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猫になる 木になる 川になる 石になる まつげになる あの人の眼になる りんごになる ぶどう…
大丈夫 そういうときは 苔のきょうだいが 助けてくれるよ そばにいてくれるよ はなしをして…
あるひ、かれは くじけた だれもかれのはなしを聞いていなかった 海の向こうの国の話はする…
まとめてみたら これくらいになった 少ないね と言われる それっぽっちなの? もっと出さ…
日々 濾過している 日々 分解している 日々 囓っている 日々 つまんでいる わたしに面した…
「 」 野花の前でその言葉は 水と空気と光に分解され 鳥の声が少し ハハコグサ オオイ…
おばあさんになっても あの日のことをけして忘れないだろう ドラえもんが雲を固めて王国を作った午後 そういう世界をわたしも旅した いつかここに行けるかもしれないと思った よく描けたと思った絵をくるくる丸めて持って帰った夕暮れ 家にはだれもいない 知っていたけど カーペットのうえに絵を広げてじぶんで眺める 空に鳥の形の雲が浮かんでいたこと 自転車で坂道を猛スピードで下ったこと 飴が喉に詰まったこと 新しい靴で犬のうんちを踏んだこと ある意味わたしは老いるのであって 別の意
彼はこの世界に来たのだ 風が吹いて カーテンが揺れて 日向はまぶしく 雨の日はずぶぬれ 椅子…
ああ 生きているな いっしょうけんめいに 口のまわりがよだれだらけで 指もよだれだらけでも …
集まったからには 散らばるだけなのだ 散らばったからには 集まるのだ そうやってわたしがで…
だれもたましいをつかまえておくことができないから いつくしむ 服を ネックレスを 写真を …
そういうことにして 今日を閉じます よかった うれしかった どうかと思った かなしかった 懐…
あの町の夜はいつも寂しくていつも別の、ほんとうの場所のことを、思っていた ほんとうのシー…
子どものころの夏、たしか小学校一年生とか二年生とか三年生とかのころ、学校から帰ると家の一角に丸いプールを出してホースで水をそそぎ、紺色の水着に着替えて浸かっていた。赤茶色の門扉、円柱のレンガの並んだ花壇、塀、あじさいの弦、バラ、黄緑色のじょうろ、水の染みた地面、自転車、物干し、金魚の水槽、空、電信柱、電線、車の音、歩いていく人たち、声、わたし。ただ水に浸かっているだけで、そういういつもの周辺は、すこし違って見える。聞こえる。退屈で、愉快な世界に思えた。水が、わたしを包んで、守