闇が広がるごっこ」を繰り広げたこともありました。
(注:「闇が広がる」は皇太子ルドルフとトートによるカッコ良すぎるデュエットナンバー。男同士で手を繋ぎ、互いに引っ張り合う振付が特徴的)
物真似をしている時、めちゃくちゃ楽しかったです。
そんな私が思ったことは何か。
「劇団四季は無理でも、ここなら行けるかもしれない。宝塚の舞台に立ちたい…いや立てる!」
全く…
これ、私が合格したから言えるお話ですが、この時に口に出していたら、なんて不遜な考え方をする奴なんでしょうね。
でも、本当に、ストン!ってそう思ったのです。
根拠のない自信が、何の前触れもなく、急に湧き上がってきたんです。
なぜかと問われても、こればっかりは原因が分かりません。不思議なものです。
その衝動が湧き上がった瞬間、家族に
「私、宝塚に行く」
と宣言してしまいました。
だってそれまで、バレエも声楽も習ったことがなかったんですよ。
しかも、バレエを始めるなら、もう遅いと言われるくらいの年齢です。
歌だって、特別得意ではありませんでした。
何なら、おばあちゃんには「音痴」と言われて育ちました。
家族も宝塚のことは全く知りません(何なら、歌舞伎しか観ていません)。
普通に考えたら、合格なんて無理です。
でも、芽生えた確信は消えません。
初めて、自分から何かをやりたい、と家族に主張した瞬間でした。
うちの祖父は医者なのですが、それを継ぐことは特に強要されていませんでした。
ですが、勉強は疎かにするなと言われて育てられていましたから、周りの大人たちには淡い期待があったかもしれません。
しかし、今でも感謝しているのですが、家族は誰一人、私の突拍子もない申し出に反対をしませんでした。
進路に迷う時期に差し掛かるだいぶ前に、私は選び取ってしまいました。
大学ではなく、劇団四季ではなく、宝塚歌劇団を。
いよいよ、お稽古まみれの学校生活が始まります。
さ、本日はこれ切り…。
是非、次回も逢いにいらしてください♪
まり草
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