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【調査報告】「賢者の贈り物」に出てくる聖書の登場人物名
おかげさまで仕事が忙しくて、すっかり更新が空いてしまいました。ようやく訳文の準備ができ、折しも作品内の季節と同じクリスマスシーズンになりましたので、近日中に「賢者の贈り物」の邦訳を投稿します。
その前に、本編をより楽しんでいただけるよう、「賢者の贈り物」に出てくる、聖書の登場人物たちをご紹介したいと思います。
ある程度キリスト教になじみのある方々にしたら常識的な内容かもしれません。それに、キリスト教についての知識がゼロでも楽しめる短編ではあります。でも、私みたいに初めて知って「へえ」と思う方もきっといるはず!
ということで、ご興味のある方は以下、お進みください。
ソロモン王とシバの女王
ソロモン王は小説やゲームに頻繁に登場するので、キリスト教信者でなくても聞き覚えのあるメジャーな名前かもしれません。小説やゲームでは、賢い王というキャラクターになっていることが多いような気がします。
たとえば、私がよくプレイしているモンストとか(女性化しちゃっているけど)。
シバの女王は、旧約聖書に登場します。以下、旧約聖書でソロモン王とシバの女王(新共同訳聖書だとシェバ)が出てくる箇所です。
シェバの女王は、主の御名によるソロモンの名声を聞き、難問をもって彼を試そうとしてやって来た。彼女は極めて大勢の随員を伴い、香料、非常に多くの金、宝石をらくだに積んで、エルサレムに来た。
[中略]彼女は金百二十キカル、非常に多くの香料、宝石を王に贈ったが、このシェバの女王がソロモン王に贈ったほど多くの香料は二度と入って来なかった。
1キカル=約34キログラムらしいので、120キカル=約4,080キログラムですかね。4トン超の金をラクダで運んだのか、すごいな。
この抜粋部分だけだとわかりにくいかもしれませんが、シバの女王だけでなくソロモン王も超裕福です。昔からカネはあるところにはあるんですね……
ちなみに、王は女王からの難問にすべて完璧に答えちゃいます。でも「賢者の贈り物」では、ソロモン王は賢王キャラではなく、シバの女王と同じく裕福な貴人の象徴として登場します。
賢者
タイトルにも登場する賢者。「賢者の贈り物」という邦題で知られていますが、英語のMagiは聖書に出てくる東方の三賢者のことを指す、複数形の名詞です。新共同訳聖書では、「占星術の学者たち」という訳になっています。占星術でイエスの誕生を予見し、赤子のイエスに会いに、はるばるやって来ます。以下、「マタイによる福音書」から、三人がいよいよイエスとご対面するシーンです。
家に入ってみると、幼子は母マリアと共におられた。彼らはひれ伏して幼子を拝み、宝の箱を開けて、黄金、乳香、没薬を贈り物として献げた。
ありがたいけど、赤ちゃんへの誕生祝にしては豪華すぎる贈り物たち……
この三人の賢者も裕福だったのでしょうね。
ちなみに、広辞苑をひいたところ、乳香は名前のとおり香の一種だそうです。白色または黄色透明らしく、そこから「乳」の名がついたのでしょうか。没薬はゴム樹脂で、香料や薬、防腐剤などとして使われていたようです。どちらも神聖な品、かつ贅沢品です。
次回更新をお楽しみに!
ど平民の私が解説するとなんだかひがみっぽい文章になってしまいました。でも、この偉人たちの裕福さと、「賢者の贈り物」の主人公の貧しさの対比が、この作品のポイントの一つなのかな、と思います。
O・ヘンリーの代表作でもある「賢者の贈り物」は、既訳がたくさんあります。先輩方のすばらしい訳に比べると見劣りしそうですが、私の訳も楽しんでいただけると嬉しいです!
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