水あそび

子どものころの夏、たしか小学校一年生とか二年生とか三年生とかのころ、学校から帰ると家の一角に丸いプールを出してホースで水をそそぎ、紺色の水着に着替えて浸かっていた。赤茶色の門扉、円柱のレンガの並んだ花壇、塀、あじさいの弦、バラ、黄緑色のじょうろ、水の染みた地面、自転車、物干し、金魚の水槽、空、電信柱、電線、車の音、歩いていく人たち、声、わたし。ただ水に浸かっているだけで、そういういつもの周辺は、すこし違って見える。聞こえる。退屈で、愉快な世界に思えた。水が、わたしを包んで、守ってくれているようだった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?