18.「令和の白拍子」 宝塚音楽学校へ〜殺気立つ高校時代(決勝戦編 その1)
「令和の白拍子」こと、花柳まり草(はなやぎまりくさ)こと、まりちゃんです。
前回までの記事で、高校1年生のまりちゃんに起こった諸々の事件をまとめさせて頂きました。
初めての受験、そして突きつけられた不合格という文字。
初恋のお相手との出会いと別れ…。
もう少しコンパクトにまとめる予定だったのですが、思わぬ長編となりました。
今回からはいよいよ「決勝戦編」。
しかし、受験に対して気合が入り過ぎて、たまに変な方向に暴走してしまうこともしばしば。
そんな暴走般若娘まりちゃんと化した、高校2年生の頃のお話です。
思い出すにつけ、また当時一緒に過ごした方たちの証言を聞くにつけ、「やらかした」エピソードしか見つかりませんでした…。
という訳で、本編にて「やらかしエピソード」を中心に据えながら、決勝戦編をまとめていきたいと思います。
それでは、18本目の記事参りましょう!
■17歳の暴走般若娘のやらかし話〜エピソード1
初めての宝塚受験は、見事!不合格。
高校3年生になったらキッパリと大学受験に方向転換しようと心に決めたまりちゃんにとって、17歳となる今回が最後の受験チャンスでした。
とにかくもっと実力をつけることはもちろんですが、「面接対策」で何か出来ることはないかと考えました。
そのためにも、面接の時に堂々と話せる様な「ネタ」を作らねばならぬ、と思いました。
そんな風にアンテナを立てていたら、絶好の機会が向こうからやってくることになるのですが、これはまた別の機会で…。
「最後のチャンスの年」ということで、元々吊り上っている細い目がますます吊り上がり、お稽古の時は「般若」の様な形相になっていたまりちゃん。
バレエのレッスンの時に朝比奈先生からご注意されると「あぁ、私はなんて出来が悪いんだ!」と般若になり、ご注意されなけばご注意されないで「あの子ばっかり注意される!」と般若になっていました。
朝比奈先生にとっては本当に扱いにくい生徒だったと思います。
今の私のところにこんな弟子がいたら、正直、すごく嫌です。
いまだに、朝比奈先生から「笑い話」として聞かされるエピソードがあります。
その頃の受験生の中心グループは私を含めた仲良し五人組(12本目の記事参照)。
大好きな先輩方は皆様卒業され、スタジオはまさに五人の天下。
ライバル意識はあったものの、お互いに助け合いながらレッスンに励んでいました。
しかし、それまでの先輩方は皆様とても優秀で、初期の私たちはそんな先輩方と比べられている様にまりちゃんは感じていました。
しかし、まりちゃんにしても他のメンバーにしても受験に対しては超必死ですし、側から見ていても、頑張っていることが先生には伝わりづらいんだろうな、と思われる人もいました。
しかし、先生からしてみれば、総じて「頑張りが足りない」という風に見えていたんだと思います。
それが悔しかったまりちゃんはどうしたか。
先生にお手紙を書きました。
「みんなそれぞれに頑張っていると思いますし、先輩方と比べられるのは辛いです。伝わりづらいと思いますが、〇〇ちゃんだってすごく良くなっているし頑張っていると思います」
しかも、可愛い便箋に書いたとかではなく、味も素っ気もないレポート用紙に書いて提出したそうです。
自分で手紙を書いたことは覚えていたのですが、内容であったり、レポート用紙に書いたということは、最近になって朝比奈先生からお伺いしました。
五人組と朝比奈先生を囲んでお食事会があったのですが、その時に笑。
「自分はこれだけ頑張っているということより、他の子が頑張っていますという事を主張して書いて寄越すあたり、まりえっぽいわね」
と先生が笑いながらお話しして下さいました。
もし、現在の私がそんな手紙を生徒さんからもらったら、「どういうことですか!?」と怒りながら、相手と本気で意見をぶつけ合う思います。
しかし、そんなお馬鹿な17歳まりちゃんを受け入れてくださった、優しい朝比奈先生。
その話を聞いた瞬間、とりあえず朝比奈先生に平謝りしました!(他の4人は大爆笑していましたが…)
とにかく、この「レポート用紙お手紙事件」は先生の中でも忘れ難い出来事となっていらっしゃる様です(度々突っ込まれます)。
本当に申し訳ありませんでした。
当時の話に戻しますが、その後の五人組はレッスンの成果が徐々に見え始め、先生とも確固たる信頼関係が築かれていきました。
そして、今となっては「最高の受験生」とのお言葉をいただける様にまでなりました。
■17歳の暴走般若娘のやらかし話〜エピソード2
冒頭にも書きましたが、バレエのレッスン中は、かなりセンシティブになっていたまりちゃん。
幼少期から習っていた日本舞踊は個人稽古だったので、そもそも集団稽古に馴染みがなかったせいもあるのでしょう(言い訳)。
朝比奈先生からご注意をされてもされなくても、どちらにせよ目が吊り上がっていました。
そこには、自分の不甲斐なさに対する「自己否定の気持ち」と、他の受験生負けたくない!という「ライバル心」がありました。
それに、大好きな朝比奈先生から見て「1番の生徒でありたい」「認められたい」という、もうほとんど恋に近い思慕の気持ちがありました。
そこに「合格したい」という崖っぷちに立たされた様な気持ちがあり、それらの様々な思いが鬩ぎ合い、混じり合い、ドロドロと化していたので、自分でも自分が制御不可能だったのです。
今からお話しするエピソードは声楽の關根先生に言われて思い出したのですが…なかなかひどい事件がありました。
当時の休日はバレエに行ってから声楽に行く、というのがお決まりのパターンだったのですが、關根先生のお家に入るたび「あぁ、今日もバレエで何かあったな」というのが丸わかりな顔をしていたそうです。(今でも私は「顔で喋る女」と言われたりします。とにかく、気分がわかりやすい女、それがまりちゃんです!!)
以前のエピソードでもお話ししましたが、声楽のお稽古の前に、必ず關根先生はお茶を振る舞って下さいました。
そこで、その日にあったお稽古のことやら宝塚スターさんのことやら母との不和などをバーーーーッとお話ししていました。
話すうちに私の般若顔が笑顔になっていくらしく、先生はその時を逃さずにお稽古を始めて下さっていました。
まりちゃんとしても、關根先生のお宅はまさに「避難所」。
ダークサイドまりちゃんは顔を潜め、ライトサイドまりちゃんとして振る舞うことが出来るのを自覚していました。
そんなある日、關根先生宅に朝比奈先生からお電話があったそうです。
「まりえが稽古場の壁を蹴った」
「私の気持ちを分かってくれるのは關根先生だとけ、と言っている」
關根先生は「あ〜あ…」と思われたそうです。
しかもこれ、本人としては全く違う風に記憶していたのです。
確かに、壁を蹴ったのは覚えています。
でも、まりちゃん的には他の人に見えないところ、つまりお稽古場の外の灰色の壁を蹴っていた様に記憶していたのです。
でも、どうやら違っていました。
そもそも、壁を蹴っ飛ばしている時点でだいぶアウトだと思うのですが、そんなことまで口走っていたなんて…。
これは完全に朝比奈先生に対する恋慕の裏返しですね。
「私だけを見て!」という気持ちと、「こんなできない自分は見てもらえなくて当然だ」という自己否定がうまい具合に働いたのでしょう。
そして、制御不能となった私は、壁を蹴ったのでしょう。
…もう、こんな17歳いやだ。
暴走しちゃう中学二年生のシンジくんと同レベルじゃないですか(エヴァンゲリオン参照)。
稽古場の空気を凍りつかせ、大好きな朝比奈先生にご迷惑をかけ、優しい關根先生には気を遣わせ…当時は必死で何も見えませんでしたが、沢山の人に迷惑と心配をかけながら成長させて頂いたのだと、身に染みて思う今日この頃でございます。
■ヤンキー優等生
もちろん、両先生も笑いながら当時のエピソードをお話しして下さいました。
思うに、「優等生でなければならない」とか「人様が期待する様な自分であらねばならない」とか「清く正しく美しくあらねばならない」といった枷と鎧をつけながらずっと生きていた様な気がします。
もちろん、そうすることで得たものも沢山ありますし、人様から褒められたりして優越を感じることもありました。
とういう訳で、そんな風に格好つける自分が嫌いという訳でもありませんでした。
でも「やらかしエピソード」を今になって先生方や周りの方々から聞くたびに、自分は無理をしていたのだということに改めて気がつきました。
本当は私は「精神的ヤンキー」だったのです。
「クソガキ」だったのです。
何かに反抗したい時、それはおかしいと思う時、人様と真っ向からぶつかりたい時、そんな時も沢山ありました。
たとえ目上の先生方だろうが、絶対的だと思われている規則に関しても「おかしいのでは」と思うことだって沢山ありました。
でもそれらの気持ちを抑え込んでいたのです。
なぜなら「優等生」である方が楽だったし、そうあることを周りからも期待されていたし、何よりも「劣等生」である自分が許せなかったから。
だから、抑え込んでいた気持ちの矛先が自分に向かって「過剰な自己否定」に走ってしまったり、たまにそれらが爆発すると稽古場の壁を蹴ってしまう様な事態にまでなっていた気がします。
こういうことに気がついたのは、実は2、3年前です(気が付くのが本当に遅い!!)。
だからそれまでは、すごく無理をして、仮面を被って生きてきたんだろうなと思います。
ですから、最近は一つずつ重い鎧が剥がれていく様な感覚です。
歳を重ねるにつれ、楽になっていくことや、新たになされる発見も多いです。
「歳を重ねることが楽しいな」と思える様になってきた、この頃のまりちゃんであります。
もう少し早く気がつきたかった!!!!!ですけれどね。
ということで、本日はこれ切り…。
是非、次回も逢いにいらしてください♪
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