マトリョーシカ

おばあさんになっても
あの日のことをけして忘れないだろう

ドラえもんが雲を固めて王国を作った午後
そういう世界をわたしも旅した
いつかここに行けるかもしれないと思った

よく描けたと思った絵をくるくる丸めて持って帰った夕暮れ
家にはだれもいない
知っていたけど
カーペットのうえに絵を広げてじぶんで眺める

空に鳥の形の雲が浮かんでいたこと
自転車で坂道を猛スピードで下ったこと
飴が喉に詰まったこと
新しい靴で犬のうんちを踏んだこと

ある意味わたしは老いるのであって
別の意味ではわたしは増えるのである
わたしのなかにわたし
わたしのなかにわたし

わたしはわたしに重なり合って
ひとまず○歳として
ここにいるだけ

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