16.「令和の白拍子」 宝塚音楽学校へ〜殺気立つ高校時代(初受験編その2)
「令和の白拍子」こと、花柳まり草(はなやぎまりくさ)こと、まりちゃんです。
前回、初めての「宝塚音楽学校受験」に臨んだまりちゃん。
東京で行われた一次試験では、緊張しながらも淡々と試験課題をこなし、無事に帰路につきました。
合格発表は試験翌日、電報にて発表。割と長い首を、極限まで長くして結果を待つまりちゃん。
果たして、運命の試験結果やいかに?
それでは16本目の記事、参りましょう!
■電報ヲ、マツ
一次試験を終えてから、郵便屋さんが電報を届けてくれるその瞬間まで…何もすることは出来ず、ひたすら「待つ」ことしか為す術のない時間。
実は、この時間が、試験自体よりも何倍も辛い時間でした。
もちろん、その日の夜はオチオチと眠ることが出来ませんでした。
ようやく寝たかと思えば、いつもよりだいぶ早い時間に起きてしまい、まだ早すぎるなぁと寝直したりしました。
そうすると、今度は逆に寝坊してしまいました。
眠い目を擦りながらモゾモゾと布団から這い出し、洋服に着替え、ご飯を食べて、いつもの朝の時間を過ごしました。
ですが、その最中はまさに「心ここにあらず」。
普通に動いていても、まるで水の中を歩いているような感覚でした。
ご飯を食べた後、やることがなくなってしまい、部屋の中にじっとしているのが居た堪れなくなりました。
仕方がないので、ベランダに座っていました。
「郵便屋さんはいつやって来るのだろう…」
ただただその一点のみを考えながら、何をする訳でもなく、ボーッと外を眺めていました。
その日は何となくどんよりと曇っていて、自分を包む空気が灰色だったことをとてもよく覚えています。
その時。
ガラガラ!と我が家の玄関扉を開ける人の気配がしました。
そして「ピンポーン」とチャイムが鳴りました。
そう、郵便屋さんが来たのです。
私は急いで玄関に飛んで行き、震える手で郵便屋さんから電報を受け取りました。
急いで封を開けて中を見てみると、そこには
「合格」
の二文字がありました。
「うわわわわあああああああああああ!!!!!」
と奇声を発する私に、母が「おめでとう」と言ってくれました。
こうして、私は次なる二次試験と三次試験を受けるために、本拠地である兵庫県宝塚市に乗り込むのでした。
■ムラ〜タカラヅカの本拠地へ
ところで、「宝塚」って、地名なんですよ。
私はファンになるまでその事を知らなかったんですが、大阪と六甲山の間にある小さな温泉街、それが「宝塚」なんです。
意外とこの事をご存知ない方が多く、「宝塚歌劇団の本拠地って兵庫県なんですよ〜」とお話しすると、割とびっくりされることが多々あります。
私が宝塚ファンになってから頻繁に通っていたのは、もちろん日比谷にある「東京宝塚劇場」。
兵庫県宝塚市栄町にある「宝塚大劇場」には一回も行ったことがありませんでした。
という訳で、私は受験の時になって初めてその本拠地である兵庫県に乗り込むことになったのでした。
試験会場は宝塚大劇場に隣接する「宝塚音楽学校」でした。
初めて足を踏み入れるそこは、私にとってはまさに「聖地」。
ここの学校の制服を死ぬほど着たい。
そして、ゆくゆくは大劇場の舞台に立つ。
その欲望・野望のためだけに、私は今、生きている。
欲しくて欲しくてたまらない物を実際に目の当たりにし、「ついに私もここまで来たのか」と思うと、背筋に電気が走ったように思わず身震いしました。
■二次試験、そして三次試験
同じバレエ教室からは、私と仲良しのあやこが二次試験に進むことが出来ました。
二人で肩を寄せ合って、「日本舞踊教室」で順番を待っていました。
もちろん、本科生である「なっちゃん」も試験会場にいてくれて、一次試験の時の様に心配して面倒を見てくれました。
ただ、やはり、会場にいるのは一次試験を生き残った女子たちの集まり。
周りを見渡せばみんな可愛い子たちばかりですし、それだけではなく、一筋縄ではいかない芯の強さをひしひしと感じました。
まりちゃんはと言いますと、二次試験のバレエと声楽の実技は淡々とこなすことが出来た様に思います。
これまた、上手くいっている時というのは、意外と記憶に残らないものなのです。
しかし、問題は三次試験の面接です。
面接って、当日にならないと何を聞かれるか分かりませんし、技術的なこと云々というよりも「素に近い自分」をアピールしなければなりません。
学校の試験勉強でも何でも、準備を入念にして物事に当たりたいまりちゃんの様な不器用人間にとって「対応力」とか「瞬発力」とか「臨機応変さ」という力が求められる、こういう面接試験はかなり恐怖なんです。
もちろん、事前の模擬試験でも面接の対策はしましたが、当日になってみなければ、実際に何を聞かれるか、何をさせられるかは分かりません。
ちょっと横道にそれますが、舞台ってライブのエンターテインメントですからそういった力はとっても大切なんです。
だから私は、いまだに出番直前まで緊張しています。
もとい、緊張というより「畏れ」ですかね。
ただ、顔だけはしらっとしているので、「緊張とかしなさそう」とよく言われるのですが…。
ただ、歌劇団員になってからは「そういった諸々の不確定要素に対する畏怖の気持ちもひっくるめて、この瞬間、ライブを楽しもう」という図々しさは身につきました。
話を元に戻します。
そんな苦手な面接試験の前、まりちゃんはひたすら深呼吸しながら順番を待っていました。
その順番待ちの列の中で、私の前に並んでいた受験生の方と本科生の皆様がお話をしていました。
すると、突然、その受験生の方が泣き出したのです。
「大丈夫かな、すごく緊張するけど、宝塚が大好きだから、絶対に受かりたい」
何を言っていたのか詳細は忘れてしまったのですが、とにかく、大きくて綺麗な瞳からハラハラと涙を流しながら、そんな様な内容を言っていたと思います。
そんなしおらしい姿に、本科生の皆様は一様に心を打たれたらしく…
「すごく純粋なんだね」
「かわいいね」
「絶対に大丈夫だよ!」
とお言葉をかけていらっしゃいました。
そんな漫画の一コマみたいな現場を隣で見ていたまりちゃん。
皆様はお気づきかもしれません。
私、noteに文章を書きながら今更ながら改めて気がつかされたことがあるのです。
それは、「自分は、意外と物事を(自分自身も含めて)すごく俯瞰して見ていて、いちいち分析しているんだな」という事。
そんなまりちゃんがその光景を見て思ったこと。
それは、
「うわぁ…」
です。
そう、ドン引いちゃったんです。
つまりですね、私という人間は元来、「自分はこれだけ頑張ってます」的な事とか「自分の弱み」を極力他の人に知られたくないタイプの人間なんです。
実際そんなに頑張れていないし、やり切れていない事ばかりなのでそう思うのですが、「何かを一生懸命やっている姿」とか「出来ない姿」とか、そういう姿を周囲に晒したくないんです。
(今はだいぶ晒します。「あー、もう無理!!できなぁーーーい!」って笑)
要するに「みみっちい、カッコつけ野郎」なんです。
「自分が思う、格好悪い自分」を人様に見せたくないんです。(当時は特に!)
その涙を流した受験生の方にしてみれば、それは自然な感情の発露の結果であり、そういうことが出来るってとても素敵な在り方だと思うのです。
ただ、当時のまりちゃんにしてみれば「自分の美学に反する行為」を目の当たりにしてしまった。
そうなると、完全に、私は「当事者」ではなくなってしまったんです。
一歩引いた目で、現状を見つめ出してしまったんです。
そんなどこか冷めた様な精神状態で、良いパフォーマンスができる訳ありません。
肝心の面接の内容は、質疑応答の後に「即興のダンス」というものでした。
この、「即興のダンス」が曲者でした。
「振り付けはどうしよう?」「かっこよく見えるにはどうしよう?」と、かっこつけ馬鹿野郎まりちゃんが全面に出て来てしまいました。
今から振り返るに、そんな事、どうでも良かったんです。
なりふり構わず、とにかく「私を見てください!」と持っている全エネルギーを出し切ればよかったのです。
どっちにしろ、そんな大した事出来ないんですもん。テンション高く、ひたすら楽しめばよかった。
涙を流していた私の隣の彼女は、満面の笑顔をたたえ、全力で飛び跳ね続けていました。
■合格発表
ホテルに帰ってからの、あの黒々とした気持ち。
モヤモヤと重たく、拭おうとしても決して拭い切れるものではありませんでした。
次の日の朝、音楽学校の前に掲示される合格発表。
その瞬間が待ち遠しくもあり、恐怖でもありました。
そして、眠れぬ夜を過ごした16歳のまりちゃんは、ついにその瞬間を迎えるのでした…。
ということで、本日はこれ切り…。
是非、次回も逢いにいらしてください♪
いよいよ、高校一年生編、ラストの記事となります!!!
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