17.「令和の白拍子」 宝塚音楽学校へ〜殺気立つ高校時代(初受験編その3)
「令和の白拍子」こと、花柳まり草(はなやぎまりくさ)こと、まりちゃんです。
前回の記事では、初めての宝塚受験で三次試験まで駒を進めた模様をご紹介させて頂きました。
三次試験の面接の直前、とある事がきっかけで急に「どこか冷めた自分」が登場してしまったまりちゃん。
面接の課題である即興ダンスの時に、「格好つけ野郎」のダメダメな一面が炸裂し、思った様に自分の力を出し切る事が出来ませんでした。
運命の合格発表の朝を迎えたまりちゃん…果たして彼女の運命やいかに。
それでは17本目の記事参りましょう!!
■合格発表
三次試験の合格発表は、宝塚音楽学校の入り口の前に掲示板が設置され、そこで発表されます。
その異様な光景は、度々ニュースにもなっています。
バタン!と二つ折りの掲示が開示され、しばしの沈黙後に「キャァ〜〜〜〜〜〜〜」という歓声とも悲鳴とも言える声が沸き起こる。
そう、あれです。
テレビでも見た事があるそんな光景に、その時まりちゃんは立っていました。
本人的には、まるで夢を見ているみたいで「現実感ゼロ」です。
そして、分かっていました。
結果を見るまでもなく、自分でも何となく、分かっていました。
結果が発表されてから自分に襲ってくるであろう「衝撃」に耐えるため、私の弱っちい生存本能は全力で危機を知らせていました。
「耐えろ耐えろ耐えろ耐えろ耐えろ耐えろ」
と。
でも、どこかで「このヴィジョンは私の思い込みであって欲しい」という気持ちも拭う事が出来ませんでした。
色々な思いが身体中をかけ巡り、死んだ様な目をしていました。
と、その時
…バタン!!!
運命の音が響き渡りました。
「きゃあぁぁぁぁぁーーーーーー!!!!」
「あった!!!!!」
「ない…落ちた…落ちましたぁぁぁ!!」
阿鼻叫喚の地獄絵図とはまさにこの事。
現場は異様な興奮と歓喜と落胆と汗と涙で、もみくちゃのぐっちゃぐちゃでした。
■分かっていた事
「私の番号はありませんでした。落ちました」
そう母に告げる時、バレエの朝比奈先生に告げる時、声楽の恵理子先生に告げる時、声を出そうとしてもうまく言葉が出てこず、自然と声が震えてかすれていました。
堰を切って流れそうな、もののけ姫に出てくるドロドロのたたり神みたいになっている自分の気持ちをグッと抑えるのに精一杯でした。
会場で私は泣いたのか、青ざめたのか?
…全く覚えていません。
何なら、どうやって東京に帰ったかも全く覚えていません。
完全に、記憶が抜け落ちています。
先に合格している「なっちゃん」に追いつけなかったこともショックでしたが、何より面接の時の自分を殴り殺してやりたくなりました。
カッコつけてもいいことはない。
他の人のことなんて関係ない。
なりふり構わず、どうして自分のエネルギーを出し切る事が出来なかったのか。
とにかく、悔やんでも悔やみきれない。
自分の限界を突きつけられた様な気がしました。
高校3年生まで受験資格がある訳ですから、私にはあと二回のチャンスが残されていました。
しかし、16歳のまりちゃんは決めたのです。
「次の高校2年生の時の試験を、ラストチャンスにしよう。高校3年生の時には、大学を受験しよう…いや、何なら高校2年生で落ちたら、死ぬ」
今だったら思います。
「とりあえず落ち着け、まりちゃん」と。
ただ、それくらい悔しかったし、追い込まないと自分という人間はダメだと思ったのでしょう。
あ、一つだけ覚えている事があります。
それは帰り際に武庫川(宝塚市内を流れる川)を眺めながら…
「絶対、私はこの街の人間になるからな」
と心の中で啖呵を切ったのです。
確実に、顔は般若化していました。
■ネコザメさんの待つ東京
皆様、お忘れではないでしょうか?
そう、私の初恋のお相手であるネコザメさん。
彼もとても心配して私の帰りを待っていてくれました。
今振り返ると、本当にすごく有難い事です。
でも東京に戻ったばかりの私は、完全に、「リベンジを誓った般若」と化していました。
「初恋なんかでフラフラ浮かれていた自分が甘かったのではないか」
「ネコザメさんにメールを送る時間があったら、コールユーブンゲンのお稽古をした方がいいのではないか」
恐ろしいかな、まさに極端な強迫観念に囚われていたのです。
「ゼロか、100か」
そんな極端な思考方法を持っていた私。
本当に不器用で生きづらい人間です。
実は、長らくこの思考方法が私を支配しており、最近、ようやく生き辛さが少しずつ解消されてきております。
ネコザメさんは、その優しさゆえに「もし大学に行く事を選んだら、君が大人になるのを待って、結婚も考えたい」と言ってくれていたのです。
きっと、「宝塚音楽学校が不合格だったとしても、変わらずに君のことが好きだよ」という思いやりのある言葉だったと思うのです。
ですが、この時の般若まりちゃんはどう思ったか。
「いや、私はここでは(貴方では)終われない」
…開いた口が塞がりませんが、本当に、心から、そんな不遜な事を思いました。
ひどい女です。
やな女です。
全然可愛くない。
でも、それだけ意識的に心を般若にしないと「ポキッ」と折れてしまいそうだったんだと思います。
これも、弱っちいまりちゃんの生存本能のなせる技です。
優しいネコザメさん。
あれだけ好きだったネコザメさん。
でも、般若まりちゃんは、そんな大切なネコザメさんと距離を置く決意をしました。
何かを得る時には、何かを失う。
よく言われる事です。
実際にそんな法則はない、と現在の私は心から思うのです。
今だったら、全てを手に入れたい笑。
ですが、この時のまりちゃんとしては、半ばそんな言葉に従うつもりで、意識的にネコザメさんの手を離しました。
すごく自分勝手です。
ごめんなさい。
でも、あの時の決断は間違っていないと思います。
人を好きになる事を教えてくれた人。
16歳という、脆い宝石みたいな時間を一緒に過ごしてくれた人。
あの切なくて懐かしい夏の夜の匂いを、私は今でも覚えています。
…般若まりちゃんは17歳になろうとしていました。
ということで、本日はこれ切り…。
是非、次回も逢いにいらしてください♪
いよいよ受験生時代も佳境!
高校二年生編に突入です!
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