岡山県地域おこし協力隊初任者研修で学んだこと|2024.芒種・腐草為螢
腐草為螢(くされたるくさほたるとなる)
ずっとずっと「ホタルが舞う」なんて光景はジブリアニメのなかにしか存在しない架空のおとぎ話だと思っていた。
だから「ねぇ、まりちゃん。そろそろホタルを見に行かない?」と誘われた日には「この人はなんてロマンチストなんだろう」とちょっぴり鼻で笑ってしまったけれども。
でも、次の日の夕方、ちゃんと約束通り迎えに来てくれた人の車に乗せられて1時間ちょっと。
夕食を食べに入ったお店でも、店員さんが嬉々としてホタル観賞のパンフレットを手渡してくれたもんだから(これはもしや、本当にホタルのいる世界に来てしまったのか)と淡い期待を抱いてしまうじゃない。岡山県民って本当にロマンチストの集まりなのかしらと、ここでもフフフと笑ってしまう。
ちなみに、お店で手話をしていたら、店員さんたちが全部筆談で対応をしてくれた。わたしたちは普段「今日もよく分からなかった」という経験ばかり積み重ねているからか、たまにこうやって親切にされることにめっぽう弱い。
「ホタル楽しんできてくださいね」もわざわざメモに起こしてパンフレットをくれたことが、すっごくすっごく嬉しくて。今日はホタルが見られなくてもこんな素敵な体験ができてしまっただけで、もう満足と思っちゃったのもホンネ。
そんなわけで、夜20時をまわって、北房ほたる公園の駐車場に到着しても、ホタルが見られる世界線ねんて信じられずに車を降りて。真っ暗な道を数秒歩くと、隣の人に肩をたたかれて
「ねぇ、まりちゃん。ホタルがいるよ」
なんて言われても(懐中電灯の光をホタルの光と見間違えたんだろう)ぐらいに思って「なにを言っているの」と右手の人差し指を空に向けた瞬間、私の指先の向こう側に黄色の光がポツポツとふわふわと舞い始めた。
……
!!!!
この世界には本当に、たくさんのホタルが川辺を舞う世界が存在するみたい。
あんまりにもきれいなものを見ると、言葉なんて何も出ないし、カメラだって構えられなくなる。
ただじっと、しんとした少し湿った空気を大きく吸いながら、目の前に広がる信じられないほどのホタルの光を、ただただ眺めてきた。
「こんなにたくさんのホタルを見たの、生まれて初めてだよ……」
と絞り出した手話に、隣の人は満足げな顔をして頷いた。
あの夜を境に、蒸し暑い夜がはじまった。夏が、もう夏がすぐそばに近づいてきている。
岡山県地域おこし協力隊初任者研修で学んだこと
5月の末に、岡山県地域おこし協力隊の初任者研修の参加してきた。当日は、手話通訳を派遣してもらったので、「聴きとること」ではなく「内容を理解すること」に集中して研修を受講できた。
当日、手話通訳を派遣してもらった理由は前回のnoteで触れたので
今回は、研修で学んだことについてここに残しておこうと思う。ほら、インプットとアウトプットはセットだよって教員時代子どもたちに口酸っぱく言ってきたのでね。わたしもちゃんと、実践できるオトナでありたいですし。
・岡山県地域おこし協力隊ネットワーク(OEN)
岡山県は、全国で一番最初に地域おこし協力隊のOBOG団体が設立された地域ということもあり、地域おこし協力隊のOBOGがわたしたち現役隊員の活動をよく把握してくれている地域だと思う。
実は2月にもこのOEN主催の研修会に参加していて、研修の最初に全参加者の前で「本研修には、聴覚障がいのある受講者がいます。我々としては、どの受講者も平等に研修を受ける権利があると考えているので、情報保障をしていきます」と言ってくださり、閉会式で
「聴覚障がいのある地域おこし協力隊を、岡山県内の地域おこし協力隊みんなが応援します」
と、オコスカー賞をいただいた。ちなみに、このオコスカー賞は、OEN独自の賞で、今年度の活動を応援しますよ!の証らしい。
こうやってわたしたちに学びの機会を与えてくれているほか、年度末に開催された活動報告会にも来てくださり、一人ひとりの活動に講評をしてくださった。
いつも手話を交えたり口の形がはっきりと読み取りやすいように口話をしたりしながら、ほかの協力隊と同じように、活動の状況を把握してときに助言をくれる。そういう先輩たちと協力隊になってすぐ繋がれたこと、本当にありがたいなと思っていて。
今回の初任者研修も、OENのOBOGが駆けつけて講話を担当していた。地域おこし協力隊を経験したOBOGの話はどれも実体験を伴う説得力のある話ばかりで。とってもおもしろかった。
・岡山県の地域おこし現役、OBOG隊員とのつながり方
上述したように、岡山県の地域おこし協力隊の良さはOBOGが現役隊員同士をつないでくれていること。
2月に開催された研修会しかり岡山県地域おこし協力隊の公式LINEしかり。どんな研修会があって、日々どんな媒体で情報共有をされているのかの説明があった。
わたしの活動をテレビ番組に特集してもらったときも、OENの公式LINEでそのURLを共有してくださっていて、協力隊の仲間たちから「テレビ、みたよ」とたくさん連絡をいただいた。みんなの活動が知れるので、わたしもいつもメッセージが届くのを楽しみにしている。
今回は協力隊になってから1年以内の隊員が参加対象だったので、2月の研修以降に協力隊になった人も多く参加していて公式ラインのQRコードにみんながスマホをかざしていておもしろい光景だったな。
・地域おこし協力隊には大きく二つの役割がある
地域おこし協力隊制度は、国の制度。
「地域協力活動」と「定住定着」の二つが大きな役割。
ひとつめの「地域協力活動」はその名の通り、「地域」が主語のミッション。わたしたちが地域おこし協力隊を卒業した後に地域に何を残したいのかを考えながら活動をする必要がある。
もうひとつのミッション「定住定着」は、「わたし」が主語のミッション。移住した先の地域で息の根長く暮らしていくために、卒業後も自分の任地でどう生活していくか。これも考えながら活動していく必要がある。
・地域おこし協力隊は「民」と「公」二つの視点をもつ必要がある
わたしたち地域おこし協力隊は、地方自治体から「委嘱」されて活動をしている以上、完全な「民間」人ではない。活動計画や会計のフローなど、地方自治体のやり方を理解して、それに準じて活動をしていくことが求められている。
ほら、活動費だって税金だしね。税金を使わせていただく以上は、それなりの手続きが必要になる。説明責任が果たせるだけのね。これは、前職が教員だったのと身体障がい者としていろんな福祉サービスを利用させていただいてきているので「そりゃそうだ」と納得。
でも、前職時代は事務系の作業は全部事務室に丸投げしていたからなぁ。今ここで、自分の適当さに苦しめられていることも多々あるのも実際のところ。
行政のルールを学びながら、行政にとって地域おこし協力隊のわたしにどんなことが求められているのか。主語を「行政」にして自分の活動を俯瞰することも求められてくる。自分の求められていることが分かると、行政との話し合いもスムーズになることが多いんだとか。
ちなみに、わたしの活動する倉敷市の総合計画はこちら。
ちょっとまだ読み込めていないのだけれども、この夏中にはひととおり読んでしまって、2年目に向けてどう活動していくかしっかり考えていかないといけないなと思った。
・初任者のわたしたちにとって求められていることは、まず「地域」が主語の活動をすること
たった3年しかない地域おこし協力隊の任期。卒業後の自分を考えると、正直不安なことも多いかもしれない。いきなり地域おこし協力隊としてやってきて、受け入れ団体から「これお願い」と任された仕事に「これ、わたしがやる意味ある?」と思うこともあるかもしれない。
(ちなみに、わたしは今のところない。受け入れ団体が、めっちゃ丁寧にこの活動をやる意味みたいなものを説明してくれるので)
それでもまずは、地域の人たちや受け入れ団体と良好な関係を築くこと。だって、郷に入っては郷に従えって言うじゃない。
たくさんの人たちと関わるなかで、地域の人たちから「この子にはこれを任せたい」と思ってもらうほうが、お互い気持ち良いでしょうとのこと。
本当にその通りだなぁと思う。
わたしも何か記事を書いたり情報を発信したりしたときには、ただ情報を発信しっぱなしにするのではなくて「地域の人たちがどんな反応をしていたか」を指標にトライ&エラーしていく必要があるなぁと痛感。
「情報を発信したその先に何があったのか」までを見据えて、ひとつひとつの記事を丁寧に紡いでいこうと、改めてやる気いっぱいになって研修を終えた。
・たくさんの「横のつながり」と出会えたことも大きな収穫
あとやっぱり、今回は会場参集型の研修だったので、同じ地域おこし協力隊1年目の仲間たちに出会えたことも大きな収穫。
移住してきた岡山での「お友達」としてはもちろんのこと、活動内容を共有しながら互いに「学び合える相手」に出会えるのは、実際に研修に参加した醍醐味だと思う。
講師のお話も岡山県内の活動例だけでなく、全国の活動事例を使ってお話をされていたのも印象的で。倉敷市内、岡山県内だけでなく、全国の似たような地域の似たようなミッションの協力隊の事例も参考にしながら、2024年下半期も活動していくぞ!の良いきっかけになった。
情報保障を整えてもらって、研修に参加させてもらえて本当によかったな。また、定期的に自分の足元を見つめるタイミングで仲間とともに学びを深めていきたいと思う研修でした。