【読書】予想外の展開が待っている~『大力のワーニャ』(オトフリート・プロイスラー作、大塚勇三訳)~
プロイスラーファンなのに未読だったので、読んでみました。
題名のみを知っていた時、勝手に「ドイツの元気な女の子の話」だと思っていました(多分、『長くつ下のピッピ』と混同している)。読み始めたら「ロシアの怠け者の男の子(というか、もはや青年)の話」で、びっくりしました。なるほど、ワーニャはイワンの愛称なのね。
その怠け者のワーニャを、父親のワシーリとおばのアクリーナが甘やかすので、いっこうに怠け癖が抜けないわけです。ワーニャの兄2人にしてみれば、たまらないですよね。でもおばさんは、知っていたのかもしれない。
そんなワーニャが、見知らぬ老人から使命を授かるのですが……。
すごい使命です。やる気のない生徒に対しては、これからは「むずかしい偉大な事業のために力をたくわえ」ているのだと思うことにしましょう。ワーニャを見ていると、怠けているのも楽ではないことが分かるので。何せヒマワリの種だけで飲み物もなしに、しかも喋らず、かまどの上で7年間過ごさねばならないのですから。
ワーニャ、名言です。
一方で、働き者の兄2人のがんばりが無視されているわけではありません。
ちなみにこの老人が、ワーニャに使命を授けた人です。後に老人の正体が分かるのですが、予想もしない人でした。
ともあれワーニャは、ようやく旅立ちます。
これを読んだ時、突然記憶がつながりました。ピアノを習っていた時、教則本の中に「ボルガの舟歌」が載っていたのですが、あれって舟に乗っている人が歌っているのではなく、引いている人が歌っているものだったのですね。ウィキペディアさんにも、「ヴォルガ川の船引き人夫の労働歌」と書いてあります。
怪物の最後とはいえ、シュールです。破裂するほどの怒りは感じたくないものです。
魔女ババヤガーの乗り物は、パンやきかまどです。それは良いのです。たとえ「はだかのニワトリの足」という表現が意味不明でも。
かまど、生きていたらしいです……。オッホより、更にシュール。
「パンケーキみたいな顔」って、分かるようなわからないような……。でも面白い表現です。
上記の宿屋の亭主のところで出た料理ですが、ピクルスを「酢づけのキュウリ」、サワークリームを「すっぱいクリーム」と言っているかと思えば、クワスはいきなり説明なしで「クワス」と言っています。大塚勇三さんの日本語に直す基準が謎でした。あえて言えばクワスは、ノンアルコールビール?
しかしワーニャに使命を与えた老人の正体といい、ワーニャが旅の途中で手に入れたのが「皇帝イワン・ワシリエヴィッチのよろい冑」(イワン・ワシリエヴィッチはワーニャの本名)だった点といい、子ども向けとは馬鹿に出来ない予想外の展開でした。特によろい冑の件は、はるかな昔にワーニャのものだったものを、改めて手にしたということでしょうか。時空を超えている気がします。
ちなみにふと、大塚勇三さんがいつまで生きていたのかが気になり調べてみたら、2018年に亡くなっていました。意外と最近なんですね。
見出し画像は、モスクワのマンホール蓋です。ワーニャが辿り着くのはモスクワではないと思いますが、ロシア関係ということで。
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