果たして借金は完済できるのか~『わが殿 上』(畠中恵)~
*この記事は2020年8月のブログの記事を、再構成したものです。
私が知る限り初の、畠中恵の上下巻からなる長編です。実在の人物をモチーフにするのも、初めてだそうです。
↑kindle版
越前国にある四万石の大野藩が抱えた九万両の借金の返済に向け、八十石の家柄の七郎右衛門が奔走する話です。主君から打ち出の小槌呼ばわりされる七郎右衛門が借金返済に向けて奮闘しても、従来通りのやり方を捨てられない保守勢力から足を引っ張られたり、文字通り山から突き落とされたりします。
何とか道が見えてきたかと思いきや、主君が改革の過程で突如、大出費を伴う事業を始めてしまったり(それが完全な無駄遣いとは言えないだけに始末が悪い)、思いがけないことに藩が巻き込まれ、またまた出費を強いられたり、なかなか借金は減りません。
「しゃばけ」シリーズや「まんまこと」シリーズでは、作品ごとに波がある畠中恵です。今作でも最初のうちは、どんどん時が進んでしまったり、場所によってはナレーションベースになっていたりするものの、途中からは安定した筆致で進んでいき、一気に読み進めることができました。
さて七郎右衛門と大野藩はどうなる、というところで上巻は終わります。下巻が楽しみです。
↑単行本
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