文字を整え、自分と向き合う
仕事やプライベートで文章を書く時間は多い。でもそのほとんどはキーボードで文字を入力して、言葉を紡いでいる。これを書いているのも、PCからだ。
そうすると、どんどん文字を手で書く時間がなくなっていく。
文章を書いて、相手に思いを届けることをしているはずなのに、手触り感のない文字をたくさん書いている。もちろん、デジタルだからこそ届けられるものもたくさんある。けどそこからこぼれ落ちてしまう”なにか”がある気がして、ドキリとする。
文字が届けるのは
5年前、年末に6日間長野の山奥にいた。
「きく」と「はなす」と向き合う時間を過ごすために、西村さんのインタビューのワークショップに参加したのだ。
そのとき西村さんから「自分の中から浮かんできた/生まれてきたものをノートに記そう」と黄色いノートを手渡された。授業の時間以外に、毎朝30分すきな場所で思い思いにモーニングノートを書いた。
発することばに強弱があるように、書く文章(ことば)にも強弱がある。
筆圧が濃かったり、文字が小さかったり、乱雑に書いたり…そのときの自分の気持ちがそのまま、文字に残る。
西村さんはこのノートを渡すとき、こうも話した。
「時間が経って読み返したとき、過去の自分に再会することができる」
当時は今の自分自身と向き合い、対話をするようにこのノートに書き記していた。読み返している今、過去の自分との再会を果たす。「久しぶり、こんにちは。あなたは今、何を考えている?」
手から伝わるもの
この前、あるワークショップに参加した。
立つ、座る、横たわる、舞う、、、いろんな身体の動きを通して感じたのは、自分の脳と身体がうまく接続できていないこと。
頭では「こう動こう」と思っても、身体はギクシャクしてうまくいかない。
「こんなにも自分の身体を動かすのって難しいのか…!」
自分の身体とちゃんと繋がっていると思ったわたしは、とても驚いた。
小学生のころ体育や美術、図工でこうした身体の使い方が育まれていたのだなあ。振り返って感じる。こうした時間は、大人になると意識的につくらないと中々難しいものだ。
tsumugiで以前やった金継ぎのワークショップ。
これも目の前の器を直すために自分の身体をどう使うか、試されていたように思う。
文字を書くのにも、筆を使う。筆は、手先の震えがダイレクトに伝わる。
まっすぐの線を引くのも、実は結構むずかしいのだ。でも、だからこそ。すごく面白いし、とことん自分に向き合ういい時間をつくれる。
硯で墨を磨る。少しずつ、水が墨の色をまとい黒くなっていく。
ふわり、と墨の香りがする。
筆に墨をつける。少し墨を落としてから、一画目。
とめ、はらい、はね。基本的な動作は小学生のころに習うが、この時間はなんというか、ただただ、無心になれる時間。
手先から筆を伝い、文字に現れる。そのようすを繰り返し試し、楽しむ。
自分と向き合うことは、子ども心と向き合うこと
こう書いていてふと、陶芸に似ているのかも、と感じた。
陶芸は指先から器が形作られる。少しでも力が入ったり手の位置がずれると、とたんに形も崩れてしまう。
でも、あの感じがたまらない。ああ、やっちゃった。もう一回!そんな風に、子どもにかえったように目の前のことを楽しむ時間ってなかなかない。
「自分と向き合う」と聞くと、なんだか苦行のような、儀式のような、そういったイメージを抱く人もいるかもしれない。
けれどもっと楽しいもので、忘れていた子どものころの気持ちに気づいたり、うまくいったときの喜びを感じたり、不格好さを楽しんだり。
みんな違って、みんないい。
もっと軽やかに、気持ちを整えたり思い出したり、自分のために使う時間を大切にしたい。
◇ ◇ ◇
5月14日 tsumugiで文字綴りワークショップ開催
書家 珠夜さんを講師に招き、文字綴りワークショップを アキナイガーデン にて開催いたします。
前回は器の金継ぎワークショップを行いました。壊れた器を直すことを通して、自分の暮らしを味わい、大切にする時間をお届けできたのかな、と思っています。
今回は文字綴りワークショップを通して、自分らしさや気持ちと向き合う時間をお届けします。
華道や茶道といった学びに興味はあれど、なかなかハードルが高い…そんな、日々を大切に過ごしたい人に筆文字はおすすめです。
□立夏の文字綴りワークショップ
日時 5/14(sat) ①10:00-11:30 ②13:00-14:30
定員:①、②ともに6名
参加費:5,000円(お茶付)
※当日現金にてお支払いをお願いいたします。
場所:アキナイガーデン
横浜市南区弘明寺町144-105
京急本線「弘明寺駅」、ブルーライン「弘明寺駅」下車後徒歩5分
弘明寺商店街のアーケードと大岡川が交わるところです。
春には満開の桜が、また季節ごとにイベントが開催される観音橋の目の前です。
内容:小筆を使って文字を整える、もしくは墨絵を描きます。珠夜さんが一人ひとり見てくれますので、気になることや聞きたいこともじっくり話せます。
※お洋服に墨が付くこともありますので当日は黒っぽい服装等、汚れても大丈夫な服でお越しください。
申込:Peatixページでチケットを申し込んでください。
日々是好日の世界観ってとても素敵だけど、毎日ちゃんと大事に生きるなんてなかなか難しい。でも、たまにそんな時間を意識することはできると思うし、それをtsumugiで届けられたら。そんな風に感じています。